「需要の先食い」が最大の理由

なぜ家電はこんなに値下がりする?

2014.07.08 TUE


家電の価格は下落する一方。消費者のニーズを絞込み、新たな需要を生み出すことが今後の課題と言えそうだ。
デフレが叫ばれる昨今、あらゆる物が値下がりしている。そのなかでも特に家電の物価下落が顕著だ。GfK Japanの価格調査によると、この5年間で薄型テレビは15.5万円(07年)から6万円(11年)に、ノートパソコンは14万円(07年)から8.3万円(11年)、DVDレコーダーは7.5万円(07年)から5.7万円(11年)、コンパクトデジカメは3万円(07年)から1.9万円(11年)へと大幅にダウンしている。

なぜ家電ばかりがこれほどハイペースで値下がりしているのだろうか。その理由について、流通ジャーナリストの金子哲雄氏は次のように語る。

「値下がりする理由はシンプルで、家電の需要が少なくなったから。デフレで値下がりが続き、買いやすい値段になったため、家電需要は一巡してしまったのです。また、2011年3月31日に家電エコポイント制度の購入期限が終了し、地デジ移行による買い換え需要も終わってしまいました。ここで“需要の先食い”をしてしまったために、今はいくら安くしても売れないという状況なんです」

しかし、すべての家電が一様に値下がりしているわけではないと金子氏は言う。

「洗濯機や冷蔵庫などの白物家電は液晶テレビほど値下がりしていません。白物家電は節電に期待する買い換え需要がまだあるからです。逆に、もっとも値下がり幅が激しいのは大画面の液晶テレビ。メーカーはオリンピック商戦に期待していますが、液晶テレビが普及した現在、わざわざ50インチ以上の大画面テレビに買い換えてオリンピックを見たいという人がどれだけいるかは疑問です」

なるほど。たしかに「安いから」という理由だけで、テレビを毎年のように買い換える人は少ないだろう。では今後も家電の価格は落ち込む一方なのだろうか。

「物価は今が底値。しかし、回復するには新たな需要を生み出さなくてはなりません。たとえばApple製品は価格が下がりませんが、売れていますよね。なぜかというとAppleは新しいライフスタイルを提案し、需要を生み出したからです。生活家電ですと、『ルンバ』も、それほど値下げせずに売れていますが、あれもロボットで掃除するという新しいライフスタイルを生んだからこそ。また、『ルンバ』を使いやすくなる部屋になるよう、インテリアを買い換えるといった、関連する需要も喚起しました。これまでになかったライフスタイルを創造することが、“高くても欲しい”という消費者心理を生み、家電に限らず物価の回復につながるのです」

すでに日本中の家庭に行き渡った同じような製品をいくら値下げしても、買い換える人は少ない。Apple製品や「ルンバ」のようにこれまでになかった魅力的で新しいライフスタイルを生み出せるかどうかが、今後の物価回復のカギを握っている。
(山田井ユウキ)

※この記事は2012年7月に取材・掲載した記事です

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