最近、なに読んだ?

古市憲寿「今の時代の冒険物語」

2014.09.05 FRI

BOOKレビュー


『ゆとり世代の愛国心 世界に出て、日本の奇跡が見えてきた』(税所篤快/PHP研究所/886円) バングラデシュ、ガザ、ソマリランドなど、世界を股にかけた教育革命に挑戦するNGO「e-Education」。その創始者・税所篤快がこれまでの活動を振り返り、世界を駆け巡って発見した日本の強さと、その高め方を書く。 (桜井としき=撮影)
若者の価値観やコミュニケーションのあり方を冷静に観察し、今の時代を分析する社会学者・古市憲寿さん。彼が選んだ1冊は、弱冠25歳の“教育革命家”が著した自叙伝であり、“ドラゴンボールのような冒険譚”だった。

――『ゆとり世代の愛国心』を読みましたが、税所篤快(さいしょあつよし)さんの行動力は凄まじいですね。

この本に限らず、彼の行動が面白いんです。「革命家」を名乗るなんて、普通は痛々しいことじゃないですか。「社会を変える」って言葉だけなら、同じことを言う学生がいくらでもいます。でも、言うだけではポエムに過ぎない。彼の場合はまず行動して、言葉があとからついてきている感じがするから、革命って言われても納得させられます。

――たしかに。言葉がまとまる前に飛び出している印象を受けました。

日本人の多くが存在も知らないか、無法地帯としか思っていないソマリランドまでふらっと行って、学校を作ろうとする。そんな無謀さがありながら、大企業のおじさんたちに頭を下げてお金を集め、大臣クラスとも渡り合う。とにかく動き回って、いろんな人に助けを求めて…この本は、そういうお茶目な主人公が活躍する『ドラゴンボール』みたいな冒険物語としても読めるんです。

――タイトルにも使われている「愛国心」についてはどう思いますか?

税所くんがやっていることに理由をつけるとしたら、最貧国への教育支援によって日本のブランド価値を高めることなんでしょうけど、「愛国心」や「社会貢献」っていうのは彼にとって結果であって、動機は「冒険心」だと思うんです。この世界を変えるような大きなことをやろうとするなら、日本みたいな成熟した国でやるよりも、未開の地で、日本人である強みを生かして挑戦する方が賢いやり方ですし。

――“日本人の強み”というのは?

50年前に比べると安定は失われてきているけれど、その分、現代の日本人が手にした自由ってすごく多いと思います。ビザがなくてもパスポートだけで170もの国に行けるし、円が強いから日本でちょっと働いたら世界中どの国へも行ける。その自由を最大限に活用して、自分たちの可能性を閉ざさない生き方を見せてくれるから、僕は税所くんの冒険を応援したくなるんです。


【古市憲寿の読み方】

▼小・中学生のころの愛読書は“図鑑”だった

「もともと本が好きな子供ではなくて、小・中学生のころは図鑑ばかり読んでいました。サメが好きだったので、サメ図鑑を読んだり、宇宙図鑑を読んだり。物語みたいな普通の本はあまり読んだことがありませんでした」

▼楽しむためではなく、“使う”ための読み方

「基本的には仕事に使うために本を読むので、赤ペンを持って引用できそうなところに線を引きながら読みます。原稿を書きながらその場で必要な箇所を探して読むから、順番もばらばら。読むというより検索に近いかも」

▼無駄なものを読まずに済む。それが書籍のメリット

「情報を検索するだけならネットの方が早いんですけど、本の方がクオリティをジャッジ
しやすい。出版社名や著者名、あと表紙がダサいとか(笑)。外的な情報で、読む前に内容の精度を測りやすいのがいいですね」

(宇野浩志=取材・文)

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