オトコの好奇心が深まる1冊をご紹介!

時代は「食」でできている

2013.06.06 THU


『ファッションフード、あります。 はやりの食べ物クロニクル1970-2010』 畑中三応子/紀伊國屋書店/2520円
食のパラダイムは
万博とアンノンで変わった

こりゃ、大変な力作だ。70年代から現在までの食の流行を手際よく拾い上げ、適切な解説を加えていく。それだけでも相当な労力と選択眼が要求されるが、さらに著者は、その流行を用意した時代的背景までをも首尾よく描き出しているのだから、恐れ入るしかない。

江戸から高度成長期までの「ファッションフード前史」を経て、1970年の大阪万博を皮切りに、日本人は世界各国の「おしゃれでおもしろい食べ物」に開眼する。また、同年創刊の『アンアン』『ノンノ』は、「家事から女を解放し、料理をクッキングというホビーに、食事を食べ歩きというレジャーに変えた」。このアンノンの食べ物ページの読み解きが抜群におもしろく、テキストも料理写真も、これでもかといわんばかりに文学的装飾を施したり、過剰な物語性を演出している。こうした誌面の作り込みによって、食のパラダイムは大転換したというわけだ。

80年代からバブル期は、フレンチにイタ飯、多国籍料理に激辛ブームなど、新たなファッションフードが続々と出現する。現在の僕らの食環境のほとんどは、この時期までに出揃っている感がある。それに比べると、バブル崩壊以降のファッションフードは、著者も言うように「過去の焼き直し感が多く」、流行というには窮屈な印象が強い。たとえファッションフードといえども、メディアと企業が煽る健康食品やダイエット食品信仰に対しては、堂々と疑義を呈する点が好感大だ。

本の造形もカバー、目次から巻末年表まで細部にわたって工夫が盛りだくさん。末永く手元に置いておきたい。

  • 国民食の歩みを味わう

    『ラーメンと愛国』
    速水健朗/講談社現代新書/798円

    ラーメン──この身近な食べ物が、どんな来歴を持っているのかをときほぐした一冊だ。屋台の支那そばに始まり、チキンラーメンの大量生産、そしてマスコミを巻き込んだブームなどが描き出されていく。そのなかでドラッカー、田中角栄、泉ピン子といった思いもよらぬ人々を論旨に絡めてくるのも実にうまい。読後は、街にあふれるラーメン店を見る目も変わるはず!?
  • ミシュラン・ガイドも真っ青!?

    『グルメの嘘』
    友里征耶/新潮新書/735円

    覆面取材をモットーとし、一般客の目線で評価を下すグルメ・ライターが本書の著者。ここで展開される、日本のグルメ界への容赦ない指摘の数々は激辛だ。怠惰な料理人、儲け至上主義の飲食店、提灯持ちの評論家やマスコミなどをメッタ斬り。返す刀で客の側の問題も指摘するフェアな視点はさすがである。本当に美味しい店を探したい食いしん坊は、味読すべし。
  • 突撃! 昔の晩ごはん

    『昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年』
    阿古真理/筑摩書房/1785円

    昭和から平成までの家庭料理の歴史を、本やマンガ、テレビ番組などのメディアを通して追うという魅力的な試みである。NHKの長寿番組『きょうの料理』から『美味しんぼ』やスローフードのブームまでが、手際良く並べられていく。それらからは「経済や政治その他の社会的背景」のシフトとともに、現在進行形で変容する食卓の様子が見えてくるだろう。
時代は「食」でできている

※フリーマガジンR25 330号「R25的ブックレビュー」より

斎藤哲也=文
桜井としき=撮影

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト