オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

アメリカを読む

2012.11.01 THU


『99%対1% アメリカ格差ウォーズ』 町山智浩/講談社/1260円
カネと中傷にまみれた
大統領選を制すのはどっち?

筆致はユーモラスなのに、読み終わると深いため息が漏れてくる。おいおい、アメリカ大丈夫なのか、と。

本書が描き出すのは、カネと中傷にまみれるアメリカ政治の姿だ。目前に迫っている大統領選にしても、そこに投じられる額はすさまじい。とくに共和党候補のロムニーは、「1月31日のフロリダ州予備選で、1900万ドルを注ぎ込んで1万3000本以上のテレビCMを放送した」。しかも「CMの9割が他の候補者への中傷CMだった」という。さらにオバマとの決戦に向けて、金融や不動産業界の大物たちから1000万ドル単位で寄付が集まっているというから、史上最大規模のカネが大統領選のために注がれることになるだろう。

アメリカは、共和党と民主党で政策がハッキリと色分けされている。共和党はとにかく、富裕者層への増税と医療保険改革に大反対。むしろ富裕者層への減税と企業の規制撤廃を掲げるのに対して、民主党のオバマ陣営は、富裕者層への増税と国民皆医療保険を推し進めようとしている。

本書を読むかぎり、著者のスタンスがオバマ寄りであることもうなずける。本書がレポートする、共和党寄りのTV局FOXニュースやキリスト教系テレビ局CBNのオバマ批判は、あまりにえげつないからだ。たとえば「オバマはインドネシアの小学校でイスラム過激派の教育を受けた」と真顔で報じる始末…。

99%の庶民側につくオバマが勝って当然のように思えるが、そうはいかないのが宗教と自由至上主義が幅を利かせるアメリカの摩訶不思議なところだ。

  • 保守派の巨人の素顔を垣間見る

    『レーガン いかにして「アメリカの偶像」となったか』
    村田晃嗣/中公新書/924円

    第40代大統領、ロナルド・レーガン。彼は映画俳優出身のタカ派政治家として知られた存在だが、その軌跡をたどると、そう単純にくくれる人物ではないことがわかる。保守派ながら冷戦を終結へ向かわせ、家族愛を重視しつつも自身は離婚経験があり、そして冴えたユーモアセンスと政敵にも好かれる人柄を有した男。オバマやロムニーと対比して読むのも面白いだろう。
  • 超大国の葛藤

    『分裂するアメリカ』
    渡辺将人/幻冬舎新書/882円

    丹念な取材をベースに綴られた現代アメリカ論だ。現地の多くの声を通して浮かび上がるのは、この国が抱える深刻な対立や分裂である。人種や移民をめぐる問題の数々、保守派とリベラル派の複雑な関係、ティーパーティー運動やウォール街占拠デモの熱狂ぶりなどが実に具体的に示されている。読後、この悩める超大国の舵取りの難しさを痛感することは間違いない。
  • アメリカってそういうことだったのか

    『街場のアメリカ論』
    内田 樹/文春文庫/620円

    街場の思想家・内田 樹氏が、日米関係やキリスト教からアメリカン・コミックやファスト・フードまで硬軟のテーマを論じ尽くした好著。日本人とは大きく異なる、アメリカ人の身体や子供に対する感覚が明かされていくたびに目から鱗がポロリだ。ペリーの黒船以来、日本に強大な影響を与え続ける「理念先行の国」の素顔をまずは直視しよう。
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※フリーマガジンR25 318号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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