半径3メートルの身近なデジタル

第1回 日本のトイレはガラパゴスなのか?

2009.06.10 WED

半径3メートルの身近なデジタル


僕らが普段使っている「ウォシュレット」という言葉はTOTOの商品名で、一般名称は温水洗浄便座。これが最新機種「ウォシュレット アプリコット」の操作リモコン。自分仕様に細かく微調整ができる。真ん中が便座に関するボタン。右側は音楽プレーヤー。内蔵曲以外に、SDカードに入れた曲も再生可能

知らない間にここまできていた日本のトイレのハイテクぶり



あれは、とある友人の家での出来事です。

ちょっと蒸し暑い夜でね、急にトイレに行きたくなったんですよ。そんなに水分もとっていないのに。「なんかヤだな~、気持ち悪いな~」と思ってたんですけどね、トイレのドアを開けた瞬間、音楽が聞こえるんです。

あれー、聞こえちゃったな~と耳をふさごうとしたら、すぅーと、開いたんですよ。便ふたが、ひとりでに。怖いな~と思いながら用を足したら、流れたんですよ。ジャァーって。水が。

ええ、もちろん、トイレには僕一人でしたよ。

と、稲川淳二さん風に始めてみたが、これは実話。いまだに一昔前の洋式便座を利用している筆者からすると、本気でビビッた出来事だった。いったい最新のトイレはどれだけ進化しているのか。国内トイレシェア1位のTOTOのショールームに行ってみた。 案内してくれたのは、TOTO株式会社広報部の久野敦子さん。

そもそも、どうして人が来たら自動的に便ふたが開くのでしょうか。ふたくらい自分で開けてもいいような気がしますが。

「自動で開閉するのはセンサーを使っているからです。センサーの範囲内で物体を検知すると自動的に開き、物体が検知されなくなると閉まります。自動で開閉する目的の一つは節電です。開けっ放しだと、暖房便座が放熱して非効率ですから。他にも、直接手で触らないので衛生的ですし、お年寄りはふたを開くために腰をかがめる動作が簡略化できます。ちなみに暖房便座に関しては、学習機能を搭載していて、よく使う時間は暖かく、そうでない時間には温度を下げるような工夫もされています」

んん、自動でふたが開くだけでも様々なことが考えられているんですね。じゃあ、大と小はどうやって見分けているんですか。

「まずは立った状態か座った状態かで判断します。女性の場合、大も小も座りますが、そ
の場合は時間で判断しています。30秒を超えると大と判断して流水しています」

なるほど、小学生時代、トイレに入った友人を『3分超えたらう○こ』といってからかっていたバージョンの応用か。

ちなみに、最近のTOTOのトイレにはオート機能なるものがあり『トイレに入る座面後方に光が灯る便ふたが開く音楽が流れる用を足す脱臭開始香りが漂う便器洗浄便ふたが閉まる』の一連の流れが自動で行われるのだ。確かに、ハイテクすぎる。

「音楽に関してはケンウッドさんと共同開発をして、トイレに合った音が流れるようにスピーカーを調整しています。また、流水に関しても、少ない水でしっかりと洗浄ができるトルネード(渦)洗浄を採用しているんです。とくに節水機能はエコへの取り組みもあって、以前、13L使っていた便器洗浄水を最新式は5.5Lまで節約できるようになりました。また、水圧の低いお宅でもタンクレストイレを取り付けできるように、最新の機種では加圧式ポンプを使用しています」

他にも、おつり(大便時の水の跳ね返り)を軽減するために水面を下げられる機能や、陶器の凹凸に汚れが付かないように便器の表面に釉薬を施し、100万分1mmレベルの平らさを実現する技術なども使われている。

ただ排泄をするだけのものに、なぜにここまでのこだわりが。いったい、日本人はトイレになにを求めているのか。そこには、なにか特別なメンタリティがあるに違いない。
本文中でも触れた最新トイレ「インテリジェンストイレII」は、大和ハウスとTOTOが共同で開発したもの。“生活習慣病の改善”“女性の美容と健康”“子どもの健康管理”のための機能をもつ、デザイン性を高めた在宅健康チェックシステム商品

