「ねじれの発想力」で差をつけろ! 第2回

駅前広場に突如出現、ミニ石庭の謎

2014.02.27 THU


東京メトロ東西線西葛西駅の駅前広場にある「ミニ石庭」。景観に配慮しつつ、通行人が天井の低いところに頭をぶつけないようにした、小粋な安全対策ソリューションだ 写真撮影:高嶋健夫
街を歩いていると、たまに不思議な光景に出くわすことがある。よ~く観察すると、そこには筆者が名付けた「ねじれの発想」が隠されていることも多い。

筆者が利用している東京メトロ東西線西葛西駅の駅前広場には、小さな石庭が作られている。広さは約2.5メートル四方、3畳間よりちょっと広いくらい。そこに大小様々な石が、枯山水風に配置されている。出現したのは今から12年前。この駅、地下鉄なんだけど高架駅で、ホームと改札口は2階にある。それが利用者の増加で手狭になったことから、大幅に拡張する工事が行われた。「ミニ石庭」はこの時に、広場の上に張り出すような形で拡張された2階駅舎の真下に設置されたのだ。

初めて見た時は「よくある景観作りのオブジェだろう」くらいに思ったが、それほど広くもない場所だけに、邪魔といえば邪魔。「なんでわざわざ?」とよくよく観察してみて、理由が読めてきた。石庭の上を見ると、ここだけ天井の高さが低くなっているのだ。高さはだいたい1.8メートル。ちょっと背の高い人なら頭をぶつけかねない微妙な高さだ。「そうか! これはきっと通行人が通れないようにするための“ねじれの発想”に違いない」と、独り合点していた。

で、今回改めて東京メトロの広報部に問い合わせてみると、「だいぶ前の話なので多少時間をいただきますが……」ととまどいながらも、関係部署に当たってくれました。ドキドキしながら待つこと数日、回答が来た。結果は……

「ご推察の通りでした。拡張工事をした時に、構造上どうしても天井が低くなってしまう箇所があり、下を通行する人の安全確保のためにこんな方法を考え出したようです」

つまり、こういうことだ。フツーなら、出っ張った部分に「頭上注意!」とか「天井が低くなっていますので、ご注意ください」といった警告文を真っ黄色のペンキかなんかで表示するのが「正面突破の発想」による対応策。だが、それじゃあ、あまりにも無粋。見た目は「アグリー(醜悪)」だし、いくら警告したって見ない人は見ない。ケータイ操作に熱中しながら歩いてきて、思い切り頭をぶつけてしまう人が絶対に出てくる。ならば「逆転の発想」によって「何が何でも通れないようにしよう」と思っても、まさか天井が低いところ全体を板や金網で囲ってしまうわけにもいかない。

そこで設計した人は頭を“ひとねじり”させて、こんな“目くらまし忍法的ソリューション”を編み出したのだろう。ちなみに、なんで花や木を植えるのではなく、石庭にしたかというと「西葛西駅のある江戸川区は大きな川に囲まれた“川の街”なので、河原をイメージするオブジェを採用したそうです」とのこと。なるほど、“地元の人々に愛される駅作り”にもきちんと思いを巡らせた結果、景観配慮と安全確保をさりげなく両立させる、小粋な「ミニ石庭」が誕生したんだ、江戸っ子だねぇ!

ところで、新宿駅西口の地下通路にも同じ発想で設置された(と思われる)オブジェがある。ホームレスの人たちが段ボールハウスを作れないように、通路の壁際に円筒を斜め切りしたようなオブジェが延々と置かれているのだ。でも、こちらは景観的にもちっとも美しくないし、なんだか冷酷非情な感じがして、あまり好きにはなれないけれど……。
(高嶋健夫)

※「ねじれの発想力」とは?
難題への対応を迫られる場面で、一見すると無関係に思われる事象を結びつけ“あさっての方向”から解決策を考え出す発想力のこと。「ねじれの位置」にある2本の直線が最接近する1点で、高速道路のジャンクションで路線を乗り換えるように、大胆かつ柔軟に発想を切り替えるのが成功のコツ。

※この記事は2012年2月に取材・掲載した記事です

  • 著者プロフィール

    高嶋健夫(たかしま・たけお) 本屋のせがれに生まれ、新聞記者、雑誌記者兼編集者、書籍編集者をひと渡り経験して、現在はビジネス分野を専門とするフリージャーナリスト。R25・35世代と比較しながら団塊世代の攻略法を説いた『R60マーケティング』(日本経済新聞出版社)など著書多数

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