オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

小説から仕事を盗め!

2011.09.01 THU


『トッカン 特別国税徴収官』 高殿 円/早川書房/1680円
仕事で落ち込んだときは
ぐー子の姿を思い浮かべよう

主人公の鈴宮深樹(通称ぐー子)が見習いを卒業して、徴収官デビューを果たそうとするシーンから本作は始まる。だが、意気込みもむなしく、玄関口で、いきなり相手の女性から塩をかけられ、果てはぬか味噌まで投げつけられる始末…。

そこに登場するは、特別国税徴収官(通称トッカン)の鏡 雅愛。ぐー子の上司である鏡は、高笑いしながらフェラーリ、シャネルのセーター、高級ペット犬など、金目のものを片っ端から差し押さえていく。

このちぐはぐなコンビの折り合いは最悪で、ぐー子は鏡のことが嫌いでたまらない。それでもぐー子がピンチに陥るたび、鏡は罵詈雑言を浴びせながらも助け舟を出す。

税金の徴収官とは因果な職業だ。税を喜んで払う人間なんてまずいない。貧しい者からは疫病神扱いされ、ワケありな金持ちは彼らを出し抜こうとする。それだけに、税をめぐって繰り広げられる人間ドラマは、キレイごとでは済まされない迫力を帯びる。

とりわけ、徴収相手の銀座高級クラブのママに手痛いしっぺ返しを食らったぐー子が、働くモチベーションを失っていく描写には感心させられた。このお仕事小説は、職業解説に長けているだけでなく、働く人間の心にもきちんと目を配っている。

事件のたび、徴収のたびに、落ち込んでは立ち上がることを繰り返していくぐー子。そんな彼女が、なぜ特官付き徴収官として鏡から指名されたのか、という謎が解き明かされるシーンは物語の静かな山場。不覚にも、思わず目頭が熱くなってしまった。

  • お役所仕事は通じない!?

    『県庁の星』
    桂 望実/幻冬舎文庫/630円

    Y県のエリート県庁職員・野村 聡、31歳。彼は民間研修のためにパッとしないスーパーへ1年間の出向が決まった。しかし、クセ者ぞろいの店で、融通のきかない野村は空回り。現場を取り仕切るパートの二宮泰子ともしっくりいかない日々が続く。お役所仕事は民間で通じるのか。野村の悪戦苦闘から意思疎通やチームワークの大切さを痛感する読者も多いはず。
  • 下流社会なんて気にするな

    『ニコニコ時給800円』
    海猫沢めろん/集英社/1680円

    マンガ喫茶のバイト、アパレルショップの店員、そしてネットゲームのトラブル監視員など、本書は5つの職場を主な舞台とする連作短編小説だ。仕事のディテールが書き込まれ、裕福とはとても言えない多くの登場人物の生き方が浮かび上がる。そこからは、長引く不況で大変だけど、多くの人はどっこい生きているし、働いている──そんなことにも思い至る1冊。
  • 夢よ、飛び立て!

    『下町ロケット』
    池井戸 潤/小学館/1785円

    かつて宇宙科学の研究者だった男は、実験衛星の打ち上げ失敗によってその道をあきらめ、下町の中小企業の社長となった。経営者として資金繰りやライバル会社からの訴訟などに苦しむ中、自社の技術を通して再び大型ロケットの製造開発に携わる可能性が出てきて…。夢を持つことで仕事のエンジンをフル稼働させる、熱き男とその会社の物語。この情熱が僕らにもほしい!
小説から仕事を盗め!

※フリーマガジンR25 292号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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