オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

無駄のない人生なんてつまらなくない?

2010.10.21 THU


『わたしの旅に何をする。』 宮田珠己/幻冬舎文庫/560円
“すべての無駄は笑いに通ず”を
体現する爆笑旅行エッセイ集

旅行エッセイストのなかでも、宮田珠己の”無駄センサー”は一、二を争う性能を誇る。というより、旅に出たが最後、この人は無駄なもの、役に立たないものにしか反応できなくなる体質なのではないか。いや、そうに違いない。
なにせ、エッセイの出だしがいきなり「ブルネイでは遊園地がタダと聞いて行ってきた」である。普通は行かない。いくら遊園地がタダでも旅費がかかるからだ。ほとんど園児のような衝動にかられてブルネイの遊園地まで行き、ちょっとした見込み違いから、たった一人でジェットコースターに乗り、悦に入る男。それが宮田珠己である。
この著者にかかれば、近所の散歩もまたたく間に旅行に早変わりする。樹木ガイドを片手に散歩するやいなや「そうかこれがプラタナスか。かねがね噂は聞いていたが、プラタナスとはいつも見ているこの樹であったか」とか、「日本中どこに行っても生えていそうな、あの顔馴染みの樹がカイヅカイブキとはおそれいった」とか、感動するありさま。これだけ感激してもらえれば、樹木たちもさぞや満足だろう。
だが、なによりも声を大にして言いたいのは、この旅行エッセイ集が秘めている破壊的なまでの爆笑喚起力である。とぼけた文体と微妙な論理を駆使して、不遜なまでに「わたしの旅」の偉大さを著者は訴えかけてくる。そのあまりの説得力のなさに、読者には笑うことぐらいしか選択肢は残されていないのだ。
すべての無駄は笑いに通ず、という格言は、著者のためにこそある。

  • ツイッターは雑学の宝庫

    『このツイートは覚えておかなくちゃ。』
    嶋 浩一郎/講談社/1050円

    「チワワってメキシコの地名なんだね」「山口百恵は日経新聞の配達のバイトをしてたんだね」「コアラの指には指紋があるよ」──これらは、著者のツイッターでのつぶやき(ツイート)。こんな知識は役に立たないって? いやいや、収められた555のツイートは話の種として重宝するし、何より退屈しのぎにはもってこい。ツイッターは雑学の宝庫でもあったのだ。
  • 世界遺産も真っ青!?

    『奇界遺産』
    佐藤健寿/エクスナレッジ/3990円

    ページをめくれば、次々と目に飛び込むあ然とするような景色の数々。メキシコのミイラ博物館、ボリビアにあった忍者学校、中国の巨大な石仏などが、その奇奇怪怪な姿を覗かせてくれる写真集だ。今の日本だと事業仕分けの対象になりそうなものも数多い。だけど、これらスケールのでかい珍妙な絶景を眺めているうちに、世界の広さもまた不思議と体感できる。
  • ワールドワイドなおもしろ科学

    『笑う科学 イグ・ノーベル賞』
    志村幸雄/PHPサイエンス・ワールド新書/840円

    「まず人を笑わせ、そして考えさせる」研究に授与されるイグ・ノーベル賞をご存じか? 実は日本はこの賞の受賞大国。本書は、このユニークな賞の解説や日本人受賞者への取材をまとめたもの。カラオケ、バウリンガル、鳥に嫌われる銅像など過去に受賞したものから、現在期待されているテーマまでが勢ぞろいだ。役立つかは別として、こんな愉快な科学知識は滅多にない!
  •  
無駄のない人生なんてつまらなくない?

※フリーマガジンR25 274号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト