「懲戒処分」無効の境界線は?

上司の命令ってどこまで従わなくちゃいけないの?

2011.08.18 THU


困るのはこんな無茶ブリ。雇用契約書や就業規則などで規定されていない明らかに職務の範囲外の作業については必ずしも従う必要はない
イラスト/村林タカノブ
震災発生翌日のこと。福島第1原発1号機で海水注入による原子炉冷却作業にあたる現場に対し、本社から「注水中断」の命が下った。だが、現場責任者の吉田所長はこれを無視。独断で注水作業を続けたという。東電の武藤栄副社長は後日「正しい判断だった」と所長の行動を評価したが、命令拒否ともとれる行動には処分の是非も検討された(実際は“口頭注意”だけでおとがめなし)。

上司の命令よりも自分の信念に基づいて行動する。サラリーマンにとっては胸のすくような話だが、我々がそれをやれば処分される可能性が高い。労働問題を専門とする弁護士の平松剛氏によれば「命令に従わなかったからといって直ちに解雇され、それが法的に有効になることは通常ありませんが、戒告や注意など何らかの処分が下ることが考えられます」とのこと。さらに命令拒否がたびたび続けば、解雇を含めた重い処分が有効になる可能性もあるという。

「明らかな違法行為を強要されるといった極端な場合でない限り、原則として会社員には職務上の命令に従う義務があります。たとえ上司の命令が合理性を欠いていたとしても、自己判断で指示に背けば処分の対象になり得るでしょう」

しかし一方で、命令拒否による懲戒処分が無効とされた判例も。例えば、伊勢神宮で行われた会社の精神修養講習会を拒否し、解雇されたケース。「信仰外の宗教行事への参加を拒む権利は保障されている」として、処分無効の判決が下った。砲撃が飛び交う危険海域での業務を拒否したケースも「危険な職場で働く義務はない」として労働者側が勝訴。さらに「お茶汲みは業務範囲ではない」として、お茶汲みを拒否した社員への処分が無効になった判例もある。

とはいえ、命令拒否が許される「境界線」を探るのは難しい。意に沿わない命令でも勝手な暴走は許されないのが前提だということを覚えておきたい。
(榎並紀行)


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