伊藤羊一著『0秒で動け』より

「すげー」「やべー」を口グセに。すぐ動ける自分になる“仮説力”を鍛える3つの習慣

仕事
今やるべきだとわかっているのに、仕事をずるずると先延ばしにしてしまう…。

気合いやメンタルのせいにされがちなこの現象ですが、じつはある「スキル」を身につけるだけで解決できると、ベストセラーになった書籍『1分で話せ』の著者・伊藤羊一さんは言います。

そんな伊藤さんも、20代のころはどう仕事をしていいかわからず、成果を出す以前に何も動けていない状況だったそう。

そこから行動力を伸ばした方法が集約されたのが、新著『0秒で動け』。

行動力を伸ばすスキルはどう鍛えられるのか、本書から学んでいきましょう!

仮説力を鍛える3つの習慣

すぐ動ける人というのは、「よし、これでいこう」という「結論」を出して動いています。

そして「結論」を出すためには「仮説」を立てる力が必要です。

「仮説」というと難しく聞こえますが、普段の生活の中で、誰もが仮説を立てながら動いています。

たとえば「今日の夜は冷えそうだから、長そでを用意していこう」と考えて出かけるのは、仮説を立てて動いているのです。

この「仮説を立てる力」を色々なところで意識するだけで、「動く」力は飛躍的に高まっていきます。

とても大事なことなので、もう少し話しますね。

たとえば「これからは人生100年時代だ」という話を聞いたとしましょう。

「ふうん、そうか」と漫然と聞き流すこともできます。

「人生100年時代なら、80歳くらいまでは現役で働くのが当たり前になるかもしれない」と、予想が入った意見ができれば、それが仮説になります。

「じゃあ私は今40歳だけど、これから40年仕事をするために、今からもう1つ仕事をはじめよう

これが自分なりの「結論」です。

ここまで考えることで、初めて「行動」につながります。

日常のあちこちで仮説を立てることで、色々な行動につながり、可能性が広がっていくのです。

言い換えるなら、なかなか動けない人というのは、仮説を立てる習慣がないことが多いのです。

とはいえ、そんなに仮説なんて出てこない、ということも多いと思います。

「直感型の天才肌の人しか、できないのでは?」と思っている方もいるでしょう。

確かに仮説を立てるためには「直感」が大事だ、という話をしました。

でも、「直感」は鍛えることができます。

直感を鍛えるには、次の3つが大事です。

・志
・妄想
・好奇心

」があれば、そこにたどり着くためにはどうするべきか、という「妄想」が生まれます。

常に「自分だったらそうするか」と志と照らし合わせて考えられますので、すぐに「結論」が立てられます。

そして、「志」と「妄想」があれば、自然にそこにつながる情報を集めようとしますので「好奇心」が生まれます。

すると、「結論」につながるネタが収集できますので、常に「仮説」ができている状態になります。

習慣①仮説の軸となる「志」

「志」というと、ちょっと大げさに聞こえるかもしれません。

要は「自分がどんなふうになりたいか」「自分の人生や仕事で何を成し遂げたいか」を思い描くことです。

これが強ければ強いほど、結論は出しやすくなります

なぜなら志をベースにそこにあてはめながら結論を出そうとするからです。

習慣②仮説力を鍛える「妄想」

自分の中で志が明確になると、身のまわりのどんな事象を見ても「自分だったらどうするか」ということを考えるようになります。

「私だったら、こんなふうに振る舞うのに」「俺だったら、ここではこう意思決定する」などです。

ここでは、これを「妄想」と呼びます。

「妄想」というと、仮説とは関係がないことのように思えますが、実際の自分を振り返ってみると、「妄想」が構造化されてビジネスの仮説につながっていったということはよくあります。

私は20代のころ、段取りが悪いし要領も悪いし、「ソツがある」とよく言われていたんです。

「ソツがない」の逆ですね。

「今何が必要なのか」「この行動をするとどんなことが起こるのか」といったことを考える能力が極端に不足していたわけです。

能力が不足していたというより、考える習慣がありませんでした。

今、それができるようになったのは、妄想から、仮説をたくさん出すようになってきたからです。

最初は、ビジネスと結びつけることなく、単に現実逃避したくて様々なことを妄想していただけで、何の役にも立たなかったのですが、仕事が楽しくなっていく過程で様々なインプットをすることによって、妄想を組み立ててビジネス上の仮説につなげるということが急速にできるようになっていきました。

この仮説ができればできるほど、そこに様々なネタがつながってきて、さらに仮説が強くなっていきます。

たとえば、電車に掲載されている週刊誌の広告の見出しだって、仮説を立てるトレーニングになります。

「見出しのトップに出ているこの企業は今、苦境に立たされているみたいだけど、自分だったらどうのりこえるか」などと考えるわけです。

芸能人の悩みを受けるテレビ番組だって「聞き手は、ああ答えたけど、自分はこう答えるな」と考え、インタビューを見ていても「自分だったらどう答えるか」と考えることで、トレーニングになります。

様々な物事について「自分ごと化」して考えると、様々な仮説が立てられ、ひいては実際に起こったときにも、スムーズに動くことができます。

そうやって様々な局面で、「この場合は、どう動くといいだろう?」「自分だったらどう言うだろう?」と妄想し続けたら、「仮説の引き出し」に、様々なネタが記録されていくわけです。

バラエティのタレントさんからも学びます。

タレントさんの「ほうほうほう」みたいな返し方など、これは自分だったらどの局面でどう使えるだろうか?などと考え、「ビジネスの場で、みんなを和ませる返し方」というタグをつけて、自分の仮想フォルダにどんどん入れていくわけです。

