オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

たまには逃げたい夜もある

2012.02.16 THU


『サ道』 タナカカツキ/パルコ出版/1260円
サウナの真髄は
水風呂にあり

蒸し暑くて、狭くて、不快。拷問みたいだなあと思ったし、中では全裸のオッサン達がひしめいていて、それも汗だく。気持ち悪っ!」。そうそう。サウナについて、著者とまったく同じ感想を僕も抱いていた。
が、著者は開眼し、見事なサウニストへと変身を遂げた。本書は、そんな著者による体験的サウナ指南の書だ。
サウナと友だちになる最大の秘訣。それは併設されている水風呂に浸かることだという。想像しただけでもおじけづきそうだが、膝、太もも、腰、胸、肩と少しずつ息を止めたり、深呼吸したりしながら体を沈め、最後は「膝を閉じて体育座り!」。全身に力を入れることで、キーンとした冷たさは回避できるそうだ。
そしてしばらくすると、サウナの熱に包まれた体に「温度の羽衣」ができあがる。この感覚がつかめればしめたもの。あとはサウナと水風呂の往復を繰り返すうちに、「キターーー!」の快感が訪れる。この悟りにも似た感覚を描写するくだりが臨場感たっぷりですばらしい。
同じジムに通うサウナの先達「蒸しZ」を見習って、サウナと水風呂の最適なセッション回数や滞留時間を探り、著者はサ道のさらなる高みをめざす。その途上には、水風呂のバッドトリップという思わぬ罠も待ち受けているが、それでも著者のチャレンジは止まらない。気持ちよさのあまり、「打ち合わせも会議室じゃなくてサウナでやれたらいいなあ」という始末である。
これを読んだら、もう行くっきゃない。水風呂上等! めくるめくサウナのニルヴァーナが僕らを待っている。

  • 異世界へ誘うコレクション

    『澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド』
    澁澤龍彦・著、澁澤龍子・編/集英社新書ヴィジュアル版/1260円

    貝殻、パイプ、少女人形などなど、主なき後も存在感を放つオブジェの数々が目に留まる。作家・澁澤龍彦の領土=ドラコニアを彩るコレクションを中心としてまとめられた一冊だ。澁澤の遺した文章とともに、奇妙で美しいオブジェの写真を眺めていると、文字通り別世界に降り立ったかのような気分になる。彼の世界へ足を踏み入れるための良きガイドと言えよう。
  • やさしい語り口に癒やされたい

    『誰でもできる気分転換のコツ』
    斎藤茂太/だいわ文庫/600円

    目の前の現実がどうにも息苦しい──と感じてしまう人向けの処方箋がこちら。精神科医の故・斎藤茂太が綴った、こころのスイッチを切り替えるための本である。といっても、特別びっくりするような方法が書かれているわけではない。でも、「私は九十代になったいまもなお、毎日が楽しくてしかたがない」というモタ先生の語り口に触れ、少しほっとするのは悪くない。
  • 逃げろや、逃げろ、どこまでも

    『逃亡くそたわけ』
    絲山秋子/講談社文庫/420円

    自殺未遂を起こしてしまった躁病の大学生、花ちゃん。名古屋で生まれ育ったことにコンプレックスを持つ不安げなサラリーマン、なごやん。福岡の精神病院にいた二人は、そこを脱走してしまう。なごやんのオンボロの車で九州の南へとひたすら向かう二人の前には、珍事やトラブルが次々と巻き起こって…。この不思議な逃走劇が行き着くところを、ぜひ見守ってほしい。
たまには逃げたい夜もある

※フリーマガジンR25 302号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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