オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

低成長時代を楽しむ術

2012.03.01 THU


『暇と退屈の倫理学』 國分功一郎/朝日出版社/1890円
気鋭の哲学者が打ち出す
消費社会変革への道

暇な時間をどのように生きるか──これが本書の出発点となる問題意識だ。暇を埋めないと人は退屈してしまう。でも、退屈することに人は耐えられない。そこで、みんなが面白がっているアニメやゲーム、ネットなどで暇をつぶす。でもそれって「与えられた楽しみ、準備・用意された快楽に身を委ね、安心を得」てるだけなんじゃないの? と気鋭の哲学者である著者は疑問を投げかける。

あなたなら、どう答えるだろうか。熱意をもって打ち込めるものがあればいい、と答える人もいるだろう。哲学者のバートランド・ラッセルの結論もそうだ。あるいは、諦めて退屈に耐えよ、という人もいるかもしれない。本書で紹介されている哲学者のスヴェンセンはそれに近い答え方をしている。

だが著者は、そのどちらも不完全な答えだといい、退屈の起源にまでさかのぼって、ルソーやマルクス、ボードリヤール、ハイデッガーなど、「暇と退屈」というテーマに関連する多くの理論や思想を批判的に検討しながら、独自の考察を展開していく。

思わず唸ったのは、消費と浪費の違いを論じたくだり。狩猟採集民は「すべてを一度に使い切る大変な浪費家である」のに対し、「消費社会では、物がありすぎるのではなくて、物がなさすぎる」ために、現代人は浪費する贅沢を奪われているという。

本書がたどり着く結論の一つは、衣食住であれ趣味であれ「楽しむためには訓練が必要だ」ということ。楽しんでいるつもりが、楽しまされている消費社会を脱出するための合言葉として、多くの人に広めたい名フレーズだ。

  • 楽しい自炊生活

    『がんばれ自炊くん! ビギナー編』
    ほぼ日刊イトイ新聞・編/角川文庫/540円

    忙しさにかまけて外食を続けたら、下腹が妙に自己主張を始めちまった…と嘆く全国のぐうたら男子諸君! この本は君たちのために料理名人である“自炊老人”が、簡単でコストをかけない料理のテクを伝授したもの。パスタのポテンシャルを見いだし、キャベツをフル活用するなど、その指南はどれも実用的。「ビギナー編」をマスターしたら、姉妹編の「グルメ編」も味読すべし。
  • 大自然の小さな家!?

    『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』
    守村 大/講談社/1575円

    木を伐り、根を掘り、丸太小屋を建て、野菜をこさえる─。本書は一人の漫画家が妻と犬を引き連れ、地方の放置林で自給自足の生活を続ける記録だ。大きな目標としては「経済システムからの脱却」というだけあって、サウナまで自分でつくっちゃうのはさすが! お金をかけずに己の生活を切り盛りする姿には、都会暮らしの人だって大いに触発されるはずだ。
  • 豊かさってそういうことだったのか

    『貧乏入門 あるいは幸福になるお金の使い方』
    小池龍之介/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1470円

    若き僧侶が僕らに説くのは、貧乏のすすめ!? ではなく、「欲望から自由になる」ための方法だ。お金をしきりに求めたり、次々と物を欲しがってしまう状態を戒め、そうなってしまうメカニズムを著者は解説する。そのうえで欲望に振り回されない、幸福になる生き方が提示される。煩悩まみれの僕たちがお金とどう向き合うべきか、ここらでとっくり考えてみよう。
低成長時代を楽しむ術

※フリーマガジンR25 303号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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