オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

歩くことは娯楽である

2013.04.18 THU


『東京散歩』 フロラン・シャヴエ/飛鳥新社/2000円
つれづれなるままに描いた
異色の東京スケッチ見聞録

なんとも遊び心がいっぱいの東京スケッチ集だ。フランス青年シャヴエさんは、ガールフレンドのインターンにくっついて、半年間東京に滞在。そこで描きためたスケッチを、帰国後にフランスで出版して話題になったという。それを日本語に訳したのがこの本だ(英訳版も出ている)。

描かれているものは、いわゆる観光名所的なスポットではない。住んだ部屋、普通に見かける住宅や様々なお店、カップ麺にスナック菓子、町を往来する人々など、シャヴエさんがつれづれに見聞して描いたスケッチが、町屋、池袋、高田馬場、渋谷、上野…と地区ごとに集められている。

そのとりとめのなさが、実にいいのだ。しかもスケッチに付されたコメントにもフランス的なエスプリが効いている。たとえば、ある頁に描かれた場末の美容院には、「(中には無人か、いても杖をついたおじいちゃんくらい。BGMは50年代のアメリカンミュージック)」なんてあって、クスリとさせられる。おそらく東京に住んでいる僕らよりも、シャヴエさんはよっぽどたくさんの東京を発見しているんじゃないだろうか。

はて、自分が日本を知らない外国人だったら、これをどう読むだろう。想像するに、すごくごった煮な都市に見える気がする。ビル街もあり、小さな商店もあり、住宅街もある。シャヴエさんいわく「東京というのは、パリのような大都市というよりも、ひとつの村に近いのでしょうね」。この不思議なスケッチ見聞録を片手に、外国人気分で、異国の地・東京村を散歩してみてはどうだろう。

  • 「スケール」を変える面白さ

    『ランドスケール・ブック 地上へのまなざし』
    石川 初/LIXIL出版/1890円

    景色を様々な「スケール」の観点から捉え直そうとする、知的興奮に満ちた1冊だ。地形や時間などそれぞれの「スケール」において、ジャンクション、ナビゲーション地図、網戸といった幾つもの意表を突く切り口が提示される。視点が変わることで眼前の現実もまた異なる相貌を見せる。都市や自然の散策を何倍にも刺激的にするツールとしてご一読あれ。
  • モダンな散歩と洒落込もう

    『ぼくらの近代建築デラックス!』
    万城目 学、門井慶喜/文藝春秋/1628円

    2人の作家が5つの都市にあるレトロな近代建築を訪ね歩く対談集。神戸で御影公会堂のデザインを愛で、横浜ではホテルニューグランド本館のゴージャスな雰囲気を堪能する。建物にまつわる薀蓄や建築家たちのエピソードも楽しい。近所の見慣れた古い建築物にも意外な由来があるかもしれない──そう思うと、単なる散歩がたちまち歴史へのトリップに早変わりだ。
  • 酒と泪と男と散歩

    『ひとりフラぶら散歩酒』
    大竹 聡/光文社新書/882円

    「散歩という道楽に軽く一杯という要素を加えた」ものが散歩酒。高尾山にはじまり、箱根湯本から神保町まで、著者が各所を千鳥足で歩いた軌跡が、この本にはまとめられている。おでん、なめろう、ホッピー、ぬる燗、と口にするものがどれもうまそうで、なんともうらやましい。暖かくなってきたし、たまには昼間から飲んでぶらつく贅沢に身を投じてみよう。
歩くことは娯楽である

※フリーマガジンR25 328号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
桜井としき=撮影

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