“記憶の文脈依存性”がポイント

「紙に書くと覚える」は本当?記憶力UPのウソ・ホント

2010.10.07 THU



イラスト:牧野良幸
学生時代、単語や文章をノートにせっせと書いて覚えた記憶、ありません? 目で追うだけでなく、書くと覚えやすいという話はよく聞くが、これって本当なのだろうか?

「ある意味では本当ですが、書いて覚えると純粋に記憶に深く刻まれる、というわけではありません。書いて覚えたことは、試験のように書くことを求められるシーンでは、その記憶を呼び戻しやすいといえます」(東京女子大学人間科学科・心理学専攻・今井久登教授)

そういえば、文字を思い出すとき、利き手のひとさし指で宙に文字を書いて思い出そうとすることってありますよね。

「それは“空書”という行動で、漢字の文化を持つ人だけに見られます。書いて覚えた漢字の記憶は、書くという運動を絡めた記憶になっているのです」(東京大学大学院教育学研究科・佐々木正人教授)

この空書行動の概念は、文字は書けるのに読むことだけができなくなる純粋失読という疾患のリハビリ治療など、実際に医学の現場でも利用されている。

「認知心理学では、ものを記憶したときにとった行動や周りの環境、そのときの自分の気分や感情などが記憶と密接に関連していると考えられていて、これを“記憶の文脈依存性”といいます。思い出すときと記憶したときの環境とが重なっていればいるほど思い出しやすくなるのです」(今井教授)

ではこの概念を、プレゼンなど仕事でも生かすことは可能だろうか。

「本物の会議室で、当日の状況や自分のテンションを思い浮かべてしゃべりながら資料を暗記すれば、本番でもスラスラ話せる可能性はあります。でも、プレゼンで人の心を動かすのはむしろ熱意だったりしますから、背景にあるモチベーションを伝えることが大事だと思いますよ」(佐々木教授)

ごもっとも。とはいえ内容を記憶していた方が気持ちを込めやすいかも。その上で熱血感も表現できれば…そんなことできたら会社員より役者に向いてる!?
(駒形四郎)


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