「ねじれの発想力」で差をつけろ! 第5回

行列も心ときめくディズニーの魔法

2014.03.21 FRI


おなじみ「ジャングルクルーズ」の待ちスペース。乗船を待っている間、案内役のスキッパー(船長)が“ジャングル語”を教えてくれるのも楽しみの1つ。20年以上前から代々のキャストに受け継がれてきたTDLオリジナルの“伝統芸”なんだとか 写真提供/オリエンタルランド (C)Disney
世の中にあまたあるヒット商品の中にも、「ねじれの発想力」を見いだすことができる。みんな大好きな東京ディズニーリゾート(TDR)は、「ねじれの発想力」が生み出した“史上最大のヒット商品”といえるだろう。

年間来場者数2500万人を超えるTDRは、いつ行ってもゲスト(来園客)でごった返している。混雑を嫌って、わざわざ平日に休暇を取って出かけても、人気アトラクションになると2時間待ち、3時間待ちは当たり前だ。冷静に考えてみると、「ライド系」だろうと、「シアター系」だろうと、どのアトラクションも実際の所要時間はせいぜい3~4分か、どんなに長くても10分程度。それっぽっちの短時間の楽しみのために、その何十倍もの長い時間を行列しながら待つんだから、酔狂といえば酔狂な話。それでもまた遊びに行って、並んじゃうのはどうしてだろう?

その理由はもちろん「行列してでも乗る(見る)価値があるから」なんだけど、実は「行列して待つこと自体が楽しいから」でもある。TDRではアトラクションが始まるまでの待ち時間を「プレショー」と名付け、長時間待っていても退屈したり、イライラしたりしないように、さらにはこれから始まる「メインショー」への期待感をいやが上にも盛り上げるような様々な演出を用意している。

各アトラクションの行列待ちスペースがそれぞれの世界観を作り込んだ、凝った造りになっているのはご存じの通り。例えば、「モンスターズ・インク“ライド&ゴーシーク!”」なら、子供たちの笑い声をエネルギーに変えちゃう「モンスターズ社」の本社オフィスが忠実に再現されていて、ゲストは行列を始めた時からもうあのフルCGアニメ映画の世界に入り込んでいる、という仕掛けになっているのだ。

これぞまさしく、ディズニーならではの“魔法のソリューション”! だって、行列対策という観点で客観的に分析すると、これって「ねじれの発想」による“目くらましソリューション”なんだよね、本質的には。

正攻法の行列対策とは、言うまでもなく「少しでも待ち時間を短くする」こと。TDRでも当然、様々な対策を講じている。誰でも知っているのが、指定の時間に利用できる「ファストパス」。開園と同時に目指すアトラクションにダッシュして「ファストパス」をゲットし、「まずは1つキープ」してから別のアトラクションに並ぶというのが、最も基本的なTDR攻略法ですよね。他にも、乗り物の空席に1人のゲストを優先的に案内する「シングルライダー」、時間指定なしのファストパスやパレードの専用鑑賞席が付いたTDR内のホテル宿泊客向けの「バケーションパッケージ」など、いろいろと考えられている。

そうはいっても、待ち時間をゼロにすることは絶対に不可能。そこで、あの手この手の“ワクワク感演出作戦”が編み出されてきたのだ。なかには「隠れミッキー」というのもある。マニアの間ではよく知られた存在だが、建物の壁や通路、看板、あるいはインフォメーションブックやお土産を入れる包装紙に至るまで、パーク内には多種多様なミッキーマウスの肖像やマークが密かに作り込まれていて、一説によると、その数は100以上あるとか。長~い待ち時間にそんな「隠れミッキー」を探し出すことも、TDRの楽しみ方の1つになっているのだそうだ。ここまで徹底してやっているからこそ、「待っている時間」自体が“もう1つのアトラクション”になっているのだ。「ねじれの発想力」も突き詰めれば全く新しい魅力や付加価値を生み出す可能性があることを、夢の王国の行列対策は教えてくれる。
(高嶋健夫)

※「ねじれの発想力」とは?
難題への対応を迫られる場面で、一見すると無関係に思われる事象を結びつけ“あさっての方向”から解決策を考え出す発想力のこと。「ねじれの位置」にある2本の直線が最接近する1点で、高速道路のジャンクションで路線を乗り換えるように、大胆かつ柔軟に発想を切り替えるのが成功のコツ。

※この記事は2012年3月に取材・掲載した記事です

  • 著者プロフィール

    高嶋健夫(たかしま・たけお) 本屋のせがれに生まれ、新聞記者、雑誌記者兼編集者、書籍編集者をひと渡り経験して、現在はビジネス分野を専門とするフリージャーナリスト。R25・35世代と比較しながら団塊世代の攻略法を説いた『R60マーケティング』(日本経済新聞出版社)など著書多数

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