めくるめく専門店の世界 第10回

大人も楽しめるかるた専門店

2014.07.09 WED


様々なカルタがあるなか、特に売れるのは「江戸かるた」「京かるた」「百人一首」などの定番商品。ちなみに、江戸と京では内容が異なり、江戸の「い」は「犬も歩けば棒に当たる」だが、京の「い」は「一寸先は闇」。両方購入して違いを楽しむ人も多いそうだ
子どものころに一度は遊んだことがある「カルタ」。しかし最近は、お正月に親戚が集まって、子ども同士で楽しくかるた取りなんて光景は少なくなった気がする。

しかし、日本の伝統は脈々と受け継がれているようだ。神保町にある「奥野かるた店」は、全国でも珍しいかるた専門店。大正10年の創業で、今年91年目を迎える老舗だ。

同店の特徴は50種類以上にも及ぶオリジナルカルタ。たとえば「お料理いろはかるた」は、家庭料理研究家である中江百合氏が、昭和24年に『暮しの手帖』で発表した料理のコツや心構えをカルタにしたもの。「い」は「いの一番、料理は親切」という具合だ。

「お魚かるた」は昭和初期の築地・魚河岸で誕生したカルタの復刻版。日本の漁業や魚の生態などはもちろんのこと、昭和初期という時代背景を思わせる札が目につく。「上る征途に勝男武士」なんて読み札と軍人の絵札のセットは戦時下ならではの一枚だ。

また、東日本大震災をきっかけに、版画家・伊藤卓美氏が描いた「宮澤賢治かるた」を子どもでも読みやすい楷書版で発売。東北出身の作家が紡ぐ言葉で、被災地を元気づけたいという理由もあったとか。

最近では、日本人になじみの深い童謡・唱歌・叙情歌などの歌詞かるたや、寄席の風景を切り絵にしたカルタも製作。ほかにも「日本橋かるた」や「軽井沢かるた」「江東区かるた」などの地方自治体の依頼で、町おこしとして地域カルタを製作することもあるという。

しかし、“子どもの遊び”というイメージが強いカルタにしては、同店には意外にもアニメなどのキャラクターものが少ない。

その理由を奥野伸夫会長は「昭和20~30年ごろまでは、鉄人28号やジャングル大帝レオ、鉄腕アトムなどを題材にしたカルタもありましたが、ゲームウォッチが流行りだしたあたりから、子どもがカルタで遊ばなくなり、だんだんと大人向けになってきました。そうした商品は絵柄やデザインにも流行り廃りがないので、売り上げは安定しているんです」と語る。

そういったわけで、現在の客層は年輩者が中心。子どもや孫に正しい日本語を知ってほしいといって購入する人や、絵札に描かれた版画や切り絵イラストを目当てに購入する人も多いのだとか。なかには、美術品としても鑑賞できる10万円を越えるカルタもあるという。

「カルタは一枚一枚単独でも楽しめる。絵本のように読んでも楽しいし、大勢が集まれば、みんなで会話をしながらコミュニケーションがとれる。アナログの良さがもっと見直されてもいいのではないでしょうか」(奥野会長)

「奥野かるた店」ではカルタの販売だけでなく、アナログゲームの展示なども随時行っている。取材時には、世界中の珍しい将棋が展示されていた。貴重な品物も多いので、一度足を運んでみてはどうだろう。
(コージー林田)

※この記事は2012年7月に取材・掲載した記事です

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