企業の海外生産が過去最高を記録

日本の人件費はどれくらい高い?

2014.05.14 WED


「日本の人件費は高い。だから企業は生産拠点を海外へ移すしかない」みたいな話はよく聞くところ。事実、内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」によると、2010年度の製造業全体の海外現地生産比率(実績見込み)は、2009年度の17.1%から18.0%へと推移し、過去最高を記録したという。企業の海外生産シフトは着実に進んでいるのだ。

もちろん、その理由は「人件費」だけではない。進出先の市場や近隣国の需要が見込まれることもあるだろう。だが、日本の人件費が高いのは間違いないところ。では、世界的に見て日本人の賃金はどのくらいの水準なのだろうか。

明治大学国際日本学部の鈴木賢志准教授が、スイスの大手金融機関UBSが作成した調査レポート「Prices and Earnings」2009年版を日本視点で再計算し公表したデータによると、東京の平均は、税引き前で380万円。世界的に見ると60カ国中7位だった。ちなみに、東京より上の5都市は以下の通り。

1位チューリッヒ(スイス)563万円
2位コペンハーゲン(デンマーク)533万円
3位ニューヨーク(アメリカ)500万円
4位オスロ(ノルウェー)423万円
5位ルクセンブルク393万円

上位は一見して北欧が多いが、北欧には税金が高い国も多い。そこで税引き後の年収で見たところ、東京 は307万円で5位という結果に。たしかに世界的に見て日本の賃金は高いようだ。

では、日本が進出している生産拠点の国々はどうだろう。経済産業省「海外事業活動基本調査」2009年版によると、日本企業の海外現地法人の数は、北米15.8%、中国30.0%、ASEAN4(タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア)が16.2%、NIEs3(シンガポール、台湾、韓国)が11.7%とのこと。そこで、これらの国を前出のデータ(税引き前)で見てみると、

28位ソウル(韓国)181万円
30位シンガポール145万円
49位上海(中国)74万円
58位ジャカルタ(インドネシア)34万円

といった結果に。日本の製造業と熾烈な競争を繰り広げる韓国も、賃金水準は日本の半分以下。グローバル企業のアジア本社が集中するシンガポールに至っては、日本の4割にも満たない。こうやって比べてみると、日本の人件費がいかに高い水準かわかる。しかも今は、1ドル=70円台という超円高時代。円建てで見れば、日本人の人件費はさらに高くなっているのだ。

だが、残念ながら「賃金水準の高さ=暮らしの豊かさ」というわけではない。ちなみに日本は人件費も高いが、物価も高い。前出のデータによると、東京の食料の値段は世界1位、賃料を含む一般的な物価水準は世界3位。世の中ではデフレといわれているが、それでもなお、日本の物価は世界トップクラスなのだ。我々サラリーマンにとってはなんとも切ない状況である。

このままでは、日本の製造業の海外移転は止まりそうにない。僕らにできることといえば、せいぜい英語をマスターして、世界で働ける力を身につけることくらいか…。
( 島尻明典/verb)

※この記事は2012年02月に取材・掲載した記事です

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