「リスクを取らなくてもできることはたくさんある」

サラリーマンが資本家/起業家マインドを身につけるには? 明日からできることを教えてもらった

仕事
2019年7月、一橋大学の一橋講堂にて、NewsPicks主催のイベント「三戸政和×光本勇介『資本家/起業家マインドセット』」が開催されました。

登壇者は株式会社日本創生投資 代表取締役社長 三戸政和さんと、株式会社バンク代表取締役 光本勇介さん。モデレーターは(当日ダブルブッキングで来れなくなってしまった箕輪厚介さんの代わりに)新R25編集長の渡辺が担当。

資本家/起業家マインドを身につける方法」を探った本イベントで、ふたりが「サラリーマンでも絶対にできる」と口を揃えて断言した理由とは?

「資本家マインド」「起業家マインド」とは何か?

資本家マインド=究極の効率化思考

――まず三戸さんにお聞きしたいのですが、「資本家マインドセットを持った人」とはどういう人なんでしょうか?

三戸さん:究極的に効率化できる人」だと思いますね。

会場にいるみなさんは、サラリーマンの方が多いかと思います。自分の体と時間を使って働いて、給料をもらう。

だけど、たとえば上場企業の株を持っていると、自分が動かなくても配当やキャピタルゲインが入ってくるじゃないですか。

また、会社のオーナーになると、その会社で働いている人たちがうまく事業をまわしてくれればお金が入ってきます。

そうすると、自分のリソースを使うことなく、自分のやりたいことが好きなだけできます。

資本家は「自分の人生の時間を最も効率的に使うことができる」というのが基本的な考え方です。
【三戸政和(みと・まさかず)】株式会社日本創生投資代表取締役CEO。兵庫県出身。同志社大学を卒業後、2005年にソフトバンク・インベストメント(現 SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして、日本やシンガポール、インドのファンドを担当。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。株式会社インターステラテクノロジズの取締役も務める。著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社)、『資本家マインドセット』(幻冬舎)など

起業家マインド=“自分でやってみる”実験思考

――光本さんは、「起業家マインド」のある人はどういう人だと思いますか?

光本さん:僕は、出資というものにまったく興味がないんですよ。

個人の付き合いで20~30社くらいは出資してきましたけど、1ミリも楽しくなくて(笑)。

自分が関われないと楽しくないんです。直接手を出したくなるし、判断したくなるし、その事業を自分でやりたくなっちゃうんです。

これを起業家マインドと呼ぶかはわかりませんが、資本家とはそこが大きく違うような気がしますね。

もちろん起業はやってみないとわからないし、思い通りにいかないことのほうが多いです。

僕もいろいろな事業をつくって、いっぱい失敗しました。ただ、それを通して学べたことや得られたものもいっぱいあります。

そういう実験が日々楽しくてしょうがない
ですよね。
【光本勇介(みつもと・ゆうすけ)】株式会社バンク代表取締役社長。神奈川県出身。2004年、青山学院大学を卒業後、新卒で外資系広告代理店に入社。2008年に独立し、株式会社ブラケット(現 ストアーズ・ドット・ジェーピー株式会社)設立。代表取締役兼CEOに就任。2016年、同退任。2012年、誰でも簡単にオンラインストアがつくれるアプリ「STORES.jp」リリース。2017年、株式会社バンク設立。株式会社スタート・トゥデイ(現 株式会社ZOZO)や株式会社DMM.comに対し、全自社株の売却やMBOを行い、世間を賑わせた。著書に『実験思考』(幻冬舎)がある

ふたりの資本家/起業家マインドの原点は?

資本家マインドの原点は「サラリーマン時代に感じた違和感」

――続いて、おふたりが「資本家マインド」「起業家マインド」を得たきっかけについて聞きたいのですが、何か原体験があったのでしょうか?

三戸さん:私が資本家を志したきっかけは、ベンチャーキャピタルに勤めていた時代に、同い年くらいの経営者がIPO(株式上場)で数百億、エグジット(株式売却)で数十億という資産を築いていくのを見てきたことです。

「この差は何なのか」と思ったときに、「エクイティ(株)」を持っているかどうかの違いだということに気づいたんです。

エクイティを持っておけば、同じことをやってもまったく規模の違うリターンが得られる。そうすれば、自分のリソースを使わずにまた別の好きなことができますよね。

――サラリーマン時代の気づきが原体験だったんですね。

三戸さん:まあ、もともと自分がズボラでサボりたい性格だったのもあると思いますけどね(笑)。

起業家マインドの原点は「高校時代の転売経験」

――著書である『実験思考』のなかにも書いてありましたが、光本さんは高校生のときに服の転売をしていたんですよね。それが「起業家マインド」の原点なんでしょうか?

