Mr.マリック著『超魔術の裏技術』より

催眠術師の手法で、どんどんこちらの世界に引き込んでいけ。営業相手の心を掴む会話術

仕事
「ハンドパワー」「きてます」などの名言を残した、超有名マジシャンのMr.マリックさん

空中浮遊、透視、瞬間移動などのマジックをテレビで披露し、「超魔術」の名を知らしめました。

そんな超魔術師としての活動が30周年を迎えた今年、マリックさんがついに「超魔術」の正体を明かしました。

それが、超魔術ならぬ、超話術

マリックさんは「会話を巧みに操ることで、普通のマジックを普通のマジシャンがやればマジック。私がやれば超魔術になるのです」と語ります。

そのノウハウがつまった『超魔術の裏技術』より、「1対1」「1対2〜3」「1対10数人」のコミュニケーション法を3記事にわたってお届けします。

最初の声掛けは「イエス」としか答えようのないものを

1対1ではなく、相手が2~3人になった際に戸惑うのは、第一声です。誰に何を、どう声を掛ければいいのか、悩むところです。

奇をてらったり、いきなり面白いことをかまして掴む、なんてのはプロの芸人さんでもない限りリスクが高すぎます。話が進んでいく中で、徐々に相手の心を掴んでいけばいいのです。

では最初の声掛けは、どうすればいいか?

最大公約数を目指しましょう。好かれたり、ポイントを上げたりは無理かもしれないけど、嫌われはしない方法はあります。無難でいいんです。みんなで共有できる当たり前の話からスタートすればいい。

もっと詳しく言えば、相手が絶対に「イエス」としか答えようのないことです。

たとえば天気です。今にも雪が舞いそうな冬の朝。

今日は冷えますね!

これに相手は「ノー」とは言えません。仮に相手が、「昨日のほうが寒くなかった?」
と言ってきた場合でも、「確かに昨日も寒かったですね~」と答えれば問題ありません。

「東北の生まれだから、こんなの大したことないよ」と相手が言えば、そこから話も膨らみます。天気の話は誰も傷つけず、最も無難な話の切り出し方の代表格です。

話の入口は、好き嫌いが分かれたり、意見の対立が生まれそうな話題を避けるのが賢明です。

相手と一緒に頷き合い、同じ気持ちを共有しているもの同士である、という雰囲気をつくっていくのです。

ですから、「ジャイアンツが最近調子悪いですね。まいっちゃいますね~」というのはダメです。相手が巨人ファンで、なおかつ面識もある人に限ります。みんながみんな巨人ファンではないですし、野球に興味がない人もたくさんいるわけですから。

「駅前のラーメン屋、行列できてますけど、言うほど美味しくないですよね?」もダメです。

だったら、「もうすっかり冬ですね。鍋が恋しい季節になってきましたね」というほうが共感を得やすいです。

私は地方で仕事がある時などは、お客様に対してこんな風に話を切り出します。

「いやー、本当に冷えますね。今日は寒い中、お越しいただいてありがとうございます」

これはもう100%「ノー」と言わせない声掛けです。

なぜ“ジェスチャー”は必要なのか

1対2~3人はもちろん、1対1であっても1対大多数であっても、コミュニケーション時に欠かせないのはジェスチャーです。

私はマジック専門店を経営していた頃、何度も海外へ買い付けに行きましたが、英語は上達しませんでした。

でもビジネス上で不便を感じたことはありません。片言とジェスチャーで話は通じました。一生懸命身振り手振りをすれば、伝わるものなんですね。

こちら側の熱意を、理解しよう、汲み取ろうとしてくれるからです。人は本能的に、一生懸命な人や熱意のある人を放っておけません。情熱にほだされるのです。

たとえばダムを見学した人が、その大きさに驚いたという土産話をするとします。当然、手でその実際の大きさを表現できるわけはありません。

しかし、「こんなに、こーんなに!ほんとに大きかったんだよ!」とジャスチャーを交えて話すと、その人がいかにダムの大きさに感動したか、驚いたか、という気持ちが伝わります。

ジェスチャーが抜群にうまいといえば、落語家です。話術が一級品であるのはもちろんですが、彼らは身振り手振りが抜群にうまいのです。

両手に加え、扇子や手ぬぐいを使って、さまざまなジェスチャーをします。お茶を飲んだり、蕎麦をすすったり、腕まくりをして喧嘩をしたり、恋する乙女の心情を指先のわずかな動きだけで表現することもできます。

ジャスチャーは話を立体化させるものですから、聞き手の想像力が膨らむのです

彼らのようなプロのレベルを目指す必要はありませんし、できてしまったら彼らの商売はあがったりです。うまくやろうとしなくていい。両手を大きく使って動かすだけでいいのです。

落語家のようなプロは、話を立体化させるためにジャスチャーを使いますが、我々は相手に熱意を伝えられればいい。

あなたとこの感動を共有したい」という一生懸命さを相手に伝えるものなのです。一生懸命さが手に出るのです

そして人は、一生懸命に話す人を無視できません。逆に、いい加減に話す人の話を聞こうとは思いません。

私は若手のマジシャンたちを見極める時、彼らの身振り手振りを見ています。

つまり、熱意がどれだけあるかを見るのです。熱意こそがお客様を惹きつけるからです。いくら器用でも、熱意がないマジシャンはお客様に絶対に支持されません。

にっこり笑った顔のアップもいいですが、笑顔にピースサインが加わると、より強く喜びや楽しさが伝わってきます。

手は人の心理状態を雄弁に語るのです。手には、人に熱意を伝える力があります。どうぞ、手を積極的に使ってください。

暗示話法

勉強しなさい!

