オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

アウトローから人生を学ぶ

2011.01.20 THU


『「薔薇族」編集長』伊藤文学/幻冬舎アウトロー文庫/600円
日本のゲイ運動を牽引した
伝説の雑誌を振り返る

時流にこびない強烈な反骨精神の持ち主をアウトローと呼ぶのであれば、伝説のゲイ雑誌『薔薇族』の編集長・伊藤文学氏もまちがいなくその一人に数えられるだろう。
まだ同性愛というテーマが社会的にタブーだった1971年に、ゲイ雑誌を創刊。そのきっかけは、以前に出した『ひとりぼっちの性生活』という青少年向けオナニー指南本の感想ハガキに、「同性のことを想ってオナニーをしているという手紙が中にいくつか混じっていた」ことだという。
伊藤氏はただ雑誌を創刊しただけではなく、孤立していた同性愛者たちをつなげることにエネルギーを惜しまなかった。雑誌に文通欄を設けるほか、座談会や読者パーティー、愛読者旅行会、同性愛者の電話相談室など、ほとんど一人で同性愛者SNSのような機能を果たしていた。文通欄を読んで送られてくる数百通にも及ぶ手紙の回送作業も夫婦二人でこなしていたそうだから、発想力のみならず、行動力やバイタリティも常人離れしている。
伊藤氏自身はノンケ(非同性愛者)だが、「同性愛は当たり前のことだと世間に認めさせたい」という思いが刊行を続ける原動力となったと本書で振り返る。暴力をともなう“ホモ狩り”やエイズ問題への取り組みなど、刊行中に起きた事件を読むにつけ、『薔薇族』はすぐれたジャーナリズム雑誌であることを思い知らされた。
文庫版あとがきには「ぼくのこれからの目標は、男同士、女同士の結婚ができるような社会にしていくことだ」とある。伊藤氏の時代との格闘はいまなお続いている。

  • コクとキレのある対談集

    『男の教養 トンカツ放談』
    福田和也、石丸元章/KKベストセラーズ/1785円

    片や保守派の論客としても名を轟かせる文芸評論家、片やバイタリティある凄腕のもの書き。アウトロー精神たっぷりの二人が自由闊達に語らうトピックは、民主党政権、マイケル・ジャクソン、大相撲問題、そしてトンカツ!? ここ5年のニュースを相手取り、怖いもの知らずの勢いでメッタ斬りする対話から学べるのは、この社会を楽しく生き抜くための作法だ。
  • 熱き男たちの姿、見てみいや!

    『破滅の美学 ヤクザ映画への鎮魂曲』
    笠原和夫/ちくま文庫/819円

    傑作『仁義なき戦い』シリーズなどの脚本で知られた著者が、ヤクザ映画の仕事の中で見聞きしたエピソードを中心に綴った一冊。邦画界の監督・俳優の美学から切った張ったのヤクザの生き様まで、無数の男たちのヒリヒリするような熱気が伝わってくるだろう。「破滅の物語は、成功者の物語よりも、より多く『人生』を語るもの」という言葉がズシンと響く。
  • タブーから目を逸らすな

    『異形の日本人』
    上原善広/新潮新書/714円

    様々な分野の“異端”とされるマイノリティとその人々にまつわる出来事をノンフィクションライターが追った本だ。そこに「日本人の本質的な何かが隠されていることがあるのではないか」という思いを胸に取材した対象は、激動の半生を歩んだストリッパー、難病を抱えながらワイセツ裁判を闘い抜いた女性など。その生の重さとたくましさに圧倒される。
アウトローから人生を学ぶ

※フリーマガジンR25 278号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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