光本さん:そうですね。まだヤフオクとか楽天もなかった高校生のころ、夏休みを使ってよく裏原宿に行っていたんです。当時、いろいろなアパレルブランドが立ち上がって大人気だったので。

そこで洋服を買って、ネットの掲示板でチェコの人たちに転売しまくったら、これがめちゃくちゃ儲かったんですよね。高校生ながら月に100万~150万くらい稼いでいましたから

自分で需要と供給のスポットを見つけて、それが数字として結果にあらわれる。そのおもしろさがきっかけでビジネスにハマった気がします。

資本家/起業家マインドを身につけるにはどうすればいい?

サラリーマンでも会社を買うことはできる

――ここからは、「資本家マインドセット」「起業家マインドセット」を身につけるためにはどうすればいいか?ということをお聞きしたいと思います。三戸さんは、サラリーマンでも資本家マインドを身につけることはできると思いますか?

三戸さん:できます。サラリーマンの方でも、上場企業の株って買えますよね。小さい会社なら、丸ごと買うことだってできます。

――三戸さんは『サラリーマンは300万で小さな会社を買いなさい』(講談社)という本を書かれていますが、“会社を買う”というのは、サラリーマンにはなかなかイメージできないのかなと…。

三戸さん:
社員が何百人もいるような会社じゃなくて、街にある小さなタバコ屋さんみたいな会社をイメージしてください。そういうひとつの「事業を買う」という感じです。

――会社を経営するイメージを持てない人も多いと思いますが、買ったあとは何に気をつければよいですか?

三戸さん:働いている人たちに「どうしたら気持ちよく働いてもらえるか」を考えればいいだけですよ。

組織は人でできているので、その人たちがこれまで通り働いてくれたら、会社は変なことにはならないわけです。込み入ったことはわからなくても、それならできるじゃないですか。

そのうえで、もしも自分が買った会社の業界に関する知見や人脈を持っていたとしたら、そのリソースをうまく注入してあげればいいだけです。

お客さんをつなぐとか、仕入れ先を紹介してあげてコストダウンを図るとか。

“自分のできるリソースの範囲で”その会社を効率化したり、マネジメントしてあげたりすればいいわけです。

――なるほど。そう言われるとやれそうな気がしてきます。

三戸さん:実際に私は、自分のファンドとして会社を経営しているし、投資先も5~6社あって、売上は全部で100億円くらい。

だけど、自分が使っているリソースは1日あたりおそらく1時間もないです。

ということは、自分がこれに加えて会社員としてフルタイムで働くこともできるんです。そこは自分のリソースの使い方や思考プロセス次第。

自分で小さな会社を買ってみて、あとでもし問題が出てきたら、また売ればいいだけですよ。

会社を買うことも、それくらいライトに考えたらいい
と思いますね。

ビジネスの基本が学べる「せどり」。週末でカンタンに稼げる

――先ほど光本さんは学生時代にせどり(転売)を経験していると言っていましたが、起業家のせどり経験率、相当高くないですか? そういう体験が起業家マインドを養うことにつながるんでしょうか?

光本さん:たしかに。せどりは僕のまわりの経営者でもかなりの人が経験してますね。

「安く仕入れて高く売る」っていうのはビジネスの基本ですけど、やってみると「あ、こんなもんなんだ」と思えるから、それをきっかけに一歩踏み出しやすくなるのはあるかもしれないですね。

