「ねじれの発想力」で差をつけろ! 第1回

待ち時間のイライラ、超絶解消法

2014.02.20 THU


エレベーター待ちの苦情がひょんなことからゼロになったように、問題解決の糸口は“あさっての方向”から見つかることがある。この連載では、そんな事例を紹介します 写真提供/PIXTA
「おカネも人手もないのに、どうすりゃいいんだよ」

上司が唐突に振ってきた難題に、思わずそう言い返したくなる瞬間、ビジネスパーソンなら誰しも覚えがあるのでは……。

そんな皆さん、むかつく気持ちはわかるけど、あきらめるのはまだ早い。ピンチを抜け出す、とっておきの発想法がある! それが「ねじれの発想力」だ。まずはこんな例をご紹介しよう。

せっかくエレベーターが2台あるのに、どこかの階でボタンを押すと2台同時に上っていってしまい、いつまで経っても下りてこない。「何じゃ、こりゃ!」とイライラしながら待っているうちに、エレベーターホールは到着を待つ人でラッシュアワー状態に──。

誰でもこんな経験をしたことがあるだろう。最新のエレベーターは滞留が起きないように電子制御で運転管理するタイプが増えているが、古い雑居ビルなどにはまだまだこんなオンボロのエレベーターが残っているものだ。

で、これは小さなテナントビルを持っているビル管理会社の社長さんから聞いた、実際にあったお話。

このビルのエレベーターも旧式で、テナントさんからは毎日のように「なんとかしてくれ!」と苦情が寄せられていた。最新鋭の機種に入れ替えれば事はすぐに解決するのだが、不景気の折、そんな大きな投資はとても無理。困り果てている社長に、ベテランの女性社員が「エレベーターを交換しなくても、なんとかなるかも」と、思いがけないアイデアを提案してきた。初めは意味不明だったが、彼女の説明を聞くとそれなりに説得力がある。費用もそれほどかからないし、ダメ元でやってみることにした。

週末にその“改良工事”をして、テナントの反応を待った。すると、苦情がピタッと来なくなったのだ。いったい何をしたかというと、1階のエレベーターの脇に「姿見」、つまり、全身を映す大きな鏡を貼り付けただけ。でも、どうして?

様子を見ると、エレベーター待ちの間、みんな鏡とにらめっこ。出勤前にお化粧のノリを確かめるOLさん、取引先を訪問する前にネクタイが曲がっていないか確認する営業マン……。考えてみれば、どんなポンコツでも、エレベーターの待ち時間はせいぜい2、3分。その間にやることがないからイライラする。「姿見」を付けることで、そんなアイドルタイムを願ってもない“身だしなみの最終チェックポイント”に変えてしまったのだ。

エレベーターそのものには全く手を付けず、鮮やかに苦情を解消したこの鏡作戦。勝因は、「手持ちぶさたのイライラ」という問題の本質を“あさっての方向”から突き崩したこと。これぞ「ねじれの発想力」が生んだ、一休さん的ローコスト超絶ソリューションである。

あなただって、やればできる! これを例題にして「ねじれの発想力」の広げ方を考えてみよう。まずは問題点の整理。ここで与えられた命題は「エレベーター利用者からの苦情をどうやってなくすか」。苦情の原因は「エレベーターが古くて、いつも待たされるのでイラつく」ことにある。そこで、解決策を考えてみる。

誰でもすぐに思いつくのが「新しいエレベーターに入れ替える」という至極まっとうなアイデア。命題にストレートに切り込んだ「正面突破の発想」だ。だが、それには何百万円もかかってしまうのが泣き所。なので、次に「なるべくおカネをかけない方法はないか」と、考えを進めてみる。

この時役に立つのが、最近リバイバルブームが起きている「逆転の発想」だ。正面突破が無理なら、「いっそエレベーターを使わないようにすれば、苦情もなくなるんじゃない?」と180度発想転換してみる。でも、「エレベーターを全面使用禁止にする」とか、「利用者が少なくなれば混雑が減るから、テナントの一部を追い出してしまう」とか無茶なアイデアは浮かぶが、そんなのあり得ない話。

そこで出番となるのが「ねじれの発想」だ。正面突破でも、逆転の発想でもない、“あさっての方向”から解決策を考えるのだ。ここで一番大事なポイントは「問題の本質」を見抜くこと。苦情が来る原因は実は「エレベーターが遅いこと」ではなく、「その結果、利用者がイライラさせられること」にある。つまり、エレベーターはとりあえず置いといて「イライラさえ解消できればOK」ということなのだ。

「正面突破→逆転の発想→ねじれの発想」とホップ・ステップ・ジャンプで進んでいけば、意外なところに問題解決のヒントが見つかるかもしれない。「ねじれの位置」にある2本の直線を想像するとわかりやすい。高速道路のジャンクションで路線を乗り換えるように、2本の直線が最接近する1点でアイデアの方向を大胆に切り替えるのだ。

身近なヒット商品や街角のなにげない風景の中には、「ねじれの発想力」で生まれた優れモノがたくさんある。次回から“目からウロコ”の数々を紹介していこう。
(高嶋健夫)

※この記事は2012年2月に取材・掲載した記事です

  • 著者プロフィール

    高嶋健夫(たかしま・たけお) 本屋のせがれに生まれ、新聞記者、雑誌記者兼編集者、書籍編集者をひと渡り経験して、現在はビジネス分野を専門とするフリージャーナリスト。R25・35世代と比較しながら団塊世代の攻略法を説いた『R60マーケティング』(日本経済新聞出版社)など著書多数

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