最近、なに読んだ?

清野とおる「母に優しくなれる本」

2014.09.19 FRI

BOOKレビュー


『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』(宮川さとし/新潮社/605円) 新潮社のwebコミックサイト『くらげバンチ』連載時から大きな反響を呼んだ話題作が書籍化。がん告知から闘病生活、葬儀後の家族との生活まで…地方在住の漫画家が“母の死”と向き合う様子を描いた、感涙必至のノンフィクション漫画だ。 (桜井としき=撮影)
東京都北区赤羽の街をフィールドワークし、奇々怪々な住民たちの生態を描く異色エッセイ漫画家・清野とおるさん。昔から苦手だった読書を克服しようと思い立ち、速読教室に通ったという彼にお薦めの本を聞きました。

――最近、速読教室に行ったとか。

僕は本を読むのがめちゃくちゃ遅いんです。騙されたつもりで速読教室に行ったら、本当に速く読めるようになって驚きました。ただ、行った直後は何冊か読んだけど、最近はまったく読めていなくて…。

――だから今回選んだのは漫画なんですね。

根が嫉妬深い性格なので、基本的に話題になったり売れたりしている作家は嫌いなんです。みんな消えてしまえばいいと思っていますから。でも、この漫画は珍しく、素直に売れてもいいなって思えました。

――web連載時から口コミで人気が出た作品ですよね。

そうらしいですね。自分の母親だけは死なないと思っていたのに、あっけなく死んでしまった。でも、日常は続いていくっていう話で…これを読んだ影響で、今年のお盆は久しぶりに実家に帰りました。

――ご実家って東京ですよね?

うちからチャリで10分の距離です。でも、近くたってなかなか帰らないもんですね。うちの母も高齢だから常々優しくしようとは思っているものの、内弁慶なので会えば些細なことで舌打ちしちゃったりするし。今回は帰る前日にこの漫画を読んで、実際に母親が死んだような気持ちのまま会えたから少しは優しくできたかもしれません。

――なぜ、そんなに感情移入できたんでしょう?

もとが実話だからじゃないですかね。この漫画を描いた宮川さとし先生は当時のもやもやした感情をケータイにメモしていたみたいですけど、計算ずくで感動させようという嫌らしさは感じないし。

――完全な創作じゃないからこそ、リアリティがある?

フィクションだと、結局作り物じゃないかっていう目で見てしまいますからね。ただ、現実の方がリアリティがあるかというと微妙ですけど。僕が描いている赤羽の漫画なんて、実際に起こったことをそのまま描いたらまず信じてもらえないから、読者に信じてもらえる程度まで薄めて描いています。創作よりも現実の方が、よっぽど奇怪なんですよ。


【清野とおるの読み方】

▼現実に起こったことはフィクションより面白い

「大学のころは司馬遼太郎を読んでいました。歴史小説のなかでも、幕末が好きなんです。あの時代ってかろうじて写真が残っているから現実味が湧く。それ以前の人物の話は実在したのか疑ってしまうから読みません」

▼本を読むのが遅いことが、コンプレックスだった

「速く読める人がうらやましい、かっこいいってずっと思っていました。僕は読みたい本があっても、いざ読もうとしたら全然集中できなくて。読んでいる最中にほかのことを考えたりして、意識がどこかにいっちゃうんです」

▼半信半疑で体験した“速読教室”の効果は…?

「読む姿勢を矯正して、繰り返し読むトレーニングをして。そうすると、本当に読むスピードがあがったんです。行った直後は何冊か読んだんですけど、最近は…。もともと本が好きってわけじゃないですからね」

(宇野浩志=取材・文)

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