日本人がもつ穢(けが)れ思想とバブルが生んだ独自のトイレ文化



日本のハイテクトイレを語るときに欠かせないもの。

それが「音姫」ではないだろうか。女子ならば誰もが知っており、男子にはあまりなじみのないこの機械。要は排泄音を他人に聞かれないために録音された流水音を流す機械だ。これが普及する前には、常に水を流しながら用を足す女性も多かったという。

実は、女性が排泄音を消す仕組みは古く江戸時代からあったといわれ、岡山県の矢掛宿には「音消し壺」とよばれるもの、国の重要文化財に指定されている広島県の「太田家住宅」(江戸時代中期から後期の建造物群)には、厠の外にそれらしき遺構が存在している。

我々の先祖は、江戸の昔からトイレにはそれなりのこだわりがあったようだ。

松山東雲短期大学で民俗学などを研究する森正康教授によると「日本人がトイレにこだわるのは、そこを特別な空間として捉えていたからです。トイレは年配の女性などが御不浄と呼ぶ汚い空間でしたが、一方で異界へつながる場所とされ、お産の手助けしてくれる便所神がいると考えられていたんです。そのためトイレをまめに掃除すると、キレイな子が産まれると言われていました」とのこと。

「ただ、現実的には、排泄物を肥料として使うことなどから、戦前までは欧米に比べると水洗化も遅れており、臭い、汚い、暗い、怖いの4Kと呼ばれる場所でした。変化があったのは30年ほど前。観光地だった静岡県伊東市がキレイな公衆トイレを目指し動き始めたのです。この動きが他の地域にも波及して、駅やトイレなどの公共施設のトイレがキレイに、使いやすくなりました。トイレが文化として捉えられ始めたんですね」

奇しくも、TOTOの温水洗浄便座「ウォシュレット」の誕生も約30年前の1980年。その後のバブル景気も手伝い、公共の場所でも家庭でもトイレにお金をかけるようになったのだとか。

30年がたち、温水洗浄便座の普及率は約70%に達している。TOTO株式会社広報部の久野敦子さんは「今では当たり前の機能として親しまれているウォシュレットは、地道な活動で『おしりを洗う』という文化を根付かせた商品です」と話してくれた。文化として捉えたことが、不況の今でも贅沢品として敬遠されず、支持されている一つの理由なのかもしれない。

そして、これからのトイレに求められているものが「健康」というキーワード。最新のトイレは、尿血糖値を測ったり、尿から深部体温を測定して月経や排卵日などを予想することができる。他にも、トイレ内で体重やBMI値、血圧も測定でき、その数値は専用のソフトによりパソコンで管理できるという。んー、まさにデジタルなトイレじゃないか。

最新のハイテクトイレはもちろんのこと、一般に普及している温水洗浄便座にも様々な技術が搭載されている。もしも使う機会があったら、心してお尻をのせるようにしましょう。 たかがトイレ。されどトイレ。
トイレの最新事情はいかがでしたか?

日本のトイレを調べていて気づいたのですが、
日本人はこういったオマケ的機能が好きなんですね。

携帯電話にカメラやテレビ、メールを、
自動車には、自動で車庫入れをしてくれる装置や追突を防止するレーダーを、
空気清浄機にはウイルスを不活性化させる機能を、
そしてトイレには、お尻を洗ってくれる機能を。

これらの機能は、なければないでも困らないけれど、
一度使うと、これまでやっていたことが面倒になって後戻りができません。

ある意味、面倒だと思う気持ちが、製品進化に最も大切なことなのかも。

ちなみに、今回はIT・デジタルカテゴリーなのであまり触れませんでしたが、
コンパクトで掃除がしやすくなった形などデザイン面もかなり進化を遂げています。

TOTOショールームでは、デザイン系の説明に惹かれるのは女性で、
デジタル系の説明に惹かれるのは男性なのだとか。やっぱり、
男性にはデジタル好きが多いようです。

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