もらった名刺は会社に返すべき?

転職先へデータ持ち出し厳重化!?

2014.07.15 TUE


営業秘密にあたるデータを持ち出すと営業秘密侵害罪に問われる場合もあり、刑事罰を受ける可能性もある
今年4月、新日本製鉄が自社の極秘技術を不正入手されたとして、韓国鉄鋼大手ポスコを訴えた。該当製品の販売差し止めと巨額の賠償金を求めており、産業スパイ事件として大きな注目を集めている。

昨今、新興国による日本の技術者のヘッドハンティングが増え、メーカー各社は国外への技術流出に危機感を募らせている。転職に際して機密情報を持ち出す従業員もおり、転職時の持ち出し品を厳しくチェックする企業も出てきたという。技術情報のみならず、顧客情報なども流出すればダメージとなるため、各社とも神経をとがらせているようだ。

とはいえ、持ち出してよいものといけないもののラインは企業によってだいぶ差があるようで、ネット掲示板などを見ても「今までもらった名刺をすべて返却するよう言われた」「自分で作った企画書のフォーマットを持ち出すのはダメだった」という声もあれば、何のチェックもなかったという人もいる。では一体、このような転職持ち出しのNGラインはどこにあるのだろう。国内外のビジネス法務関連の事例を多く扱う、西村あさひ法律事務所の梅林弁護士に伺った。

「まずは持ち出すものの所有権がどこに属するかがポイントです。例えば名刺の場合、社員が対面して相手から直接もらったものについては、法律的に『受け取った個人のもの』と見るのが普通ですので、転職時に持ち出すのがNGとは言えません。ただし、就業規則や社内規定で退職時の名刺の持ち出しを禁じている場合は、社員が業務上受領した名刺は、個人のものではなく企業のものという整理をしていることになると思います。その場合は、持ち出した社員に対して企業側も責任を追及することができます」

では、自分で作った企画書やプレゼンのフォーマットを持ち出す場合はどうなのだろうか?

「PCなどに保存してあるデータを持ち出す際は『営業秘密として厳重に管理されていたか』『そのデータが営業上有用な価値を持つか』の2点が重要。プレゼンフォーマットがこの2つのどちらかに引っ掛かることは少ないので、NGにならない可能性が高いでしょう。ただし、フォーマットを持ち出す場合、大抵は実際に使用したプレゼン資料ごとデータコピーしてしまうはず。そこに営業秘密に該当するデータなどがあることも多いので注意した方がよいでしょう」(梅林さん)

持ち出したものがNGかどうかを判断するにあたっては、管理の仕方やそのデータが持つ価値が最重要事項になるといえる。例えば従業員名簿なども「社員が誰でも閲覧可能な管理体制だったかどうか」で判断が変わってくる。特定の管理職しか閲覧できないものならば、当然持ち出しはNGとなる可能性が高い。

「判断に迷ったら、一つひとつ会社側に確認するのがよいでしょう。情報流出が多発する近年、海外では持ち出しに対する意識がかなり進んでおり、持ち出すものについてはすべて申請や審査を必要とする企業も少なくありません。日本でもその気運は高まっており、今後は持ち出しのチェックが厳しくなるはずです。不用意に持ち出すと情報流出などのトラブルを招きかねません。リスク回避のためにも安易な持ち出しは避けるべきでしょう」(同)

転職時の持ち出しに関するNGラインは今後さらに厳しくなる模様。とはいえ、何でもかんでも持ち出しNGというわけではない。ポイントは、その情報の「管理の仕方」と「データの価値」。やみくもに会社側の言いなりになるのではなく、まずは従業員規則を確認のうえ、冷静に見極めよう。
(河合力)

※この記事は2012年7月に取材・掲載した記事です

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