斎藤哲也の読んでるつもり?

監視社会は防げるか?

2014.06.20 FRI

BOOKレビュー


『暴露 スノーデンが私に託したファイル』グレン・グリーンウォルド/新潮社/1836円 桜井としき=撮影
■この世界からプライバシーがなくなる!?

グローバルな超監視社会は、もうそこまで来ている。これが、ベストセラー『暴露 スノーデンが私に託したファイル』を読んで真っ先に感じたことだ。

同書は、アメリカのNSA(国家安全保障局)とCIA(中央情報局)に在籍したエドワード・スノーデンから、著者のもとに仮名でEメールが送られてくるシーンから幕を開ける。スノーデンは、入手した最高機密文書を公開する協力者を探し、著者にたどりついた。著者は、かねてからNSAの盗聴スキャンダルやブッシュ政権を痛烈に批判していたジャーナリストだったからだ。

2人のやりとりから、香港で実際に面会しスクープを次々に発表していくまでの推移は、スパイ小説さながらの緊張感が漂い、頁をめくる手が止まらない。でも、これがフィクションではなく、現実に起きていたことに思い至ると戦慄が走る。

スノーデンは上級サイバー工作員としての活動から、NSAの目的が「世界じゅうのあらゆるプライヴァシーを消滅させることにある」ことを知り、内部告発することを決断した。この史上最大の情報漏洩事件は、「自由とは何か」を問いかける世界史的な重みをもっている。

アメリカが監視や情報に対する欲望をせき止められない背景に、9・11同時多発テロがあることは想像に難くない。それに拍車をかけるのが、『国際メディア情報戦』で描かれるグローバルな情報戦だろう。国際社会のなかで、各国政府やテロ組織、反体制組織は、国際世論を味方につけるために、PR企業の力を借りて、イメージ戦略に打って出る。ボスニア戦争でのボスニア・ヘルツェゴビナ政府しかり、ビン・ラディンしかりだ。その混沌とした情報戦争で究極の勝利を収めるためには、あらゆる情報を監視すればいい。そんなアメリカの欲望と、日本の特定秘密保護法案とは無関係ではないだろう。

■超情報化社会は何をもたらすか

野崎まど『know』は、2080年代の超情報化社会を舞台とした近未来SF小説。日本人全員に《電子葉》なる人造の脳葉の移植が義務づけられるという設定は、脳がそのままパソコンになったとイメージしてほしい。

この社会では、「各個人の社会的貢献度、公共的な評価、生活態度、そして納税額」で階級が分かれ、階級の違いによって《取得可能な情報量》と《個人情報の保護量》が変わってくる。情報による階級差がプライバシーの有無に直結するのだ。

こうした未来の情報格差は、人々のコミュニケーションに何をもたらすのか。そして「すべてを知る」とはどういうことか。哲学的な次元にまで思索を誘う絶品のSFだ。

(斎藤哲也)

<書籍紹介>
●『暴露 スノーデンが私に託したファイル』グレン・グリーンウォルド/新潮社/1836円
●『国際メディア情報戦』高木 徹/講談社現代新書/864円
●『know』野崎まど/ハヤカワ文庫/778円

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