斎藤哲也の読んでるつもり?

イスラム教徒ってどんな人なの?

2013.10.03 THU

BOOKレビュー


『イスラム世界の人生相談』西野正巳・編訳/太陽出版/1470円 桜井としき=撮影
■あらゆる問いに答えるのがイスラム教の真骨頂

今年に入って、アラブの春に疑問符が突きつけられるような出来事が続発している。エジプトでは軍のクーデターによって憲法停止、モルシ大統領が解任された。シリアには仮そめの春さえ訪れず、泥沼のような内戦が続いている。

こうした現実に接すると、イスラム圏の人々は暴力的だとか民主主義には不向きだとかネガティブな気持ちを抱いてしまいがちだが、僕も含めて日本人の多くはイスラム教徒の実際の生活ぶりについて、大して知っているわけじゃない。そこで今回は、イスラム教徒の等身大の姿に触れることができるような本を選んでみた。

『イスラム世界の人生相談』は、その名の通り、イスラム教徒が抱く悩みに対して、様々なイスラム法学者が大マジメに答えた1冊だが、その相談内容を見ると、セックスネタをはじめ、下世話な内容がかなりある。たとえば、鼻の形が悪いから整形手術をしていいかとか、美人キャスターの衛星放送を見ることは姦通罪に触れないのかとか。妻が要求を拒むのでセックスの問題で争いが絶えないなんていう赤裸々な相談まである。

でも著者によれば、こうした俗っぽい話題まで宗教的に回答できることが「現世と来世のあらゆる問題を取り扱う」というイスラム教の特徴を示しているそうだ。イスラム教徒の誰もが、宗教上の規則を厳格に守れているわけではない。夜の生活や身だしなみに悩む彼らを知ると、イスラム教徒の存在もぐっと身近に感じられるはず。

■イスラムの人々は日本が大好き

『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』で語られているように、イスラム教徒の多くが日本好きであることももっと知られてよい一面だ。マンガやアニメなど日本のポップカルチャー人気だけでなく、礼儀正しさや面倒見のよさ、義理人情などに対しても、イスラムの人々は日本人を高く評価しているとのこと。

イラク戦争の際にも、自衛隊員の真摯な活動はイラク人に肯定的に受けとめられた。自衛隊の宿営地にロケット弾が打ち込まれてあわや撤退かという噂が流れると、自衛隊がサマーワに留まることを訴える市民のデモまで行われたというから、その好感度は相当なものだ。

イスラム教だけでなく、広くアラブ世界を知りたい向きには、この6月に刊行されたばかりの『現代アラブを知るための56章』が便利。明石書店の「エリア・スタディーズ」シリーズは各地域の専門研究者が執筆を担当しているため、記述にも信頼がおける。アラブの春の「その後」を含め、中東に関するニュースの背景を読み解くにはもってこいの本だ。
(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『イスラム世界の人生相談』西野正巳・編訳/太陽出版/1470円
●『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』宮田 律/新潮新書/756円
●『現代アラブを知るための56章』松本 弘・編著/明石書店/2100円

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