オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

秋の夜長のオトコ飯

2012.11.15 THU


『みうらじゅんのマイブームクッキング』 みうらじゅん/角川書店/1575円
料理童貞に勇気を与える
世にも稀なレシピ本

「マイブーム」の鉄人、みうらじゅんの人生は「ノー・クッキング、オンリー・イーティング」だったそうで、そんな料理童貞がいきなり開眼して、あれこれと料理を作ってしまった。

挑んだ料理は、イカの生姜焼き、オムライスにはじまり、ショートケーキ、寿司など、みうらじゅんの好きな食べ物23品。それぞれのメニューに対する思い出を綴った短文エッセイをつけているものの、あくまで本書のメインはレシピである。

材料や作り方は、いたってオーソドックスな記述だが、他のレシピ本とは決定的に異なる点が一つある。それは完成した料理の写真だ。

たいていの料理レシピ本では、完成品の写真を見ると、とっても美味しそうに見える。その点からして、みうらじゅんの料理は微妙だ。まずそうには見えないけど、決してうまそうにも見えない。本の巻末には、料理をふるまわれた著名人の感想コメントが掲載されていて、「ネギは火を通ってなくてほとんど生でした」(猫ひろし/親子丼)、「しょっぱいよ! マスターはサングラスしてるから、塩とコショウの加減が見えてないんだもん」(高見沢俊彦/とんかつ)など、手厳しいコメントも寄せられている(もちろん「美味しかった」というコメントも多数ある)。

レシピ通りに作ってみたからといって、うまくできるとはかぎらない。おそらくみうらじゅんは、身をもってこの料理をめぐる真実を示したかったに違いない。料理童貞に一歩踏み出す勇気を与えてくれる、世にも稀なレシピ本である。

  • いつの間にやらはしご酒!?

    『今夜もひとり居酒屋』
    池内 紀/中公新書/777円

    エッセイストが居酒屋についてたっぷりと綴った一冊。店の良し悪し、お通しや酒の注ぎ方、果ては酔っ払いの客を居酒屋がどう対処するのかまで──飲み歩きを楽しんだ経験が随所に感じられる文章ばかりだ。ちょっとした蘊蓄もいい味を出している。大勢の忘年会でわいわい盛り上がるのもいいけど、ふらりとひとりで近場の店に足を向けてみるのも悪くないね。
  • 晩酌向上委員会

    『R25 酒肴道場 決定版!』
    荻原和歌/メディアファクトリー/1050円

    家で美味しいつまみやおかずを作ろうにも、そこまでの時間はない…。そんな忙しい社会人をアシストするのが本書。時間のかかるレシピではなく、「『正しいこと』よりも『できること』優先」と、ちょっ早な料理を教えてくれるのがありがたい。「とりもつ」や「肉みそ温野菜」など、メニューはどれもこれも生唾もの。毎日の晩酌が楽しくなること、請け合いだ。
  • 食の文明開化

    『明治洋食事始め とんかつの誕生』
    岡田 哲/講談社学術文庫/924円

    明治維新は政治のみならず、食習慣も激変させた出来事だった。この本を読むと、国を挙げて西洋料理が推進されるなか、その新しい食文化を我が国はどう取り入れていったのかがよくわかる。多くの試行錯誤により、あんパン、コロッケ、とんかつなどが生まれたのだ。そんな経緯も踏まえてとんかつを食せば、満腹感とともに先人たちの努力が五臓六腑にしみわたる。
秋の夜長のオトコ飯

※フリーマガジンR25 319号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文

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