オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

あなたのご先祖だあれ?

2011.10.06 THU


『コンニャク屋漂流記』 星野博美/文藝春秋/2100円
ルーツを探すことで
生の歴史が立ち上がる

本書を読んで、自分のルーツを本気で探してみたくなった。
著者の星野さんは「町工場の娘」にして「漁師の末裔」。千葉の外房で漁師の六男として生まれた祖父が、東京に出て町工場を始めたからだ。で、星野さんの一族の屋号は「コンニャク屋」。「それにしても、なぜ漁師なのにコンニャク屋で、しかもよりによってコンニャクなのか」。そんな疑問を抱きながら、星野さんは祖父が遺した手記をひもとき、自らのルーツを確かめてゆく。
ルーツ探しには謎解きの面白さがある。本書でも、千葉の御宿にある古い墓石に刻まれた名前の謎を解くために、史料を読み込み、紀州和歌山にまで出かけていくくだりは、探偵小説を読むような高揚感を覚える。
でも、本書の魅力はそれに尽きない。祖父の手記を読み、御宿の親戚に話を聞くなかから、星野さんは、五反田や御宿・岩和田を舞台として生モノの歴史を紡いでいく。一つの土地には、ゆかりある多くの人たちの暮らしが貼りついている。星野さんにとってのルーツ探訪とは、彼らの記憶を現在の風景に塗り重ねていくことでもあったのだろう。
「歴史の終わりとは、家が途絶えることでも墓がなくなることでも、財産がなくなることでもない。忘れること。/思っている限り、人は生き続ける」。
もちろん、記憶にも記録にもあやふやな部分や欠落はある。それを補うのはルーツを探す側の想像力だ。
本書にも、星野さんが想像力を働かせ歴史を再現しているくだりが随所にある。それもまたルーツ探しの楽しみなのだろう。

  • 祖先の方々とハイタッチ!?

    『ご先祖様はどちら様』
    高橋秀実/新潮社/1470円

    角界からラジオ体操まで多様な題材を取材するノンフィクション作家が、この本で挑んだテーマは自身のルーツ。戸籍を調べ、両親や親族の話に耳を傾け、家紋の専門家や前世カウンセラーから意見を聞く…。その中で徐々に見えてくるのは、著者へと連なる歴史の広がりだ。現在がご先祖様たちの蓄積の上にあることを感じ取れたら、自然とお墓参りに出かけたくなるかも。
  • ホモ・サピエンスの足跡を追って

    『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』
    溝口優司/ソフトバンク新書/767円

    700万年前、アフリカで直立二足歩行を始めた最初の人類が猿人だ。そこからいかなるルートと変遷を経て彼らは日本列島へ着き、僕ら日本人の祖先となったのか? そんな地球規模の疑問を解きほぐす一冊がこちら。人類の気の遠くなるような長さの道のりが、幾つもの研究成果を参照しつつ論じられていく。「ヒト」そのものの根源を探るスリルをご堪能あれ。
  • 自分の名字が好きになる?

    『名字と日本人──先祖からのメッセージ』
    武光 誠/文春新書/693円

    30万種近くもあるという日本の名字。この名字にまつわるあれこれを本書は手際よくまとめている。他民族の姓氏と日本の名字の比較など、興味深い論点が多数あり。特に歴史をさかのぼって、中世の武家社会が名字を形成することに大きく関わっているとの指摘は面白い。普段は当たり前のように使っている自分の名字に思わぬ愛着がわいてきたりして?
あなたのご先祖だあれ?

※フリーマガジンR25 294号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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