オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

態度を決めれば道は開ける

2012.06.21 THU


『小田嶋隆のコラム道』 小田嶋 隆/ミシマ社/1575円
原稿遅延の釈明にさえ
コラム魂は宿る

ん? コラム道? オレ、コラムなんて書かないから関係ないもんね」

いやいや、ちょっと待っていただきたい。本書はたしかに、コラムの名工が「コラムの書き方」について綴った本だが、同時に、コラムを10倍楽しく読む方法を教えてくれる本でもあるのだから。

たとえば、書き出しと結末を比較して著者はいう。「書き出しに芸は要らない」が、結末は「なにより技工が重視される」。それだけに本書でも、結末指南には力が入る。

スポーツ新聞にありがちな要約的な結末を「一種の思考停止」と斬り、「天声人語」のような新聞コラムに多い「映像喚起的な一行」は「ワンバウンドするカーブで三振を取ったときみたいな」ズルい手なので、安易に使うなと戒める。こうしたくだりを読むだけでも、様々な文章の結末を読む目は変わってくるに違いない。

結末と同様に、著者の熱量が感じられるのは「モチベーションこそ才能なり」の回だ。いわく「書くためのモチベーションは、書くことによって維持される」。これはコラムや文章にかぎらず、引用中の「書く」に別の動詞を代入すれば、あらゆる活動のモチベーションに通底する至言だろう(むろん話はそう簡単ではなく、書きすぎることによるモチベーションの枯渇もあるそうだが)。

コラムについてコラムニストが書くからには、本書の記述はすべて自分にはね返ってくる。その難の切り抜け方も、もはや円熟の域。原稿遅延の釈明でさえ、著者にとっては腕の見せ所なのである。

  • 吾輩は吾輩である

    『漱石文明論集』
    夏目漱石/岩波文庫/840円

    自分のスタンスが定まらない時は、賢者の声に耳を傾けてみよう。本書に収録された「私の個人主義」は、題名こそ堅苦しいが、元は若者向けの講演なので読みやすいし、飄々とした語り口も味わえる。「自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くな」ったという夏目漱石。個人、そして社会のあり方を考え続けた文豪のものの見方は、下手な自己啓発書よりよほど参考になるはずだ。
  • 日々の驚きのために

    『未知との遭遇 無限のセカイと有限のワタシ』
    佐々木 敦/筑摩書房/1890円

    古谷 実のマンガ、現代の思想や文学、『新世紀エヴァンゲリオン』など…多彩な作品を援用しながら説かれる、現在を肯定するための「生き方」論。溺れるほど膨大な情報が演出する無限のセカイといかに向き合うか。望ましくないことが起きた時に、どう考えるか。腕利きの批評家による「最強の運命論」に耳を傾けながら、想像力と好奇心を高ぶらせていこう。
  • 野田さんよりも支持できそう!?

    『独立国家のつくりかた』
    坂口恭平/講談社現代新書/798円

    著者の職業は、新政府の初代内閣総理大臣。目が点になるような話だが、著者は本気である。作家、建築家、アーティストといった多彩な顔を持つ坂口恭平が、自ら国家を作り上げていく思考と行動の軌跡はなかなかスリリング。現実を変えるのではなく、目の付け所をずらすことで、現実を拡張しようとする試みも面白い。見慣れた街のあちこちに宝が埋まっている。
態度を決めれば道は開ける

※フリーマガジンR25 309号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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