オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

デザインを読む!

2012.04.05 THU


『日本のデザイン 美意識がつくる未来』 原 研哉/岩波新書/840円
デザインに映された
未来社会のかたち

本書のもとになった連載のタイトルは「欲望のエデュケーション」だった。この言葉を著者は「よい製品や環境を生み出すには、よく肥えた土壌、すなわち高い欲望の水準を実現しなくてはならない。デザインとは、そのような欲望の根底に影響をあたえるものである」と解説している。
それゆえ、本書に日本のデザイン史の概説を期待する向きは肩透かしを食らうだろう。本書の主眼は、あくまで未来を構想することにある。
クルマ、家、観光、先端繊維、震災後の日本社会など、考察の対象は違えど、共通しているのは、拡大・成長ではなく、縮小・成熟期を迎えた日本の暮らしに照準を合わせている点。たとえば、日本のクルマのユニークさとして、著者は「四角いかたち」を挙げ、ここに軽自動車という規準を最大限に活用した工夫の結晶を見る。あるいは、家をつくる方法としてリノベーションに注目し、「2LDK」のような標準にこだわらず、「自分の身の丈に合った『住まいのかたち』を自由に構想すればいい」と説く。
アツい気持ちにさせられるのは、ハイテク素材のデザインをテーマとした5章。光を通す半透明のコンクリート、目にも見えないナノファイバーで織り上げられる布など、ハイテク素材を用いてクリエイターがものづくりをした「TOKYO FIBER’09/SENSEWA RE」展は、ミラノ・トリエンナーレで開催され、記録的な動員を得たという。
「作ると同様に、気付くということのなかにもデザインの本意がある」という著者。本書にも「気付き」の種があちこちに埋められている。

  • 世界はデザインでできている

    『デザインのたくらみ』
    坂井直樹/トランスワールドジャパン/1680円

    「人が作ったものでデザインされていないものはこの世にはない」──コンセプターの著者はこんな観点から、灰皿、つまようじ、ケータイ電話といったなにげないアイテムを通じて、デザインの存在をぐっと身近に引き寄せる。毎日の暮らしがいかにデザインに取り囲まれているのかがわかるだろう。普段意識せずに使っている物からでも、感じ取れることは無数にあるのだ。
  • アイデアを生むためのヒント

    『デザインの手がかり』
    尾原史和/誠文堂新光社/2100円

    本や雑誌などの世界で活躍を続けるデザイナーが綴った本書は、教科書的な解説を行わず、デザインのエッセンスを読者に示したものだ。文章からグラフィック効果までを自在に活用して、ちょっと意外な着眼点から本質に迫っていくのがスリリングであり、また楽しい。読後は、色、文字、質感といったデザインの諸要素を見る目もきっと変わってくるのでは?
  • ものづくりの熱意!

    『森 正洋の言葉。デザインの言葉。』
    森 正洋を語り・伝える会・著、ナガオカケンメイ・監修/美術出版社/1890円

    森正洋は、1927年生まれの陶磁器デザイナーだ。優れたデザインによって国際的にも高く評価される一方、教育者としても尽力し、2005年に没している。本書では、ものづくりに終生こだわり続けた森の言葉の数々を集め、さらに関係者の声も交えながら、その仕事と人生を描き出している。シンプルで生活に密着したデザインへの意志に、背筋がピンと伸ばされる。
デザインを読む!

※フリーマガジンR25 305号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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