オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

センスのいい怒り方

2013.02.21 THU


『怒る! 日本文化論 よその子供とよその大人の叱りかた』 パオロ・マッツァリーノ/技術評論社/1554円
人間関係が壊れるのは
怒りかたがヘタだから

『反社会学講座』をはじめ、統計データや歴史資料を読み解きながら、捏造された社会通念に鋭いツッコミを入れ続けてきた著者が、このたび選んだテーマは「怒り」や「叱り」。

“昔はおじさんやおばさんが、よその子を叱ってたわよね”なんてまことしやかにささやかれる昔話を、当時の新聞投書をもとに一刀両断。電車内で騒ぐ子どもや化粧をする女性は昔からいたし、昔のほうが叱っていたというのも眉唾だ。さらに、叱ってくれる大人待望論にいたっては笑止千万。というのも、著者自身はあちこちで怒ったり叱ったりしているのに、感謝や尊敬された試しがないからだ。

昔を美化して懐かしむだけでは、日本社会はなにひとつ変わりはしない。そこで著者は自身の経験をもとに、効果的な叱り方、怒り方のコツを懇切丁寧に説いていく。その三原則は「まじめな顔で」「すぐに」「具体的に」というものだ。

それができりゃ苦労しないよ、という及び腰層や無関心層に向けても、注意して暴力を受ける可能性や相手が行動を改めてくれる確率などを示しながら、叱るハードルを下げる説得に余念がない。たとえ相手にシカトされても「公衆の面前で注意されるという恥をかかせた時点で、じつは注意した側がポイントをゲットしてる」のだから、注意した方の勝ちなのだという。

怒ることはコミュニケーションであり、「人間関係が壊れるのは、怒るからではなく、怒り方がヘタだからです」という指摘にも膝を打った。正しく怒ることとキレることはまったく別なのだ。

  • 怒りの鉄拳…の前にできること

    『石原壮一郎のオトナの怒り方』
    石原壮一郎/青春出版社/1050円

    人気コラムニストが指南するのは「オトナの怒り方」。「オトナ」と銘打つだけあって、闇雲に叱り飛ばすような拙い方法は出てこない。日常で出くわすシーンはもとより、社内外の人と接するビジネスの場での具体的な状況で、正しくコミュニケーションをとるための「怒り方」がここでは書かれている。相手の面目なども考えつつ怒る──そんなセンスを会得しよう。
  • 「ダメなものはダメ」だけではダメ

    『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』
    荻上チキ/幻冬舎新書/819円

    若き評論家が、日本の目の前に転がる諸問題をてきぱきと整理して論じる好著。デフレ、生活保護、食料自給率などメディアを賑わす論点を、感情論に振り回されず浮き彫りにしていくのはお見事だ。怒って批判するのではなく、クールに分析してポジティブな提案(ポジ出し)を行うスタンスも心地いい。社会に憤るのならば、対案も考えつつ声を上げようってことだ。
  • 「怒り」を哲学してみると…

    『怒りについて 他二篇』
    セネカ/岩波文庫/1008円

    ローマの哲学者が、怒りの感情をめぐって思索したものである。時代を代表する知識人だけあって、その考察は実に念入りだ。怒りがもたらす「その害悪」を指摘し、それをいかに和らげ、抑え込むべきなのかが説かれている。2000年ほども前の賢者の声に耳を傾けよう。なお著者のセネカは、時の皇帝ネロに自殺を命じられ、怒り騒ぐことなく従容として死に就いた。
センスのいい怒り方

※フリーマガジンR25 324号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
桜井としき=撮影

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