自治会運営に30代ビジネスマン続々立候補

マンションを 住民が“経営”する!?

2016.02.20 SAT


マンション自治会が運営する「ブラウシア」のFacebookページ。住民同士の交流イベントの様子などを積極的に発信している
一般的に、分譲マンションは購入直後から価格の下落が始まるといわれる。将来的な売却や賃貸物件への転用を見越すなら、その下がり幅は最小限にとどめたいところだ。

SUUMO編集長の池本洋一氏によれば、「マンションを単なる住処ではなく資産ととらえる人が増えたことで、住民自らが価値をキープするための施策を打ち出すケースが増えている」という。それも、若い住民たちが積極的に関与する動きが目立つというのだ。

「興味深いのは住民同士で組織する自治会の中心に30~40代がすわり、仕事で培った知識やスキルを活かした取り組みを行っていること。これまで自治会のトップというと、時間に余裕のある60代の方が担うことが多かったのですが、最近は30代が立候補し、理事長に推挙されるケースが目立ちます。現役バリバリのビジネスパーソンでもある彼らは自らが住むマンションを経営者のような視点でとらえ、主体的に資産価値向上を推し進めている。我々はそれを“住民経営マンション”と呼び、これからの分譲マンション管理の新たな潮流として注目しています」(池本氏、以下同)

たとえば、千葉市の中心部にある総戸数438世帯の分譲マンション「ブラウシア」には、30代の理事を中心とした若い自治会が組織されている。IT企業勤務のメンバーも多く、ウェブサイトやSNSを使った情報発信に積極的だ。

「マンションのウェブサイトとFacebookのページを作って、住民同士の交流イベントの様子やメディアに掲載されたことを報告したり、将来に向けたビジョン・理念を発信したりしています。普通、販売用のウェブサイトはあっても、住民自らがマンションの魅力を伝えるコンテンツってないですよね。要は自ら『イケてるマンション』だということをちゃんと内外にアピールすることで、価値を示していこうというわけです」

また、江東区有明に建つ1085戸のマンション「ブリリアマーレ有明」では、38歳の理事長が先頭に立ち、こんな取り組みを行っているという。

「有明北地区に存在する5つのタワーマンションの管理組合理事会で連携して『有明マンション連合協議会』という組織を作り、有明を住民にとって良い街にしていこうと活動しています。たとえば、有明という地域はやや交通の便が悪く、住民の多くが都心へ出るのに難儀していました。そこで、協議会として東京都に陳情し、それまで土日に1時間1本しか通っていなかった東京駅行きのバスを平日1時間4本、便数にして約15倍に増やしてしまったんです。一気に利便性が高まり、資産価値にも寄与する可能性があります。彼らは戦略的で、バスが開通することで見込める利用客の人数などもきちんと算出し、理詰めのプレゼンを行っています。まさに30代が優れたビジネス感覚を発揮している事例といえますね」

一方、マンション自体の資産価値を維持・向上させるだけでなく、マンションの原資を使って「収益」を上げようとする動きも。

「RJC48(リジチョー48)という、複数のマンションの理事長同士が集まる勉強会があって、そこで様々な構想を話し合っているようです。おもしろいのは、湾岸マンションにポスティングするチラシ業者を『有料登録制』にするプラン。つまり、自治会に認められた業者だけが、有料で投函できる仕組みを作ろうというものです。湾岸マンションの住民は高収入で購買意欲も高く、かなり有力な見込み客になり得る。お金を払ってでもチラシを届けたい業者は少なくないはずです。有料にすれば迷惑チラシも減りますし、そこで得た収益は住民のための交流イベント運営費や修繕積立金に充てられる。まだ実現はしていませんが、画期的な構想として注目しています」

なお、当事者意識をもってマンション管理にあたる30代が増えた背景について、池本氏は次のように分析する。

「最近は会社以外にも自分の居場所を求める、いわゆる『パラレルキャリア』のような志向が広がっていて、マンション自治会を自己実現のための場としてとらえる向きもあるのだと思います。求められる場所で手腕を発揮し、住民に感謝されることで自己承認欲求が満たされる。そんな魅力もあるのではないでしょうか」

実際、自治会を引っ張る若い世代の表情には、充実感がみなぎっているという。輪番制でイヤイヤ参加するといった自治会のイメージは、変わりつつあるのかもしれない。

(榎並紀行/やじろべえ)

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