メインディッシュには魚がおすすめ

牛肉を食べると“がん”のリスクが上がる!? 医師が語る「健康に良い食品・悪い食品」

カラダ
「健康的な食事」というと、私たちがいつも食べている日本食をイメージする人も多いでしょう。

しかし、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部で助教授を務める医師・津川友介先生いわく、「日本食が健康に良い」という科学的根拠は弱いそう。

津川先生の著書『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』では、信頼できる研究結果にもとづいた「本当に健康に良い食事」が解説されています。

 今回は同書より一部を抜粋し、科学的根拠にもとづく「健康に悪い食品」と「健康に良い食品」をご紹介します。
【津川友介(つがわ・ゆうすけ)】聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード公衆衛生大学院での勤務を経て、2017年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部・医療政策学部 助教授(医師)。日本医療政策機構理事。ハーバード大学博士課程修了(PhD)。ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する情報を発信している。著書に『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』 (東洋経済新報社)、『原因と結果の経済学』(ダイヤモンド社)がある
2015年10月、世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)が、世界中の研究結果を元に、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉をグループ1 (人に対してがん性が゙ある)、赤い肉をグループ2A(おそらく発がん性がある)に分類した(ⅰ)。
赤い肉とは、牛肉や豚肉のように見た目が赤い肉のことであり、いわゆる「霜降り肉」も含まれる。

一方で、鶏肉は 「白い肉」と表現され、赤い肉には含まれない。
9つの論文を統合したメタアナリシス(※1) (ⅱ)によると、加工肉の摂取量が多くなるほど、全死亡率、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化による死亡率、がんによる死亡率がいずれも上昇することが明らかになっている。

5つの論文をまとめたメタアナリシス(ⅲ)によると、加工肉の摂取量が1日あたり50 g増えるごとに脳卒中を起こすリスクが13 %増加し、赤い肉の摂取量が1日あたり100〜120g増えるごとに脳卒中のリスクが11%上がることが明らかとなっている。

普段の食事では、できるだけ赤い肉や加工肉の量を減らして、代わりに魚(健康へのメリットあり)や鶏肉を摂取することをおすすめする
※1 メタアナリシス…複数の研究結果をとりまとめた研究手法

魚を食べると、心筋梗塞や乳がんのリスクが下がる

メインディッシュには魚がおすすめである。

2016年に欧州の権威ある栄養学の雑誌に12個の観察研究(合計67万人)のデータを統合したメタアナリシスの結果(ⅳ)が掲載された。

その結果、魚の摂取量が多い人ほど死亡するリスクが低いことが明らかとなった 。
1日60gの魚を食べていた人は、魚をまったく食べない人と比べて12%死亡率が低かった。

複数の研究を統合したメタアナリシス(ⅴ)によると、1日あたり85〜170gの魚(特に脂の多い魚)を摂取すると(ほとんど魚を食べない人と比べて)心筋梗塞により死亡するリスクが36%低下することが明らかになった。

魚をたくさん食べるとがんになるリスクも下がる可能性も示唆されている。

21個の観察研究を統合したメタアナリシス(ⅵ)によると、魚をたくさん食べると乳がんのリスクが下がることがわかっている
魚には、水銀、PCB(ポリ塩化ビフェ ニル)、ダイオキシンなどの有害物質も含まれていると言われている。

水銀は大量に摂取すると子どもや胎児の脳の発達に悪影響があると言われているものの、少量の摂取がどのような悪影響を及ぼすのかに関してはまだわかっていない。

PCBやダイオキシンの健康に対する作用に関してもわかっていないことが多い。

しかしこれらの少量の有毒物質が含まれていることが心配だから、魚を控えるというのは得策ではないようだ。

2006年に行われた研究(ⅶ)の推定によると、もし10万人の人が70年間にわたって週2回、さけを食べ続けたとすると、PCBによって生じるがんによって 24名の命が奪われる一方で、心臓病のリスクを下げることで7000人の命が助かるとされている。

「地中海食」にすると脳卒中やがんのリスクが下がる

日本食が体に良いというエビデンスが弱い一方で、地中海沿岸地域の食生活である「地中海食」は健康に良いというエビデンスが複数ある。
2013年に、世界で最も権威ある医学雑誌の1つである『ニューイングランドジャーナル』誌に地中海食の検証を目的としたランダム化比較試験(※2)の研究結果(ⅷ)が掲載された。
※2 ランダム化比較試験...研究対象となる人を、くじ引きのような方法を用いて2つのグループがまったく同じになるように分け、片方のグループだけに健康に良いと思われる食品を摂取してもらい、もう片方のグループには摂取しないでいてもらう方法
これはスペインで実施された多施設共同研究であり、約7500名の糖尿病や喫煙歴があるものの心筋梗塞などの病気を起こしたことのない人たちが、ランダムに3つのグループに割り付けられた。

1つ目のグループは地中海食を食べるように指導され、さらに1週間ごとに約1リットルのエクストラバージンオリーブオイルが支給された。

2つ目のグループは同様に地中海食を食べるように指導され、1日あたり30gのミックスナッツ(クルミ15g、ヘーゼルナッツ 7.5 g、アーモンド 7.5 g)が支給された。

3つ目のグループは地中海食の代わりに、低脂肪食の指導を受けた(対照群)。総摂取カロリーや運動に関しては特に制限はされなかった。
研究対象者は約5年間追跡され、動脈硬化によるイベント(心筋梗塞、脳卒中、そしてそれらによる死亡)が起こるか評価された。

1・2の地中海食の栄養指導を受けたグループは、3の対照群と比べて、脳卒中、心筋梗塞、そしてそれらによって死亡する確率が29%低かった

1の地中海食+オリーブオイルのグループで30%、2の地中海食+ナッツ類のグループで28%のリスク減少が認められた。

脳卒中のリスクに至っては、地中海食+オリーブオイルのグループで33%、地中海食+ナッツ類のグループで46%も対照群よりも低くなることが明らかになった。
さらには、同じデータを用いた別の論文(ⅸ)では、地中海食は乳がんになる確率を57%減少させることも明らかになっている。

2016年に米国内科学会誌に掲載されたメタアナリシス(x)によると、上記のような発見に加えて、地中海食を食べ続けた人はそうでない人たちに比べて、がんによる死亡率が14%低く、がんの発生率が4%低く、大腸がんになるリスクが9%低いと報告された。

ここまで読めば、地中海食が健康に良いということが、いかに科学的に支持されているかわかってもらえたことと思う。

さらには、地中海食の研究で実際にどのような食事が食べられているのかを理解すれば、ハムやひよこ豆のスープのような凝った「地中海食」を食べる必要はなく、オリーブオイル、ナッツ類、魚、野菜と果物を豊富に食事に取り入れ、赤い肉を避けるということが、いわゆる「地中海食」に近いことがわかる。

つまり、普段どおりの食事を食べながら、塩分と白い炭水化物の摂取量を減らす代わりに、オリーブオイル、ナッツ類、魚、野菜と果物を増やすことが最も健康に良い食事であると言って良いだろう。

健康的な食事の指針として読んでおきたい一冊

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』では、このような科学的根拠に裏付けされた「本当に体に良い食事」についての知識が得られます。

世の中にあるさまざまな情報から、自分の力だけで正しいものを見分けるのは、簡単なことではありません。健康になるために、ぜひこちらの書籍を読んでみてはいかがでしょう。