オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

この社会で自分にとっての仕事とは?

2010.03.01 MON


『ザ・前座修業──5人の落語家が語る』稲田和浩、守田梢路/生活人新書/735円
下積みの意味は後からわかる

会社に入って1年や2年で、“ここの仕事はやりがいがない”と勝手に決めつけて、会社を辞めてしまう人たちが少なからずいる。でも、5人の高名な落語家がそれぞれの前座修業時代を語った本書を読んでつくづく思うのは、下積みや修業の意味は後からわかる、ということだ。
たとえば柳家小三治は、肌襦袢の正面を自分に向けて干していたら、「世間にケツを向けてるじゃないか」とこっぴどく叱られた。たかが物干しと思うかもしれないが、「これを知っていると、洗濯物ではなく、人様に対する気持ちとして、背中を向けないというようなことを覚えるんじゃないですかね」。そして、手抜きをする「ずるいやつには、ずるい噺しかできない」。むろん修業している当時はそこまで考えが及ばない。「修業の意味についてわかるようになるのは、やはり四〇代、五〇代になってからなんです」。
立川志らくの言葉もすごくいい。「この修業時代を耐えたという経験が、その後のいろいろな壁にぶつかってもへこたれない力になったのです。人生で耐える時代をもつことは大事なことだと思います」。
落語家の修業は、理不尽や矛盾の連続。頭で考えるより先に身体を動かさないと、師匠の怒声が飛んでくる。だけど身体で覚えたことは裏切らない。「面倒なことでもきちんとやると気持ちがいいんだ」という小三治の言葉は、仕事のみならず人生の基本でもある。

  • 不機嫌な職場に立ち向かう

    『アレグリアとは仕事はできない』
    津村記久子/筑摩書房/1470円

    地質調査会社を舞台に繰り広げられる、女子社員ミノベと最新複合コピー機「アレグリア」との格闘を描いた“仕事小説”。仕事のジャマばかりするアレグリアに、ミノベは殺意さえ覚えるものの、周囲は両者のバトルに無関心。風通しの悪い“不機嫌な職場”こそ本作の真の主人公なのだろう。
  • 20代働きマンの仕事術

    『思いどおりに働く! 20代の新世代型仕事スタイル』
    宮脇 淳/NTT出版/1575円

    ビジネス最前線を突っ走る20代の働きマンを取材した“若手プロ論”。前半5人はスキルアップに、後半5人はコミュニケーション術にそれぞれ力点が置かれている。ToDoツールのチェックパッド、オンラインストレージのエバーノートなど、有用なウェブツールの紹介も手厚く便利。
  • プロデュースの鉄人、かく語りき

    『仕事道楽──スタジオジブリの現場』
    鈴木敏夫/岩波新書/777円

    スタジオジブリが誇る二人の巨匠、宮崎駿と高畑勲を支え続けるプロデューサーの半生記。スタジオの経営に関して「作品」が第一、「いいものが作れなくなったら、ジブリなどつぶしてしまっていい」ときっぱり。プロデュース業に人生を懸けてきた著者の凄みがひりひり伝わる。
  • 最下位には最下位の戦い方がある

    『この世でいちばん大事な「カネ」の話』
    西原理恵子/理論社/1365円

    美術の専門予備校生時代、課題作品で最下位の絵を描いたサイバラ。そのとき、彼女は気づいた。自分がやりたいのは「ゲージュツ」ではなく「絵で食べていくこと」だと。以来、彼女が選び取った戦い方とは──。働いて稼ぐことの大切さを感動的に説いた本書は、新人時代にこそ読んでほしい。
  • 自分だけの“座右の銘”を発見しよう

    『働く理由 99の名言に学ぶシゴト論。』
    戸田智弘/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1512円

    「働く」ことに関する名言を紹介しながら、仕事論を探求した1冊。好きなこと、やりたいことを仕事にできないのは不幸なのか? 会社を辞めたくなったらどうするか? 多くの人が直面する問いに対して、押し付けがましくなく応答していく。自分だけの“座右の銘”を発見できるかもしれない。
  • 力一杯働いた後のビールはうまい!

    『太陽がイッパイいっぱい』
    三羽省吾/文春文庫/610円

    大学生のイズミは、とある出来事をきっかけにして、解体現場のバイトに入り、そこでの肉体労働にハマっていく。力一杯働いた後のビールはうまい! このシンプルな真理を忘れないためにも本作を読んでおこう。第5回酒飲み書店員大賞受賞作だけあって、アルコール度数もかなり高い(笑)。
この社会で自分にとっての仕事とは?

※フリーマガジンR22特別号「R22的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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