一度そういった経験をしちゃえば、サラリーマンを辞めなくたって、リスクを取らなくたってできることがいっぱいあることがよくわかると思います。

――たしかに、せどりならサラリーマンを辞めなくてもできますね。

光本さん:はい。僕の友だちにも、週末にせどりで稼いでる子がいます。

普段は普通のOLなんですけど、質屋でGUCCIの服を買って、それを別の質屋で売って儲けてるらしいです。

やり方としては、A店で売っているモノの価格を記録してから、B店に行って「これ持ってるんですけど、売ったらいくらで買ってくれますか?」って聞く。

その店のほうが高かったらすぐA店に買いに行って、B店で売るだけです。

――なるほど。それなら小学生でもできるかもしれません(笑)。

光本さん:考え方次第で、本当に何でも商売になるんですよ。

たとえば、ちょうど1年後にオリンピックがあるじゃないですか。たぶん死ぬほど海外から人が来て、東京都内がものすごい人口になると思うんです。

僕、その1カ月間だけで1億円を稼ぐ実験をしてみたいと思ってるんです。

――1カ月で1億ですか。

光本さん:全然できると思いますよ。

これは僕がやりたいのでみなさんはやらないでほしいんですけど(笑)、たとえば…

(以下、オフレコ)

――なるほど、すごい…。

光本さん:こんなふうに、僕は「30日間で1億円稼ぐ方法」を半分遊びで、半分まじめに、他にも10個くらい考えていて。

だから、1カ月で100万円稼ぐ方法なんていくらでもあります。ネタはいっぱい転がってるんですよね。
――でも、「これから起業家として生きていこう」みたいに大それたことを考えるんじゃなくて、「この1カ月だけやってみよう」と期間を区切るのはいいですね。トライするハードルが下がります。

光本さん:先ほどのOLの子みたいに、週末だけやってみるのでも全然いいと思います。

手っ取り早く資本家になるなら「顧問」がオススメ

三戸さん:あと、サラリーマンでやりやすいのは、顧問になることですよ。

たとえば渡辺さんなら、オウンドメディアを運営する企業やオールドな広告代理店の顧問になって、月1回の経営会議で「いまのネットメディアはこんな感じだから、こういうことをやってみたら」とアドバイスする。

それだけでも相手からすればすごい価値があることで、月5万でも10万でも払う会社はいくらでもあると思います。

そこから社数を増やして月10万→20万→30万…と稼げるようになったら独立できるかもしれないし、顧問としてのアドバイスが刺されば、「うちの会社を頼む」と、事業承継されるかもしれない。

――どうすれば顧問になれるんですか?

三戸さん:知り合いの社長とかに「こんな顧問契約を考えてるんだけど、どうですか?」って聞いていくだけです。

向こう側からすると、他社に勤めている人は自分の会社の顧問にはなってくれないと思ってますから、自分から言ってみればいいんです。名刺の裏に書いておくのでもいいかもしれません。

中小企業なんかは特にリソースが足りないので、ふだん外からアイデアをもらえることはあまりないんです。

だからそういう人にフラグを立てながらアプローチしていけば、絶対に声がかかります。

そうやって「お金を稼ぐクセ」をつけていくといいですよね。

――「お金を稼ぐクセ」っていいですね。最近は副業をしているサラリーマンも増えていますが、「顧問」という選択肢はなかった人も多そうです。

まずは小さく動いてみる。やってだめならやめればいい

――最後におふたりから、資本家マインド/起業家マインドを身につけたいと思っている会場のみなさんに、ひと言ずつアドバイスをお願いします。

三戸さん:いま僕が着ているTシャツにも「JUST DO IT」って書いてあるんですけど、とりあえずやってみないと何も始まらないですよね。

たとえば、Facebookのプロフィールに「会社を買おうと思っています」と書く。すると、そこに声をかけてくれる人が出てきて、「紹介してあげるよ」と会話が進むかもしれない。

まずはアクションを起こしてみることです。小さく始めるでもいいので、まずやってみることが大事ですね。

――ありがとうございます。続いて、光本さんお願いします。

光本さん:三戸さんに言いたいこと言われちゃいましたけど(笑)、僕も「会社を辞めて起業したい」という人は、とりあえずやってみればいいと思うんです。

実際に起業してみて、ちょっと違うなと思えば会社に戻ればいいだけですし。

起業って、思っているほどまったく怖くはないし、失うものもない。でも、得るものはいっぱいある。

なので、やった人には得しかない。僕は、常日頃そう思っています。

――ありがとうございます。週末のせどりや顧問契約など具体的なアドバイスもいただいたので、ふたりの話を参考に、会場のみなさんにも資本家/起業家への第一歩を踏み出していただけたら幸いです。

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