“高卒プロ入り”で即活躍した野手は3人だけ!?

「プロ入り志望」報道の一方で…清宮幸太郎に「大学進学」をすすめる声も強いワケ

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プロ野球ドラフト会議まであとわずか。2017年の話題の中心は、やはり早稲田実業の清宮幸太郎だ。

多くの人が熱視線を送っているが、プロ野球ファンとしては、やはりプロの世界で彼のバッティングを見てみたい! 日刊スポーツの取材でも、本人は「プロ志望届を提出する意思を固めた」と報道された。

しかし、専門家の間では「大学進学推し」の声も根強いというのだ。

名スカウト「大学でじっくり守備や走塁を鍛えるべき」プロではすぐに打撃の結果を求められてしまう

多くのメディアで、プロ野球OBや専門家が清宮の進路について語っている。

THE PAGEの「名スカウトは早実・清宮最後の夏をどう見たか?」という記事では、元ヤクルトスカウトの片岡宏雄氏が以下のように語っている。

「守備は鈍い(笑)。(中略)守りにはバッティングほどのセンスがあるとはとても言えない。(走塁も)一生懸命走ろうとしているのはわかるが、もっとしっかりと、手を振って走ればどうか。打つだけで使ってもらえるとなると、チームやリーグが限られてくる。(中略)私が監督なら、やはり大学を薦める。人格形成も含めて4年間で学ぶことは多い」

この意見と同様に、清宮の守備・走塁が現状ではプロレベルにないと指摘する声は多い。プロでは打撃の結果を求められて焦りが出てしまうはずなので、大学で時間をかけてこれらの弱点を鍛えるべきという話のようだ…。
出典

写真:岡沢克郎/アフロ

プロ入りしたら「1軍でホームランが見たい」というファンの注目がプレッシャーになる?

「大学だとチヤホヤされる」「トレーナーの力量不足」という声もあるが…里崎は「本人次第」

また、ズバリとした物言いで知られる元千葉ロッテの里崎智也氏にも話を聞いてみた!

里崎氏は、「プロと大学の選択肢を並べてメリット・デメリットを語るのはナンセンスだ」と前置きしつつも、「これまでそれぞれの道を選んだ選手のデータや傾向を見れば、ある程度考えることはできる」という。
出典

アフロスポーツ

千葉ロッテを日本一に導いた名捕手。教えてください!
たとえば早大に進学した場合はどうか。「大学ではプロほどしっかりしたトレーニングができない」といった意見もあるが…。

「プロのコーチやトレーナーが全員一流なわけではないですよね。一流の選手たちは自分でトレーナーを雇ったり、治療院を探したりするんです。僕もそうでした。大学でもプロでも、チームのなかに自分に合うトレーナーがいなければ、探せばいいだけです」

なるほど…。では、「チヤホヤされてしまい、斎藤佑樹のようにプロ入り後に活躍できないのでは?」という声に関しては?

チヤホヤされるのなんか、プロに行っても同じ。早大を経てプロ入りしても、阪神の鳥谷やメジャーリーガーの青木のように、一流になった選手も多いです。(斎藤)ひとりだけのイメージで語るのは意味がないと思いますね」

真に一流の選手であれば、環境によらず成長できるということのようだ。

“高卒プロ入り”で即戦力として活躍した野手は3人のみ。どのチームに入るかも重要

では、プロを選ぶとどうだろうか? 里崎氏は「前例から考えて、即戦力として活躍することは難しい」と語る。

「毎年100人以上がプロに入って、即戦力は1割程度です。しかも、ここ30年の高卒ルーキーの野手で、1年目から即戦力として活躍できた選手は、立浪和義さん清原和博さん松井秀喜さんの3人だけ。清宮選手がここに並べるのかと言われると、どうなんでしょうか…。大学なら1年生からスタメンで試合に出られると思うので、じっくり試合勘を養えたり、木製のバットに順応するための期間も確保できるのが良いですね」

相当難易度が高いことなのかもしれないけど、いきなり清宮がプロで活躍する道はないのだろうか…?

「弱いチームのほうが、レギュラー陣の実力からして出場・活躍の機会は増えるかもしれません。逆に、自分のポジションに有力な選手がいたら、かなり厳しくなります古田さんがいたときのヤクルトなんて入ったら、僕はチャンスすらもらえなかったはずです(笑)」

ポジションを考えると、強打のライバルが多い「一塁」しか守れない清宮がいきなりプロで活躍するのは難しいという。

「たとえばいま横浜に入って、1年目からロペス(今季27本塁打&94打点 ※9月15日時点)からポジションを奪えるかといえば厳しい。せめてDH(守備につかない打撃専門の打者)のあるパ・リーグのほうがいいでしょう

清宮がプロで活躍できるかどうかは、どのチームに入るかも大きなポイントになりそうだ。

〈取材・文=ブルトン森〉