みんな「承認の欲求」の終わらせかたを知らない

「NEET株式会社」代表が教えてくれた“人間の完全形態”に生まれ変わるステップ

キャリア
頑張れないって、ダメなことですか?

…突然失礼いたしました。ライターのほしです。

GWの10連休があったせいか、仕事のモチベーションが停滞しています。自分でも「ダメな奴」だってわかっているんですけど…「頑張ろう」って気持ちが起きない…。

これってどうしたらいいんですかね?

その解決のヒントになったのが、ニートの方々の居場所を作っているNEET株式会社。

“頑張れない”ニートの方々が元気に活動しているところに、何か糸口があるかもしれない…そう思って、発起人である若新雄純さんのもとを訪れました。
【若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)】慶應義塾大学特任准教授・(株)NEWYOUTH代表。プロデューサー。専門はコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や「鯖江市役所JK課」など、実験的プロジェクトを多数企画・実施している。ニュース番組のコメンテーターとしても多数出演
「頑張れない」「働きたくない」って思ってしまう若手は、どうしたらいいですか?

教えて、若新せんせい!

〈聞き手:ライター・ほしゆき〉

頑張れない人は「承認の欲求」の終わらせ方を知らない…じゃあどうすれば?

ほし

ほし

先日、20歳ほど年が離れている上司に「いま頑張らないでどうするの? お前は根性がないな!」って言われてしまいまして…
若新さん

若新さん

あ~。

若手ってそういうこと言われがちだけど、どうしたらいいのかわからないよね。
そう! わからないんですよ!
ほし

ほし

自分より優れてる人を見ても「負けたくない」とか思わないし、むしろKPIとか目標設定されるほうがプレッシャーでやる気がなくなります…

どうしたらいいですか?
若新さん

若新さん

その問題を理解するには、まずは、自分がどういう状態にいるか把握すること。そうしないと解決策も腑に落ちないし、実行しようと思わないからね。

ちゃんと解説するには、アブラハム・マズローの考えを正しく理解するのが早いと思うんだけど…マズローってわかる?
スイマセン…わかんないです…
若新さん

若新さん

心理学者のアブラハム・マズローは、どんな人にも「生理的欲求」「安全の欲求」「所属の欲求」「承認の欲求」といった段階的な欲求があると説いた人なんだけど、ほとんどの人は、頂点に「自己実現の欲求」がある5段階のピラミッドの絵を思い浮かべる。

だけど、これは実は正しくないんだよね。まず、4段階の欠乏の欲求があって、人間はそこまでは、下から順番に「足りない」という欠乏感を順に満たしていると分析しているんだ。

そして、この欲求を段階的に満たしてレベルアップしていくことにモチベーションを感じる

どの段階にいるかが大事なんじゃなくて、“ある程度”欲求を満たしたら、次の段階に上がることで幸福感を得られると考えていたんだよね
出典

提供画像

「生理的欲求」は人間の本能に関すること。「安全の欲求」は、自分の生活や社会の安全を求める欲求。「所属の欲求」はコミュニティに属したいと思うこと。「承認の欲求」はまわりの人から尊敬されたいと思う欲。「自己実現の欲求」は、成長欲求という別の次元の段階になる
若新さん

若新さん

で、今の日本なら、ほとんどの人は安全の欲求まではすぐ満たせるし、学校に通ったり会社で働いたりしている時点で「所属の欲求」もある程度満たされている。まぁ、選ばなければだいたいどこかに所属まではできる。

問題は「承認の欲求」。多くの人は、このステージで滞留してしまってることが多いと思う。

それはつまり、承認の欲求を満たせていないじゃなくて、承認の欲求を満たすことばっかりずっとやり続けてしまっていて、次の段階にいけなくなってしまっている、ということ。

本当は、「承認の欲求」もある程度満たされればそれでいいんだよ
ほし

ほし

だからみんなSNSで「いいね」を求め続けてるのか。

でも、今って「SNS疲れ」している人も多いですよね。もしかして、SNSで「承認」を求めていてもキリがない…?
若新さん

若新さん

そう! 

