オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

ロシアがよ~くわかる本! 文学編

2011.07.28 THU


『巨匠とマルガリータ』 ミハイル・A・ブルガーコフ・著、水野忠夫・訳/河出書房新社/2940円
20世紀最大のロシア語作家は
大暴れする悪魔に何を託したのか?

世紀最大のロシア語作家ブルガーコフは、あらゆる作品が出版禁止の憂き目にあった不遇の作家だ。この大傑作も、没後30年を過ぎた1970年代にようやくソ連、世界各国で刊行され、大ベストセラーとなった。600頁近くもある大長編だが、純文学的な難解さとは無縁でするする読める。なにせ本作は、悪魔一味がモスクワで大暴れをするダーク・ファンタジー小説なのだ。
小説のもう一つの軸は、文壇から総スカンを食らい人生に絶望した「巨匠」と、彼を愛し続ける「マルガリータ」の愛の物語。中盤を過ぎたころからマルガリータが登場し、悪魔と彼女の闇の祝祭が動き出す。そんな悪魔が純然たる悪ではなく救済役まで担う点に、旧ソ連の閉塞を描いたこの小説の妙がある。

  • かつての級友探しから 見えてくる激動の中東欧史

    『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
    米原万里/角川文庫/580円

    ロシア語の同時通訳者として、また読書通好みの作家としても知られる米原万里の代表作。マリは、9歳から14歳まで、旧チェコスロヴァキアの「在プラハ・ソビエト学校」に通っていた。本書で描かれるのは、そこでの級友だった3人(ギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカ)の思い出と、彼女らの“その後”だ。1968年のプラハの春とその弾圧、さらに89年のベルリンの壁崩壊を経て起きる旧ユーゴの内戦。大人になった著者は、長らく音信が途絶えていた3人を尋ね歩き、彼女らの人生とともに激動する中東欧を描き出していく。自分と友人と国家それぞれの歴史を見事にリンクさせた、生モノの歴史語りとして読まれたい。
  • “死の受容”を描いた不朽の名作

    『イワン・イリッチの死』
    トルストイ・著、米川正夫・訳/岩波文庫/378円

    19世紀ロシアの裁判官を主人公としたこの作品は、“死の受容”をテーマとした小説としては、いのいちばんに挙げられる名作。黒澤明の『生きる』もこの小説から発想を得ている。社会的成功を収め順風満帆な人生を歩んできた主人公に、襲いかかった不知の病。迫り来る死に脅え、恐怖し、自らの人生の欺瞞にまで思い至っていく克明な心理描写は、“すごい!”の一言に尽きる。
  • 日露交渉を1人でやりとげた男

    『菜の花の沖』1~6
    司馬遼太郎/文春文庫/各660円

    蝦夷地経営、国後航路の発見、択捉島開拓など、江戸後期に廻船業者として八面六臂の活躍をした、高田屋嘉兵衛の生涯を描いた歴史長編。クライマックスは第6巻。ゴローニン事件の見返りで人質となり、カムチャツカに幽閉された嘉兵衛が、ロシア政府を相手に堂々とわたりあう姿に、読み手のテンションも高まる一方。江戸期のロシアを知るテキストとしてもうってつけだ。
ロシアがよ~くわかる本! 文学編

※フリーマガジンR25 EXTRA まるごと1冊ロシア連邦特集号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=取材・文
text TETSUYA SAITO

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