違法かどうかのカギはいろいろなところに…

退職勧奨と退職強要の境目はどこ?

2014.05.15 THU


人員削減などを計画する企業が、リストラ手段のひとつとして行う「退職勧奨」。これは、あくまで社員の意思による退職を企業側が勧める行為であるが、その勧奨行為がいきすぎると違法な「退職強要」とみなされる。だが、IBMの社員が退職強要を受けたと訴えていた先日の裁判では「対象者が拒否しても、企業が直ちに説得活動を終える義務はない」「『会社の戦力外』と告げても直ちに違法とはならない」として、原告敗訴の判決が下された。そこで気になるのが退職勧奨と退職強要のボーダーライン。合法と違法の境目はどこにあるのだろうか?

「退職強要とされるのは、企業が社員の“自発的な意思を妨げる”ような手段や方法で勧奨行為を行ったと認められた場合です。1回あたり20分~約2時間におよぶ退職勧奨を短期間のうちにたびたび行ったり、内部告発した社員への報復として、家族にまで退職勧奨を行ったケースが裁判でも退職強要と認められています。また、正当な解雇理由がないのに『このままだと解雇になるから退職した方がいい』と会社側が社員をだましたケースなどもありました」

お答えいただいたのは、労働裁判を数多く手がける旬報法律事務所の梅田和尊弁護士。退職勧奨はあくまで「社員の意思」にもとづくものだが、社員を退職に追い込むような状況を企業が作っていると、それは違法な退職強要となることが多いようだ。

「とはいえ、その判断基準をひと言でいうのはなかなか難しいですね。勧奨の際の言動、暴行や脅迫の有無、勧奨行為の回数、1回あたりの時間や人数、退職勧奨の理由や目的など、多岐にわたる判断材料をもとに勧奨行為として行き過ぎかどうか裁判で判断されます」(梅田さん)

退職強要を考えるうえで、参考になる例として梅田さんが挙げたのが次の裁判例。社員だったあるデザイナーに企業は2度にわたる退職勧奨を行ったのだが、パートタイムへの変更を提案したり定期昇給を停止した最初の勧奨行為は「企業側にデザイン室を合理化する必要があった」として適法の判決。しかしその後、デザイン室を突如閉鎖し他部署への異動も検討せずに退職を促した2度目の勧奨行為は違法となった。

「裁判で違法な退職強要と認められるかどうかは、実際にどんな行為が行われたかだけでなく、それをどれだけ証拠として裁判で提出できるかにもかかっています。というのも、退職勧奨は第三者のいない密室で秘密裏に行われることがほとんど。訴えようにも証拠があまり残っていないケースが多いんですね。『言った言わない』の争いになってしまうと、証拠が出そろわず違法と認められないこともありますから、どれだけ証拠を残せるかも重要なんです」(同)

訴える側からすると厳しい戦いになることが多い退職強要の裁判。だからこそいかに証拠を残せるかがポイントといえそうだ。

「退職を強要されていると感じた場合、なるべく記録を取っておくこと。ICレコーダーなどによる会話の録音、携帯電話でもよいので面会した部屋や隔離されている状況などの写真、やり取りしたメールなど。録音は隠し撮りでも構いません。会社が退職強要という違法行為をしているのですから。また、日記のような形で詳細なメモを残すことも大切です」(同)

さらに「自分の意思をきちんと伝える」ことも重要。退職をハッキリと拒否したことに対し企業がどういう態度をとるかも退職強要かどうかの判断材料になる。

違法な退職強要と認められるには、いろいろなところにカギがありそうだ。
(河合力)

※この記事は2012年02月に取材・掲載した記事です

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