そのなかから、必要に応じて使ってみて「うまく効いたな」とか、「イマイチだったな」と、自分のコミュニケーションのとり方のサイクルを回していきます。

そうして自分の中に行動の仮説がたまっていくわけです。

これを繰り返していくと、様々な事象を自分に引き寄せて考えられるようになるので、自然と情報収集のアンテナを張るようになります。

いつの間にか「好奇心」が生まれるのです。

好奇心が生まれると、さらに様々な事象を自分ごととして考えるようになり、さらに仮説のネタが集まってきます。

習慣③好奇心を鍛える「すげー、やべー力」

「羊一さんって、最初に会ったときは、本当にただのつまらないおっさんだったよね」

私の昔を知る友人たちから、よくこんなふうに言われます。

実際、その通りだったと自分でも思います。

43歳のとき、プラスに勤めながら、ソフトバンク創業者の孫正義社長の後継者を見出すという触れ込みではじまったソフトバンクアカデミアに入ったころの話です。

当時の私は、好奇心というものが皆無といっていい状態でした。

なにしろ「迷ったらやらない」が信条だったくらいです。

たとえば、ある映画が面白いと話題になっていたとします。

観に行こうかな、とは思うのですが、休日になっていざ出かけようとすると、なかなか起きられない。

混んでいるところに出かけるのもいやだ。

雨も降りそうだし、今日はやめておくかと思っているうちに上映時間が終わってしまう。

そんなことの繰り返しでした。

面白そうな誘いを受けても、なんとなく先延ばしにしてやらない。やることによって得られるメリットより、やらないことによって面倒を避けたり、変わらない生活を維持するほうがいい。

そう考えていました。

当時の自分から、何が変わったのでしょうか。

それは「すげー、やべー力」を身につけたことだと思います。

これは私が生み出した「好奇心発生装置」の名前です。

ソフトバンクアカデミアでは、同期の仲間たちがいつも楽しそうに話していました。

私は最初、彼らに引け目を感じていました。なかなか話の中に入れないし、「これ、すごいよね!」と話しかけてもらっても、いまひとつわからなくて「う、うん」という鈍い反応しかできない。

しまいには「伊藤さん、つまらなそうだね」と言われてしまう始末です。

そこで、なぜ彼らが楽しそうなのか、観察してみました。

すると、とにかく「これすごくない?」「うんうん、やべー!」という言葉がやたら多いことに気づいたのです。

「この新しいiPhoneすごくない?」「すげー!」「やべー!」といった具合です。ひたすらそういう会話をしているのです。

みんなと同じテンションで返事ができるようになればいいな、と思った私は、とりあえず真似してみることにしました。

何か新しいものに触れるつど、「すげー」「やべー」と、声に出して言うようにしたのです。

なんということもない記事でも、読みながら「これすげー。えっなに、やばくない?」というようにです。

その方法はどうも効果的だったようです。

「すげー」という言葉は、もちろん自分が発しているのですが、同時に自分の耳にも入ってきます

その耳に入ってくる「すげー」「やべー」という音声は、言っている主語が誰、ということを認識しないで、「対象物=すげー」というタグづけをして脳は記録するそうなのです。

そのうち、脳の中に「すげー、やばいリスト」が充実してくると、そのリストにあるものとの比較で、自然に「これ、すげー」「やべー」と感じるようになっていきました。

要するに、自分の言葉で自分の脳をだましていったのです

さらに、思わぬ効果がありました。

「すげー」「やべー」と騒いでいると「何がすごいの?」と周囲から聞かれます。

そこで「このアプリがすごいんだよ!」というと、面白い話に反応する人たちが「俺のネタのほうがもっとやばいよ!」という話をはじめます。

そこで新しい情報ゲットです。

その結果、「すげー、やべー」のスパイラルに突入していくのです。

これによって、色々なことに関する感度が飛躍的に高まりました。

つまり、好奇心を後天的に生み出すことに成功したのです

もちろん今でも、疲れたから出かけたくないな、と思うことはしょっちゅうあります。

けれども「すげー、やべー」ものに反応する感度が上がったことで、頭で考えなくても、自然と体が動くようになっていたのです。

直感を働かせるには、まずは好奇心

あまり心が動かないという人は、まずは「すげー」「やべー」と言ってみることからはじめてはどうでしょうか?

「行動できる人」=「仮説を持っている人」

繰り返しになりますが、行動できる人とできない人は、こういう「仮説」を普段から持っているかどうかが大きいです。

経験があっても動けない人がいる。

それは、その経験から仮説を立てていないからです。

逆にいえば、実際の経験がなくても、様々な事象について「自分ごと」で考えて仮説を立てていくことができれば、すぐ動けるようになるのです。

そういう人は瞬時に判断して動けるリーダーになれますし、そうでなければ、いつまでたっても同じことの繰り返しになってしまいます。

その差の積み重ねが大きくなっていくのです。

行動力を鍛える方法を体系的に学ぼう

0秒で動け

0秒で動け

「すぐ動く」ための行動力について書かれた『0秒で動け』。

「気合いやメンタルに頼って行動しても長続きしない」という前提のもと、“頭の使い方”を変えて行動を習慣化させる方法が記されています。

「早くやらなきゃと思っても動き出せない」

「行動できない自分はダメだと自己嫌悪になる」

そんな方は、本書の内容を実践して、行動力を上げる「スキル」を手に入れてください!