オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

つながることの光と影

2012.07.19 THU


『つながらない生活 「ネット世間」との距離のとり方』 ウィリアム・パワーズ・著、有賀裕子・訳/プレジデント社/1785円
過去の賢人に学ぶ
一人でいられる技術

ネットの中の「つながり」に疲弊している人々に対して、著者は耳の痛い問いを突きつけてくる。
朝起きてから就寝までメールやSNSをチェックし続け、休日でもパソコンやスマートフォンに向き合いっぱなしの毎日──。はたしてそれが「本当に自分の望む生活だろうか」と。
そりゃ、できればもっとゆったりと過ごしたい。でも現実はそうもいかないわけで…とグチる気持ちも著者は次のようにお見通し。「テクノロジーの常として、欠点もあるが、わたしたちがあくせく使わないかぎり、ツールのほうでわたしたちに多忙を強いることはできないはずだ」。
結局、つながってしまうのは、自分がそれを求めてしまうから。そんなつながり依存から脱却するために、本書では過去の賢人や哲人の知恵に「つながらない生活」のヒントを探っていくという構成になっている。
たとえば、ソクラテスとプラトンを対比した箇所で、対話ばかりを求めるソクラテスは「古代における“つながり至上主義者”」であるのに対して、弟子のプラトンは「人混みから離れること」の効用を知っていたんだそうだ。このプラトンをはじめ、セネカ、グーテンベルク、フランクリン、マクルーハンらを「一人でいられる能力」に長けた先達として括る視点がとてもユニークだ。
著者自身も、土日はモデムの電源をオフにする「インターネット安息日」としたところ、「ゆっくりと落ち着いて物事を考えられるようになった」。週2日は厳しいが、1日ぐらいの「安息日」は設けたい。本書を読むと、そんな気にさせられる。

  • 新しい消費社会のカタチとは?

    『第四の消費 つながりを生み出す社会へ』
    三浦 展/朝日新書/903円

    マーケティングのベテランが、消費社会のこれまでと将来を大胆に論じた一冊。消費の担い手が、都市中流階級から、核家族、そして個人へと変遷していく様子を追い、それに続く現在は「消費を通じて人とつながりあえるか」に重きが置かれる第四の消費社会の段階だと語る。シェアハウスやコミュニティデザインなど、第四の消費を象徴する具体的な事例も興味深い。
  • つながりすぎることのリスク

    『つながりすぎた世界 インターネットが広げる「思考感染」にどう立ち向かうか』
    ウィリアム・H・ダビドウ・著、酒井泰介・訳/ダイヤモンド社/1890円

    家や仕事場ではネット漬け、外出時にもケータイは手放さない。…こんな日常を「私たちの社会がつながりすぎている」と著者は警鐘を鳴らす。ネットがない時代のバブル崩壊や世界恐慌といったケースと現代の金融危機などを対比しつつ、つながりすぎるリスクの数々を指摘。即効性のある解決策は示されてないが、それがこの問題の難しさを逆に物語っている。
  • 「つながり」の歴史が見える言葉たち

    『〈つながり〉の精神史』
    東島 誠/講談社現代新書/777円

    「無縁」「交通」「公共」といった二字熟語から〈つながり〉の歴史と変遷を探る一冊。たとえば、「無縁」では江戸時代における大飢饉などの死者の扱いを分析し、「交通」においては明治の自由民権運動においてこの言葉がいかなる使われ方をしたのか読み解く。ごりっとした言葉の背後に、現在にまでつながる歴史の広がりがあることを実感されたし。
つながることの光と影

※フリーマガジンR25 311号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト