人気の理由は「カレッジアイデンティティ」

“山の神”効果で志望者数が1万人増加!? 平均視聴率28%・箱根駅伝のスゴイ経済効果

  • 経済・マネー
  • 2017.12.01
  • by 新R25編集部

すっかり正月の風物詩として定着した箱根駅伝。毎年選手たちが懸命にタスキをつなぐ姿に感情移入してしまうが、ビジネスマンたるもの、このビッグイベントがもたらす巨大な経済効果についても知っておきたい!

約12時間の放送で平均視聴率は28%前後! 優勝校のメディア露出の広告費換算は約20億円!?

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若者のテレビ離れが進み視聴率に苦しむ番組が増えているなか、箱根駅伝の人気は衰え知らず。ここ3年は28%前後の平均視聴率を維持している(ビデオリサーチ調べ)。

20%を超えると“高視聴率”といわれる現代だが、往路復路合わせて約12時間にも及ぶ放送の「毎分視聴率」の平均でこの数字を記録するのは驚異的としかいいようがない。2016年の年間視聴率ランキングでも、箱根駅伝の往路・復路がそれぞれ5位・6位にランクインした。

このように高視聴率かつ放送時間が長い箱根駅伝は、CMはもちろん、レース中にも広告の露出機会が多く、その効果は絶大だ。

出典

長田洋平/アフロスポーツ

箱根駅伝の筆頭スポンサーはサッポロビール。ふだんはあまり意識したことがないかもしれないが、改めて見てみると選手のゼッケンやゴールテープに「★SAPPORO」ロゴが入っているのがわかるだろう。日経ビジネスオンラインのコラムによると「サッポロビールのスポンサー料は10億円を下らないといわれる」らしい。

さらに、各大学にもスポンサーがついている。アディダスは3連覇中の青山学院大学のスポンサーとして同校にユニフォームやシューズを提供しているが、上の写真のユニフォーム(左胸部分)にもロゴがチラリ。

電通出身で現跡見学園女子大学教授の山田満氏は、順天堂大学の准教授をしていた2007年に同校が優勝を果たした際、当時のメディア露出量を広告費換算で約19.5億円と推定(「2007年箱根駅伝総合優勝の広報効果の研究」より)。

これだけの広告効果が見込めるとあって、各スポーツメーカーは有力大学のスポンサーの座をめぐって熾烈な争いを繰り広げている。

東洋大学が初優勝したときは入学志願者が1万人増加!? 活躍すれば大学の宣伝効果も絶大!

画像は「TOYOWebStyle」のスクリーンショット

箱根駅伝での活躍は出場大学にとっても大きな宣伝効果をもたらす。

近年もっとも効果があった大学として挙げられるのは、2009年に“山の神”柏原竜二の活躍などで初優勝し、一気に箱根強豪校の仲間入りを果たした東洋大学。

J-CASTニュースの記事によると、「総合優勝した2009年の志望者数は前年より1万人増えて6万9000人」と約17%も増えた。同校の入学受験料が35000円(センター利用の場合は20000円)であることを考えれば、受験料だけで最大3.5万円×1万人=3億5000万円も収益が増えた計算になる。

また、先述の研究結果のなかで、山田氏は2007年に順天堂大学が優勝した際の広報効果(宣伝効果)を約58.5億円と算出(視聴者への信頼性の観点から、同じ露出量でも広報効果は広告効果の約3倍になるといわれている)。東洋大学のケースではそのインパクトからして、おそらくこれ以上の結果が出ただろう。

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東洋大学の絶対的エースとして、5区の山上りで3回も区間記録を更新した柏原竜二。今年3月末に富士通の陸上競技部を引退し、現在は同社のアメリカンフットボール部のマネージャーを務めている。

人気の理由は“カレッジアイデンティティ” 。正月に集まる家族が世代を超えて楽しめる唯一無二の番組

番組や大学をスポンサードすることによる広告効果、活躍した大学自身の宣伝効果、コース周辺の地域にもたらす観光経済効果…計り知れない経済効果を生み出す箱根駅伝だが、なぜこれほどまでに人気があるのか。

その理由は“カレッジアイデンティティ”にありそうだ。

WASEDA ONLINEのコラムで、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の松岡宏高氏はこう述べている。

「背景にあるのが、カレッジアイデンティティ(大学に対する帰属意識)である。好きな大学と自己を同一化させ、レースに陶酔する。『チームや選手とともに』という意識があるからこそ、2日間で11時間以上も継続して順位の変動に一喜一憂できるのであろう」

出典

YUTAKA/アフロスポーツ

第93回箱根駅伝で3連覇を果たした青山学院大学

箱根駅伝の放送前やレース中には、それぞれのチームの想いが丁寧に視聴者へ伝えられる。自分の出身校はもちろん、仮に出身校ではなくてもその裏にあるストーリーに感情移入し、自然と応援したいチームができあがるのだ。

また、正月で家族や親戚などが一堂に会するなかで、世代を超えて楽しめる番組として唯一無二のポジションを築いていることも高視聴率に大きく貢献しているだろう。「とりあえず箱根駅伝をつけておこう」と各家庭でチャンネルを合わせる習慣が定着している。

こんなふうに分析してみると、ぼんやり観戦していた箱根駅伝の違う一面が見えてくる。来年の箱根駅伝は、好きなチームを応援しつつこういったビジネス面にも注目してみると、より深く楽しめるかもしれない。