オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

いい政治家、いい政治って何だろう?

2010.07.15 THU


『小説 上杉鷹山 全一冊』 童門冬二/集英社文庫/1000円
財政危機の米沢藩を
立て直した、ザ・名君

時は、江戸中期。現在の山形県東南部を治める米沢藩の財政は、21世紀の日本に負けず劣らずボロボロの状態だった。借金漬けで商人からも総スカン。僕だって、こんな藩にお金は貸したくない。なんせ15万石の領地に対して、家臣の給与総額が13.3万石…。「収入の88%が、社員の人件費だなどという馬鹿な企業があるだろうか」と著者もあきれるほど、財政に無頓着な藩だったのだ。
もはや幕府に藩を返上せざるをえないような危機にまで追い込まれた米沢藩。それを救ったのが、弱冠17歳で第9代藩主の座を相続した、本書の主人公・上杉治憲(後の鷹山)である。
財政再建策といえば、無駄な支出のカットが常套手段だ。実際、治憲も、守旧派からの度重なる嫌がらせや抵抗を退けて、大胆な倹約策を打ち出し、自らも清貧を貫きながら改革を断行していく。でも、コストカットに終始する改革では、民は疲弊してしまうだけ。そこで治憲が仕掛けたV字回復の秘策とは…。
具体的な改革の中身は作品を読んでほしいが、鷹山の名君っぷりは、歴史上の君主のなかでも群を抜いている。アメリカの故ケネディ大統領が、もっとも尊敬する日本人として「ウエスギヨウザン」と答えたというエピソードもうなずける。
一人の政治家の手腕に頼るだけの政治は、心もとない。とはいえ、景気も財政も暗雲続きの日本を見ると、上杉鷹山のような「名君」をどこかで期待してしまうのも確かなのだ。

  • 風雲急を告げる5年3組!

    『よいこの君主論』
    架神恭介、辰巳一世/ちくま文庫/819円

    小学5年生のひろしくんは自分のクラスを制覇するために動き出した。しかし、その前には野心家のクラスメイトや食わせ者が立ちはだかる。彼の武器は、あのマキャベリの『君主論』。クラスの覇権は誰が握るのか──と、こんな物語を通して指導者のあり方や政治思想の古典『君主論』を平明に解説したのが本書。読後の君はもう権力者の階段を一歩上っているはずだ。
  • 賞味期限はどれくらい!?

    『総理の辞め方』
    本田雅俊/PHP新書/882円

    終戦直後の東久邇宮稔彦王から数年前に突然の辞意表明をした安倍晋三まで、歴代総理がどのように総理の座を降りたのかが綴られている一冊。病気で止むを得ず身を引いた者もいれば、周囲から引きずり下ろされた者もいる。永田町の人間模様がうかがえるとともに、戦後の政治史を眺めるのにも有用だ。にしても、引き際が難しいのは恋も政治も一緒なのか…。
  • 主役は〈私〉?

    『〈私〉時代のデモクラシー』
    宇野重規/岩波新書/756円

    今は、誰もが他の人とは異なる自分らしさを意識するような時代。そのような状況を背景として、平等や個人主義のあり方が様変わりするなか、〈私〉と政治がどう接続できるのかを政治学者が模索した好著。民主主義と一口に言っても、いかにその内実がかつてと異なっているのかがこの本を読めばわかるはず。さて、それを踏まえて〈私たち〉はどう考える?
  •  
いい政治家、いい政治って何だろう?

※フリーマガジンR25 268号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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