パイロットになる方法は3通りだが…

憧れの職業・パイロットが深刻な人手不足!簡単には増やせないそのワケとは?

  • 仕事・ビジネス
  • 2017.12.04
  • by 新R25編集部

憧れの職業というイメージがある「パイロット」。ところが現在、パイロットや管制官の数が不足していて、問題になっているのだという。いったいなぜなんだ?

バブル期に大量採用した40代以上のパイロットが退職し、2030年には深刻なパイロット不足に?

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「現在、多くの民間航空会社ではパイロットの平均年齢が高齢化しています。団塊世代のパイロットたちが退職し、さらに今後も大量退職が続くと予想されているのです」

パイロット不足がウワサされる原因について、日本フライトセーフティ社の飯田克博氏はこう語る。現在40代のパイロットたちが2030年には多く退職してしまう危機のことを、業界では「2030年問題」と呼んでいるらしい。

多くの業界の年齢別人口分布を見ても、もともと世代人口の多い40代は割合が大きくなっているが、なかでも航空業界は、彼らが10~20代だった1980年代に大きく成長した産業。たとえばJALの沿革を見てみても、1983年に旅客・貨物輸送実績世界一に、1987年には完全民営化を果たしている。1980年には390万9333人だった日本人海外旅行者(出国者)数も1990年には1099万7431人と大幅に増加しており、バブル期にはこのような好景気の波に乗ってパイロットを大量採用していたようだ。

訪日旅行が割安になり、外国人観光客が急増! LCCの登場などで航空機の数が大幅に増えた

このような危機的状況とはウラハラに、旅行ニーズは高まりつづけている。観光庁発表の資料を見ると、特に訪日外国人旅行者数の伸びが顕著だ。

訪日外国人旅行者の数は、2015年の1974万人から2016年にはさらに2400万人にまで増えている

これには日本のカルチャーへの興味の高まりはもちろん、ここ数年で多くのLCC(格安航空会社)が登場して、訪日旅行に割安感が出てきたことも大きく影響している。

朝日新聞によれば「格安航空会社(LCC)の就航拡大などで行き来する航空機の数が大幅に増えている」「2016年に管制官が対応した機体数は延べ約650万機で過去10年間で1.3倍に増えた。今後も年間数万機ペースで増えるとみられる」とのこと。

また、LCCが所有する機体は小型機が中心なので、大型機に比べ、乗客の数に対してより多くのパイロットが必要になる。そんなLCCを含む航空路線の増加が、パイロットや管制官不足に拍車をかけている現状があるようだ。

パイロットになる方法は3通りで、どれもハードルが高い。大学で資格を取得するには1000万円近い費用が…

航空大学校の本校は宮崎県宮崎市。北海道帯広市、宮城県仙台市にも分校がある(画像は「航空大学校」公式サイトのスクリーンショット)

でも、ニーズが増えているのは喜ばしいこと。なぜカンタンにパイロットを増やすことができないのだろう?

そもそも、民間航空機のパイロットになるためには、大きく3つの道があるという。

1つめは、航空会社に入社して「自社養成」というかたちで研修を受け、資格を取得する方法。人気の職種ゆえに競争倍率は高い。

2つめは、「航空大学校」に入学し、資格を取得してから航空会社に入社する方法だ。高専、大学、専門学校を卒業見込みであれば入れる「独立行政法人」だが、4年間で300万円以上の学費がかかるのにくわえ、入学の際に呼吸器系や脳波などを厳しく身体検査され、さらに「操縦適正検査」が行われるという。このため、入学するには8~9倍という高倍率をくぐり抜けなければならない。合格後も、待っているのは全寮制での訓練だ。

3つめは、私立大学・専門学校の操縦科やパイロット養成コースに入学し、資格を取得して航空会社に入社する方法。東海大、桜美林大、法政大などにこのようなコースがある。

私立大学で資格を取得してからANAの採用試験を受けたという現役パイロットは、「進路のミカタニュース」のインタビューで下記のように語っている。

「大学では1年次から国家試験を目指すための座学がスタート。年明けには国家試験というスケジュールでしたので、緊張感はありましたね。その後訓練が開始されるという流れです」

「私は1年半ほどアメリカで訓練をしました。全学生が2年次からは渡米して訓練し、ライセンスを取得することが、卒業の必須条件にもなっていました」

出典https://mikata.shingaku.mynavi.jp

なかなか大変な学生生活…! 桜美林大学のパイロット養成コースの場合、学納金と訓練費を合わせると4年間で1000万円近くの学費が必要になるようだ。

つまりどれを選んでも、ハードルが高い困難な道ということみたい…。それゆえ、「若手のパイロットを続々補充する」のは難しく、東洋経済オンラインの記事によると、「パイロットは毎年230人程度の養成ができそうだ。だが、国交省の試算値に対しては毎年70人程度、(5年間で)計350人が不足する」という試算もある。

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また、航空会社に現役で勤める関係者いわく、航空会社側も「パイロット養成にはお金がかかるから、なるべく少数精鋭にしたい」というジレンマを抱えているそう。さらに、海外のLCCなどには、莫大な給料を提示して航空会社が“自社養成”したパイロットを引き抜くような動きも見られるようで…。

個人的にはキムタクの『GOOD LUCK!!』(TBS系)みたいなパイロットものドラマが放送されれば人気が回復するんじゃないかと思ってたんですが、そんなにカンタンには解決しなそうです。

〈取材・文=新R25編集部〉