最近、なに読んだ?

ピース・又吉直樹『夢巻』を語る

2014.07.18 FRI

BOOKレビュー


「夢巻」(田丸雅智/出版芸術社/1512円) 新鋭ショートショート作家、初の単行本。買い物帰りにぶつかった男と大根で斬りあう「大根侍」、人の魂を集めて回る男を描く幻想譚「蜻蛉玉」、子供のころの思い出を喫煙する表題作「夢巻」など、独創性に富んだ20篇を収録 撮影=桜井としき
――又吉さんが、最近読んで面白かった本を教えてください。

この本、『夢巻』というショートショートの短編集なんですけど、幻想文学みたいなものもあれば、コントみたいな笑える話もあって、収録されている20篇が全部面白いんです。

――コントみたいな小説ですか?

「大根侍」なんかはコントっぽいですね。買い物帰りに大根を持っている男とぶつかってしまう。その男が大根を抜いてきて、「お前も大根を抜け」って勝負を挑まれて…。

――大根でチャンバラ???

大根がほんまに切れる刀になっているっていう世界観でどんどん話が進むんです。相手はめっちゃ強くって、主人公も大根の達人に弟子入りして、戸惑いながら修行したりして。

――面白そう。本当にコントみたいです。

作品ごとに毛色が違って、命を司る死者みたいなのが出てくる、心に沁みる話(「蜻蛉玉」)もあったりします。ものによっては俳句のように余韻を楽しめたり、頭のなかに世界が広がっていったりするんです。1回読むだけでも驚きがあるし、読み返して考える余地もある。言い方は悪いですけど、浅くも深くも読めるというか…僕はそれって、いい本の条件なんちゃうかなと思っています。

――いい本は、人に薦めますか?

僕は、ひとつの文章で立ち止まって「これはどういうことやろう?」って考えたりできる本が好きなんです。でも、そういう本を、あまり本を読まない人に薦めると微妙な反応やったりするんですよね。世の中的には「これ一気に読めたよ」っていうのが褒め言葉とされていて、面白さよりも難易度が好き嫌いの基準になっていたりするから。

――面白さがわかる前に挫折する人が多いのかもしれませんね。

でもその点、この『夢巻』は読みやすいし、パターンも豊富やし、本好きにもそうでない人にも薦められます。どんな仕事でも、アイデアって大事じゃないですか。それって刺激的で斬新な発想に触れないと絶対に出てこないから、みんなこれを読んだ方がいいと思います。


【又吉直樹の読み方】
▼常に3~4冊の本を、鞄に入れて持ち歩いている

「何度も読み返す本、じっくり読みたい長篇、あとは句集とかエッセイとか、常に鞄に3~4冊は本を入れています。それぞれ読むのにかかる時間も違うので、本によって、移動中や喫茶店で読んだり、家で寝る前に読んだり」

▼手に取って2~3行読めば、自分好みかどうかわかる

「僕は自分の好みがわりとはっきりしているから、装丁とかタイトルのつけ方でなんとなくピンときます。『ほんまに本好きな人が作ってるな』と思ったら手に取って、2~3行読めば自分の好みかどうかわかるんです」

▼20年間で50回以上も読み返している本がある

「太宰治の『人間失格』を20年で50回以上は読んでいます。共感したところや笑えるところに線を引いて、ほとんど書きこみで埋まっているのに、今でも読み返すたびに発見がある。これは死ぬまで読み続けるでしょうね」

(宇野浩志=取材・文)

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