親に言われて反発した思い出は、たくさんの人にあると思います。人はやらされることに抵抗を覚えます。やらされることを嫌い、反発します。

「これをやりなさい!」

と命令されたら、誰でも面白くありません。

一方、柔らかく「これはできますか?」と尋ねられれば、すぐに拒絶することはありません。少し考えた挙句に「ノー」か、嫌でなければやってくれるでしょう。

では、実際にやってくれたとしましょう。

「ほら、できたよ」

「ああ、できましたね。じゃあこれはどうですか?」

「うん、できるよ」

「いいですねー。でもこれは?」

「問題ない。できるよ、ほら」

「ああ、すごい。これもできるんですねー」

このように、どんどんやらせることができます。

「やりなさい」という第一声であれば、一度もやってくれなかったかもしれません。できますか? と柔らかく問うたことで、何度でもやってくれる可能性があるのです。

命令や強制ではなく、自発的にやらせるのです。無理やりではなく、納得した上で自発的にやってもらうんですから、実に平和で前向きな方法じゃないですか。

「できた」「できた」「できた」と成功体験を積み重ねさせていくのです。そうすることで、どんどんこちらの世界に引き込んでいく。これが暗示話法です。

お気づきだと思いますが、これは幼児に対して親が知らず知らずやっている手法です。

ご飯やトイレのトレーニングの際、親は子供を褒め、ひとつひとつ成功体験をさせながら、次のステップへ促します。

暗示話法は子供だけではなく、大人同士でも、恋愛でもビジネスでも有効なのです。

催眠術師もこの手法を巧みに使って、トランス状態へ誘います。

肩の力を抜けますか?はい、はい、そうです。抜けましたねー。さぁここでもう一度深呼吸をしましょうか?はい、そうです。大きく、そうです、いいですねー

この暗示話法というのは、使用する際には注意が必要です。霊感商法などで悪用されている例もあるからです。

みなさまにはぜひ、人を笑顔にする、喜ばせる方向でお使いいただけたらと思います。

長編よりも短編の連続を

私の仕事は“飽き”との戦いともいえます。

エンターテインメントという生業は、いかに見る者聞く者を飽きさせないか、が大命題です。

人を飽きさせないコツ、をよく尋ねられます。私が気を付けていることは、同じ種類のことを連続しない、ということです。

マジックは出現、消失、変化、浮揚、貫通、透視、予言など、さまざまなジャンルの現象を見せるものです。何かものを浮かせたとしましょう。

その次にまた何か別のものを浮かせるマジックを続けてはいけません。次は壁に何かを貫通させたり、何かを消したりと違うジャンルの現象を見せるのです。

人は同じものが連続すると飽きるのです。

話も同じです。同じような話を続けていると、聞いている人はあくびをしてしまいます。次はどんな話が来るんだろう?とワクワクさせるような話し方が理想です。

そのためには一連の話をストーリーにしないほうがいいかもしれません

練りに練られた、上質な推理小説のような面白いストーリーであればいいのですが、先の展開が読めてしまうような安易なストーリーだったらマイナスです。

聞き手は「次はこの話題だろうな」と先回りして予想し、「やっぱりそうだ」と答え合わせをします。それが2、3回続くようだと「もう先は読めた」と聞いてくれません。

校長先生の話をちゃんと聞いている生徒、いますか? いません。あれは話が長いうえに、先の展開が読めるストーリーだからです。

生徒たちは飽き飽きしているのです。ですから、ひとつの話をひとつのストーリーで長く話すのは危険です

超短編をたくさん用意したほうがいいのです。小話の連続のようにして話したほうが飽きが来ません。次は何の話題だろう?と聞いてくれます。

超魔術師による人の心を操るコミュニケーション術がここに

超魔術の裏技術 - 誰の心でも誘導できる -

超魔術の裏技術 - 誰の心でも誘導できる -

「実演販売員時代」「ナイトクラブ営業時代」「テレビ時代」「ライブ時代(現在)」の4つの時代で培ったコミュニケーション術。

マリックさんの経験に基づいて、相手の自分の話やパフォーマンスを効果的に届ける方法が『超魔術の裏技術』に収められています。

誰の心でも誘導できる」と豪語するマリックさんの超魔術をぜひ学び、明日からの会話で変化を実感してみてください。