オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

世界のどこかにあるリアル

2011.06.16 THU


『絶対貧困』 石井光太/光文社/1575円
最貧民の暮らしぶりを
テキパキ解説する貧困学入門

デビュー作『物乞う仏陀』以来、世界各地の最貧民のルポを手がけてきた著者は、現在最も注目されるノンフィクション作家の一人だ。持ち味である、安直な正義感や感傷を排した乾いた文体は、最貧地域に体まるごと浸して「貧困」を咀嚼した経験の蓄積あってのものだろう。
本書は、そんな著者による「『世界リアル貧困学』講義」という体裁を取っている。講義というだけあって、記述はとても“お勉強的”だ。たとえば「差別という観点から、スラムを分類すると、次のようになります」「まずは、路上生活者を四つに分類してご紹介しましょう」なんて具合に、最貧民の暮らしぶりをテキパキと図式的に整理し、解説を加えていく。
だが、軽快な展開に比して、取り上げられる現実はショッキングなものばかりだ。スラム、路上生活者のセックスやシモの話から、インドの物乞いのヒエラルキー、マフィア組織によるレンタルチャイルド・ビジネスまで、一般の報道からはうかがい知ることのできない素の貧困の姿は、じつに複雑な生態系を形作っている。
著者が指摘するように「いまはもう途上国の貧困問題を『遠い国の出来事』として片づけられる時代ではない」。そして他人事を自分事として適切に考える第一歩は、他人と同じ目線で知ることだろう。
途上国の物売りや物乞いに「お金をあげても何の解決にもならないし、キリがない」と思ったことがある人は、本書第八講を読んでみてほしい。事実を知ることは、浅薄な良識をふるいにかけることでもあると実感するはずだ。

  • 人と犬のワンだふるな関係のために

    『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』
    太田匡彦/朝日新聞出版/1260円

    ショッキングな本である。町を歩けば、随所で愛くるしい犬たちを目にする。だが、一方でこの国は年に8万匹もの犬が殺処分されるという現実を抱えている。なぜ、このような事態が生じているのか? この本が明らかにしていくペットビジネスの問題や無責任な飼い主の振る舞いを知れば、愛犬家ならずとも胸がつかえるだろう。実は身近にあった深刻な問題を直視してほしい。
  • 気分はミステリーハンター

    『フリーメイソン 「秘密」を抱えた謎の結社』
    荒俣 宏/角川oneテーマ21/780円

    “世界を操る秘密結社”などとささやかれることもあるフリーメイソン。本書は、薔薇十字思想、イルミナティ、ベンジャミン・フランクリンといった膨大なキーワードや重要人物などを調べ上げながら、この謎多き組織の全体像をつかもうとしたものだ。そこから浮かび上がってくる歴史は、世界史の教科書で僕らが習ったものとは異なる相貌を見せているはずだ。
  • 現代人にゃ想像つくまい

    『ヤノマミ』
    国分 拓/日本放送出版協会/1785円

    ドキュメンタリー番組作りのために、奥アマゾンの森に暮らす先住民・ヤノマミ族の集落で長期にわたり生活をした著者によるルポタージュ。弓矢を使った猿狩り、シャーマンによる祈祷など、間違いなく僕たちが暮らす世界では目にすることのない数々の出来事。まさに「彼らは、そうして森を生きてきた」のだろう。遥か遠くの大地へ想像力を誘ってくれる1冊。
世界のどこかにあるリアル

※フリーマガジンR25 287号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
text TETSUYA SAITO

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