他人からの評価をそこそこゲットできたら、自分で自分のことを楽しんだり納得できたりする次の段階にいかないといけない。

仕事を頑張れないのは、仕事を頑張って人からの承認はそこそこもらえても、自分のことを納得できてないからなんだと思うよ。
若新さん

若新さん

だから君の現状を打開するには、「自分自身の素質を活かした納得できる人生を送れている」という実感が必要不可欠になる。

この仕事は私がやってる意味があるわー」って納得感を持てるような仕事じゃないと、頑張れないのよ。

モヤモヤを抱えて立ち止まっている20代は、まず「実験場」をつくること

ほし

ほし

あの、そもそも「自分の素質」がわからないんですが?
若新さん

若新さん

うん、そうだよね(サラッ)。
へっ…
若新さん

若新さん

「自分の素質」がわからない人って、ルーティーン化した日常を過ごしていて、素質を見つける機会がないんだよ。

「自分の素質」は、結果がどうなるかわからない、答えが見えない“実験”に取り組みながらじゃないと見つけられないと思っている。
ほし

ほし

実験、とは?
若新さん

若新さん

なんでもいいから、新しいことを試してみたらいいよ。領域をひろげる。

自分は何をするのが好きで、何が自分に合っているのか」なんて、いろいろ試してみないとわからないんだ。

自分にはセンスがないだろうと思っていたことが、唯一無二の武器になったりするし。

たとえばカメラが趣味なら、そういう仲間たちと集まってひとつ写真集出してみるとかね。
ほし

ほし

そんな簡単なことでいいんですか!
若新さん

若新さん

NEET株式会社に、プラモデルが超好きなメンバーがいて。

彼は就職したくなくてニートになったわけだけど、すっごい精巧にプラモデルを作れるスキルを持ってたの。

遊びの延長でなんとか活かせないかと思って、「プラモデル製作代行」っていうサービスをゆるく始めたらいろんなオファーが来たんだよね。

月に2万円くらい稼げるようになったらしい。
実際にその方が代行して作ったガンプラ。かっこいい
若新さん

若新さん

まともな大人は、月2万じゃダメじゃんという。

ところが、彼はすごく納得して楽しんでる。若者が「自分自身の価値を発揮できている」と感じたときのエネルギーは本当にすごいよ。「自分にしかできないこと」を追求している幸福感がブレない原動力になる。

それが「承認の欲求」を終わらせた姿なんだよ。ニートなのに、承認の欲求を満たし、自己実現に向かうことができている。たぶんね。
ほし

ほし

すごい…
若新さん

若新さん

だから、もし会社内でそういう「実験場」を見つけられそうなら思いっきり飛び込んでみるべきだし、会社で実現するのが難しいなら、割り切ってクビにならない程度の省エネモードで働いて、アフター5や休日に実験場を作ればいい

社外に活力の根源となる実験場を作れたら、少なくともその資金のために会社で頑張ることの意味が持てるしね。

「頑張れない自分」を責めずに、自分の可能性を探してみてよ!
せんせい…!

20代のうちに「自分の素質」を発揮できれば「人間の完全形態」になれる!?

若新さん

若新さん

じゃあ最後に僕の仮説を言ってもいいかな?
ほし

ほし

え…はい。
若新さん

若新さん

ここまで「承認の欲求」の話をしてきたよね。

君たちが「承認の欲求」にいつまでもしばられず、自分の素質を発揮できるようになれば、さらに上の成長の欲求である「自己実現」の段階に向かうことができる。

その理論通りなら、この「自己実現」を突き詰めて楽しむことに、人生の大半を費やすことができるはずなんだ。

マズローはこれを、まったく次元の異なるものだと言っている。
ほし

ほし

たしかに…もし25歳で「自分の素質」に気づいて発揮することができれば、40~50年は「自己実現」を追求しつづけられますね。
若新さん

若新さん

そう。でも、多くの人は、この「自己実現」の本当の意味を知らないんだよ。

実はマズローは晩年、「自己実現」の延長線上に「自己超越」と言われるステージがあると語っていて…
ほし

ほし

自己超越?(ヤバそうな単語…)
若新さん

若新さん

まぁ、厳密に解説しようとするとかなり長くなるから、ざっくりした説明になるけど、自分の素質や可能性を追求しつづけていくと自分の本来の姿が実現され、さらには「自分はこれを成し遂げるために生まれてきたんじゃないか」みたいな使命感が与えられると。

その使命感に生きる人を「自己超越者」、マズローは“人間の完全な形態”だ、みたいなことを言っている。

使命感というのは、別に社会的に立派なことばかりじゃない。ニートが暇な時間をつかってプラモデルを楽しく制作代行することだっていい。

つまり、君たちは、人間の完全形態になれる可能性があるんだよ!!(バンッ!)
「『人間の完全形態』って最高の中二病ワードじゃない!?」
若新さん

若新さん

僕はこんなに多くの人たちが、自分の可能性を自由に追求できる時代になったというのは、素晴らしいことだと思う。

だから、「仕事を頑張れない」なんて、考えていてもどうしようもない悩みはさっさと終わらせられるのがいいよね。
終始意気揚々としながら、「頑張れない問題」について解説してくださった若新さん。

人間の完全形態…ちょっと壮大すぎるかもしれませんが、まずは小さなことでもいいから「自分はこんなこともできるのか」って感じられるものを増やしていくことが重要なんですね。

若新せんせい、ありがとうございました!

〈取材・文=ほしゆき(@yknk_st)/撮影・編集=福田啄也(@fkd1111)〉

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