オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

私は「私」を信用できない

2013.03.21 THU


『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』(上下巻) ダニエル・カーネマン/早川書房/各2205円
「速い思考」と「遅い思考」、
エラーを生み出すのはどっち?

著者のダニエル・カーネマンは行動経済学という新たな学問分野の第一人者であり、ノーベル経済学賞まで受賞したエラいお方だ。本書は、そのカーネマンが初めて一般向けに書いた著作だが、これが途方もなく面白い。

書名の「ファスト&スロー」とは、「速い思考」と「遅い思考」を指す。前者は直感的な思考であり、瞬時に下される判断や選択のことをいう。対して後者は熟慮熟考、じっくり時間をかけて考えることだ。著者はこれら「速い思考」と「遅い思考」を生み出すシステムをそれぞれ「システム1」「システム2」と名付け、その特徴や両者の相互作用を考察する。

上下巻を通じて、数多くの実験や理論が紹介されているが、読めば読むほど自分の思考や判断が信用できなくなる。そしてそれはシステム1に起因するのだ。

たとえば、人はできもしない計画を立ててしまう。そして、そこで立てられる計画は、たいてい「ベストケース・シナリオに非現実的なほど近い」。その理由は、手元にある数少ない材料や感情的な見込みだけで、楽観的に計画を見積もってしまうからだ。だから多くの計画は“計画倒れ”になってしまう。

根拠のない自信、バイアスのかかった物の見方、自分に都合のよい予想…。これらはみなシステム1がもたらすものだ。そして人生で対処する大半の問題は、システム1が作動してしまうのだから始末が悪い。まずは、本書によって自分の不確かさを自覚すること。それがエラーを防ぐ、はじめの一歩になる。

  • 意志力の手ほどき

    『スタンフォードの自分を変える教室』
    ケリー・マクゴニガル/大和書房/1680円

    意志の強さを誇れる人はそんなに多くないだろう。毎度の朝寝坊やついついの飲み過ぎのように、人それぞれに思い当たることはあるはず。その悩みを解消すべく、スタンフォード大学の心理学者のレッスンを受けてみよう。人の脳の仕組みを探りながら、自己コントロールの方法が披露されていく。誘惑やストレスに立ち向かえる意志を少しずつでも育てていこう。
  • 常識のスキマ、お埋めします

    『不愉快なことには理由がある』
    橘 玲/集英社/1470円

    「正義の本質はエンタテインメントだ」「領土をめぐる対立は未来永劫つづいていく」…本書が進化心理学の知見を援用しながら指し示すのは、人間と社会に関する身も蓋もない現実である。選挙や領土問題、いじめ、男女関係など、取り上げるテーマは様々だ。こうした時事問題に対する常識や社会通念の皮をめくり上げ、思いもよらぬ実相を覗き込める評論集。
  • 脳はこんなことまで考えてる!?

    『脳の中の経済学』
    大竹文雄、田中沙織、佐倉 統/ディスカヴァー携書/1050円

    宝くじや夏休みの宿題といった身近な話題をきっかけに、経済学と脳神経科学が交差する神経経済学という分野の最前線へ読者を誘う一冊。「今までの経済学は人間の脳を気にしてこなかった」ことを反省し、脳の活動と感情や意思決定のつながりについて解説されている。なにげなく買い物をしている際にも、僕らの脳は算盤を猛烈に弾いているのかもしれない。
私は「私」を信用できない

※フリーマガジンR25 326号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
桜井としき=撮影

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト