オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

行き当たりばったりも案外悪くないかも

2009.11.19 THU


『旅する力─深夜特急ノート』沢木耕太郎/新潮社/1680円
ガイドブックなき旅にワクワクは宿る

友人との食事が決まると、真っ先にグルメサイトでよさげな店を検索してしまう。海外に行くことになれば、ガイドブックを買い、ネットでも観光名所をあれこれ調べる。何をするにせよ、かぎりなく”ハズレ” を回避できる情報環境を僕らは手に入れている。

ところが旅本のバイブル「深夜特急」シリーズの著者である沢木さんは、ガイドブックを持たない旅を続けてきたという。なぜか。「できるだけ素のままの自分を異国に放ちたいから」「知らないことによる悪戦苦闘によって、よりよく知ることができることもあるからだ」。

本書は「深夜特急」の自著解説とでもいうべき内容で、旅に関する様々なエッセイが詰め込まれている。少年時代の旅、ノンフィクション・ライターとしての修業時代、「深夜特急」の旅のエピソード…、読者は、折々の旅を振り返る沢木さんの文章から、いくつもの名言と出合うことだろう。たとえば「人間が生きていく上では、予期しないことが起きるということを予期しているかどうかということが、とても重要な問題になってくる」という一節は、僕の胸にズシンと響いた。

沢木さんが「旅の病」に冒されたのは、小学校3、4年生のころ、ひとりで御徒町の「マツザカヤ」に行き、探検気分でアメ横を街歩きしたときだったと述懐している。子どもにとって、世界は未知で満ちていて、見るものすべてがワクワクの種だ。そんなワクワクする自分を取り戻すには、時に”便利” に背を向ける必要があるのだろう。

 

  • うまい話なんてそうはない

    『不味い!』
    小泉武夫/新潮文庫/420円

    本書には、“食の冒険家”である小泉先生が出くわしてしまったマズいものたちがフルコースのごとく並んでいる。弁当やホテルの食事であきれ、学校給食にぐったりし、町のラーメンにおののく──。そんな味覚を悶絶させるような描写の数々を君もどうぞ召し上がれ。予想もつかないほどバリエーションに富んだマズいものに、食の奥深さを実感!
  • 目に映るすべてがアート!?

    『現代美術場外乱闘』
    都築響一/洋泉社/2940円

    ページをめくった途端、不意打ちを食らった。紹介されるのは、銭湯やゴキブリにラブホテル!? 一体、どこが現代美術なんだ…。だが、著者の都築さんによれば「すごく意外で、たぶん、すごく近くに」アートはあるのだという。なるほど、美術館に並んでいるものだけがアートではないってわけか。著者にならって周囲を見渡し、自分ならではのアートを発見してみよう。
  • 古本求めて三千里…

    『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』
    北尾トロ/文春文庫/620円

    各地をぶらぶらして、いい店を見つけ、胸をヂンヂンさせながら、ほしい本と遭遇したい! そんな気持ちを抱えて、古本大好きのライター・トロさんが、日本の東から西までを旅した素敵な一冊。東北で思わぬ掘り出し物を見つけ、四国でセールに歓喜する。随所で立ち寄るブックカフェも楽しそうだ。古本を求める珍道中に、旅心をくすぐられること間違いなし。
行き当たりばったりも案外悪くないかも

※フリーマガジンR25 253号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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