斎藤哲也の読んでるつもり?

人口減少は希望か、絶望か?

2013.11.21 THU

BOOKレビュー


『人口減少社会という希望』広井良典/朝日新聞出版/1470円 桜井としき= 撮影
■「拡大・成長」経済からの卒業

今年は例年になく未来予測本が数多く発売された年だった。それらを読んで印象的だったのは、日本の人口減少に対して悲観的な見方をしているものが多かったこと。そりゃ生産人口も減るし、あちこちで急激な過疎化も進むわけだから、明るい話にはなりにくい。長期的に見れば、経済も右肩下がりになっていくだろう。しかし、そんななかにあって、『人口減少社会という希望』は書名のとおり、人口減少をポジティブに捉えた珍しい1冊。本書によると、現在は人類史のなかで“第三の定常期”を迎えており、日本は「フロントランナー」として、新たな定常型社会の実現を先導する使命がある。そのためには「拡大・成長」路線を卒業して、ヒト・モノ・カネが地域内で循環するような「コミュニティ経済」を築くことが必要だと力説する。

重要な提案として、都市中心部に商店街や福祉施設を整備する「福祉都市」構想、教育や住宅面での社会保障の充実という二つが挙げられている。このような都市計画と社会保障とをセットで論じる視点は、社会保障を専門とする著者ならではのものだろう。本書後半では、「地球倫理」というより壮大なコンセプトを掲げ、“三度目の定常期”の基盤となる精神的価値にも思索はおよぶ。スピリチュアルに傾く危うさを孕みつつも、人類史までをも視野に入れて提示される新たな社会像は、一聴に値する。

■究極の人口減少社会に生きる意味

『2100年、人口3分の1の日本』は、歴史人口学の視点から人口減少の要因や影響を分析したもの。参考値ではあるものの、2105年には4459万人まで減少するという数値は衝撃的だ。2050年でも「人のまったく住まない『無居住化地点』が全国で22 %も発生する」という。空洞化や過疎化を避けるために、都市中心部に公的施設や医療機関を集約させるコンパクト・シティへの転換を促している点は『人口減少社会という希望』と問題意識が近いが、経済的には貿易を活発にして外国との分業を推進すべきと主張している点が大きく異なる。

SF小説『チグリスとユーフラテス』は、究極の人口減少社会を描いた傑作。地球から惑星ナインに移住した人類は、人口増加期を迎えたのちに住民全体で生殖能力の問題が発生し、とうとう〈最後の子供〉ルナだけになってしまう。ルナはコールド・スリープについていた人々の眠りを覚ましていくが…。

他者なき世界、未来なき世界で成熟することを選べなかった「永遠の幼女」ルナの生。それは、「無縁社会」とも称される日本のいまとどこか重なって見えてくる。

(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『人口減少社会という希望』広井良典/朝日新聞出版/1470円
●『2100年、人口3分の1の日本』鬼頭 宏/メディアファクトリー/777円
●『チグリスとユーフラテス』新井素子/集英社/1890円

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