オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

仕事に“誇り”を持てる オトコになりたくない?

2010.02.18 THU


『ハッピー・リタイアメント』 浅田次郎/幻冬舎/1575円
笑いどころ満載の痛快な小説だ。
舞台は、JAMS(全国中小企業振興会)なる業務実態のない組織。そこに、元財務官僚の樋口慎太郎と元自衛官の大友 勉が再就職する。“ザ・天下り”ってやつですな。
愚直で生真面目、生き方が不器用な大友から、樋口に向かって思いつきのままに出た言葉が「慎ちゃんでよいか」。定年間近で出会った天下り中年が、お互いの呼び名を決め合うシーンだが、さすがは手だれの浅田次郎、笑いのツボをきっちり押さえている。
二人は、出勤して職場で遊んでいるだけで、十分な給与と二度目の退職金が保証されている身分だ。でも、腐りきった組織の体質に融け込むことができない。そんな二人に目をつけた彼らの教育係・立花 葵は、天下りの役人どもに反旗を翻すべく、こっそりと三人だけのミッションを実行に移す──。
割り切ってしまえば、こんなに楽チンな職場はない。退社時間までぼけっとしてるだけで、暮らすのに困らないお金がもらえるんだもの。だけど、そこに仕事の誇りはカケラもない。「国民の血税を貪り食うぐらいなら、皿洗いのほうがずっとマシである」という語り手の言葉を、霞が関(とそのOB)のみなさんにも、しかと噛みしめていただきたい。
物語には“禍福は糾える縄の如し”というメッセージが込められている。人生、よいことばかりでもないし、悪いことばかりでもない。むろん人生の手抜き工事を行わない、という条件付きではあるけれど。

  • 食べていくためと割り切る前に

    『仕事は味方』
    浜口隆則/かんき出版/1260円

    “働くのは食うための手段”と割り切る前に本書を読んでみよう。起業の専門家による温かいエールがちりばめられた仕事論だ。仕事は僕らを磨いてくれる存在だから、失敗しても何度でも正面からぶつかっていこう──という呼びかけはズシンと響く。業務がさまざまに細分化した現代だからこそ“他人に喜ばれること”という仕事の本質を見失わないようにしたい。
  • 彼はいつでも真剣です。

    『イチロー 262のメッセージ』
    『夢をつかむイチロー262のメッセージ』編集委員会/ぴあ/1050円

    「ぼくは、期待があろうとなかろうと進むタイプです」。漫然と働いている時に、こんな言葉を目にしたら、思わず襟を正してしまうはず。イチローのメッセージを読めば、彼が世界で活躍できる理由は、何よりも仕事に対して本気だからだとわかるだろう。もう一つ彼の言葉をご紹介。「何年、野球をやっても、勉強することがあるわけです」。うーん、まいりました。
  • 20坪に詰め込まれた工夫の小宇宙

    『すごい本屋!』
    井原万見子/朝日新聞出版/1680円

    和歌山の山中にある20坪ほどの本屋。それがイハラ・ハートショップだ。ここでは書籍や雑誌はもちろん、洗剤やお菓子も置くし、おはなし会などのイベントも開かれる。規模は小さなお店でも、店長の熱意と行動によって、多くの人とつながり、様々な催しが行われているのだ。読めば、きっと愉快で元気な気持ちになれる、すごい本屋のすごい本なのです。
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仕事に“誇り”を持てる オトコになりたくない?

※フリーマガジンR25 258号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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