親の才能は、どこまで子に伝わるのか

子供の学力、遺伝の影響が50%?

2015.10.16 FRI

格好いいパパに!オトコの子育て道場


育った環境や教育法が違えば、人それぞれ能力に差は出る。だが、遺伝による影響も、無視できないほど大きなものだった (写真提供/ISO400 / PIXTA)
ちょっと勉強すればデキる子もいれば、頑張っても成績が伸びない子もいる。人の学力には差があるけれど、この差はいつできるのだろう? 幼少期の経験の違いが学力の差を生んでいるのか? それとも体型や体質と同じように親から子へと遺伝するものなのか? 遺伝と環境の関係を20年以上にわたって研究する行動遺伝学者・安藤寿康(じゅこう)さんに聞いた。

「私が研究している行動遺伝学の成果をみると、学力やIQを含めたあらゆる心の動きや行動が、遺伝の影響を受けていると考えられます。ただ、知能や学力に遺伝がかかわっているというと『親が東大を出ているなら子供も勉強がよくできる』というふうに受け取られやすいんですが、これは間違いです。“遺伝がある”ということは、親の特徴が“遺伝する”ことではありません。むしろ、同じ親からまったく違う素質を持った子供が生まれてくるのが、遺伝子の仕組みであり特徴なんです」

人には2万数千種の遺伝子があり、子は両親から半分ずつ、ランダムに遺伝子を受け継ぐ。だから、同じ両親から生まれたきょうだいでも、どういう組み合わせで遺伝子を受け取るかによって性格や能力は異なるし、それぞれ親とはまったく違う素質を持って生まれてくるのだ。

「ただし、生まれ持った遺伝子がまったく同じ双子を調べると、学力や運動能力、絵画や音楽の才能はもちろん、性格や嗜好、収入などの社会的なポジションまで、個人差があるところには必ず、環境だけで説明できない遺伝の影響があることがわかります。一般的に遺伝の影響が強いと思われている体型や体質はもちろん、学力などの才能も同じ生命現象。遺伝が占める割合は、そんなに大きくは変わりません」

安藤さんがセンター長を務める慶應義塾大学ふたご行動発達研究センターでは、2000組以上の双子を対象にした様々な統計調査を行っている。双子なので、育った家庭環境はほぼ同じ。そのなかで、DNAが100%一致する一卵性双生児と、DNAが異なる二卵性双生児のグループを比較して一卵性の方が似ていたとすれば、それは環境要因ではなく遺伝の影響によるものだと考えられる。これを基本的な考え方として、遺伝と環境の割合を調べるのだ。

「私が最初に研究したのは、小学生の英語教育でした。英語を文法中心で教えるグループと会話中心で教えるグループでは、当然ながら文法力や会話力に差が出ます。これは純粋に教育の効果が表れているんですが、一卵性双生児と二卵性双生児のきょうだいをそれぞれ別のグループに入れて比較したところ、ほぼすべての項目で、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも類似性が高かった。総じていうと、英語力をはじめとする学力は、生まれついての遺伝が5割。のちの勉強によって得られる学力は5割程度だといえます」

もちろん、科目や調査項目によって多少の差はある。たとえば、リスニング能力には遺伝の影響がほぼ見られないため経験の差が出やすい傾向があり、文法力の方が遺伝の占める割合が高いことがわかった。興味深いのは、英語を学ぼうとする「意欲」についても、二卵性双生児では類似性が見られないのに対し、一卵性双生児では明らかな類似性が見られたこと。つまり、英語の能力や成績だけでなく、英語に興味を持ったり、積極的に勉強しようとしたりする姿勢にまで、遺伝の影響が表れていたのだ。

「この話を一般化すると、教育方法などの環境が異なれば、能力の違いは出てくる。ただし、遺伝的な素質というものもやはりあるということ。そして、英語力の場合は、能力が高い人は文法を中心に勉強した方が伸び幅が大きいけれど、能力が低い人はそうでもない。むしろ会話式で何回もゲームをやった方が、覚えが早くなるという結果が出ています。遺伝的な素質が違えば、効果的な教育方法も変わってくるのです」

遺伝的な素質があるということは、生まれ持った向き・不向きがあるということだ。ただし、だからといって「親に才能がないから、子供にもない」と考えたり、逆に「親にできることは、子供にもできる」と考えたりするのは早計。その人がどんな素質を持っているのかは、親を見てもわからない。様々なことを経験し、その素質が才能として発揮されることでしか、判断できないものなのだ。

(宇野浩志)

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