めくるめく専門店の世界 第6回

江戸の粋を感じるこだわりの楊枝

2014.06.09 MON


写真は、絹織物の一種であるちりめんを使った楊枝入れ。クロモジの楊枝を5本ほど入れて持ち歩くことができる
食事のあと、口元を手で隠しながら楊枝でシーシー。ちょっとオッサンくさいが、歯間に挟まった食べ物が取れたときはスッキリ。最近では、先端にミントが塗布してあって、使うとスーっとする楊枝などもあるようだ。

さて、そんな楊枝だが、世の中には楊枝の専門店があることをご存じだろうか。それが、日本橋に店を構える「さるや」。なんと、創業300年以上の老舗だとか。ひょっとして色々な種類の楊枝があったりするのだろうか? 代表取締役の山本一雄さんにお話を聞いた。

「種類は多くありませんよ。大きく分けると歯間を掃除する“楊枝”と和菓子などを食べるときに使う“お菓子楊枝”の2種類です。お菓子楊枝には、持ち手側を削って竹ふしや梅、うなぎ、結び熨斗に見えるように細工を施した“細工楊枝”があります」

では、素材のほうはどうだろう? 

「一般に普及している楊枝は、白樺を材料とする大量生産品なのですが、さるやでは昔からクロモジの若木を使った手作り品。クロモジは、枝を折ると爽やかで心地よい香りを発する特長があります。また、弾力性に富んでいて折れにくいので、歯当たりもよく、楊枝に適した素材なんです。これを手で2つ、4つと細かく割っていき、最後は細く削っていくんです」

樹皮がデザイン上のアクセントになっていて高級感さえあるクロモジの楊枝。使ってみると、確かに先端が細くて歯間に入りやすくて、掃除がしやすい。力を入れても折れにくいので、安心感がある。

しかし、正直、クロモジの楊枝が飲食店に置いてあるのは見たことがない。いったい、どんなお客さんが買うんだろう?

「高級料亭などに卸しています。一流の懐石を食べ終わった後、大量生産の楊枝が出てきたら、急に興ざめしてしまうでしょう。あとは贈答用ですね。当社は楊枝を入れる箱にもいろいろな種類があるので、贈答の際は贈る相手に合わせて選んでいただいています。一度使ったら病みつきになったという方も多いですよ」

楊枝をしまう箱には桐を使っており、一番人気は墨で金千両と手書きされた「千両箱」。縁起を担いで、年賀の贈答などに使われることが多いのだとか。ほかにも、おみくじのように振って楊枝を取り出す「振り出し楊枝」など、遊び心が見られるものもある。

普段なに気なく使っている楊枝だが、それだけにこだわりのあるものを使えば、ちょっとカッコイイ。それに、いつもシーシーやってる上司にプレゼントしたら、株も上がるかもしれないぞ。
(コージー林田)

※この記事は2012年6月に取材・掲載した記事です

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト