オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

ヒーローは正義を語れるか?

2011.11.02 WED


『リトル・ピープルの時代』 宇野常寛/幻冬舎/2310円
仮面ライダーシリーズから
明日を生き抜く想像力を学べ

知らないうちに、仮面ライダーはとんでもないこと になっていた。13人の仮面ライダーたちが殺しあう『仮面ライダー龍騎』、自身にモンスターを憑依させることで4通りの仮面ライダーに変身する『仮面ライダー電王』、主人公が過去9作品の世界を自在に行き来でき、さらにすべての仮面ライダーに自在に変身できる『仮面ライダーディケイド』…。なんと複雑怪奇な「変身」の進化であることか。
著者渾身の仮面ライダー論は、村上春樹の『1Q84』で登場するリトル・ピープルと接続する。「資本と情報のネットワークの下、リトル・ピープル=小さな父たちがそれぞれの正義を抱えて乱立するこの新しい世界は、仮面ライダー同士のバトルロワイヤルとして私たちの前に登場した」。つまり、独裁者であれ国民国家であれ、何かが正義/悪をわかりやすく体現するような時代は幕を閉じ、複数の小さな正義や悪が衝突しあう時代に移り変わった。村上春樹の諸作品が描き出したこうした変化を、著者は、ウルトラマンと仮面ライダー両シリーズの読み解きを通じて精密に分析するとともに、新たな時代を生き抜く想像力のありかを探索する。
著者が探り当てた想像力は、「いま、ここ」を多重化する〈拡張現実〉的想像力だ。たとえば、アニメの舞台となった実在の都市をファンたちが訪れる「聖地巡礼」は、その典型例である。閉塞感に包まれた現実は、工夫次第でいかようにも豊かにできるし、変革できる。歴代仮面ライダーの「変身」は、世界を変身させることにもつながっていたのだ。

  • 正義の味方の見方

    『ウルトラマンと「正義」の話をしよう』
    神谷和宏/朝日新聞出版/1365円

    著者は現役の中学教師で、授業でも長年『ウルトラマン』を教材に使ってきたという。本書は、そんな授業の集大成的な1冊。『ウルトラマン』シリーズに秘められた多くの問題提起を「正義」の観点から捉え直す。科学は人を幸せにできるのか? 善と悪はどう線引きすべきなのか? 近代化、ナショナリズムの問題など、現代的な倫理の問題を知るうえで格好の入門書だ。
  • 三国志ヒーローの息吹

    『三国志 きらめく群像』
    高島俊男/ちくま文庫/924円

    小説、マンガ、ゲームといった無数の分野で、今なお多くの人を魅了する三国志ワールド。その源流である歴史書『三国志』について、該博な知識を持つ著者がざっくばらんに語った好著。誠実な好漢の劉備、天才軍師・諸葛亮といった僕らが一般的に抱くイメージとはかなり異なる姿も垣間見られる。戦塵にまみれながら時代を駆け抜けた英雄の鼓動を体感されたい。
  • 子どもの物語を総ざらい

    『ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?』
    ひこ・田中/光文社新書/998円

    なつかしいものから最新の作品まで、様々なメディアで提供されてきた馴染みの深い子どもの物語が次々と登場。ドラクエ、ガンダム、ONE PIECE…それらを通して、子ども向けの物語がいつの間にか成長を描かなくなっていることを浮き彫りにする。社会の変化とともに物語もまた変わりゆく。それらを見届けるのは、かつて子どもだった僕らの宿題でもある。
ヒーローは正義を語れるか?

※フリーマガジンR25 296号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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